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ラヴェンダー・ジュエルの瞳  作者: 朧 月夜
◆第九章◆キスから始まる大冒険、再び!?
77/86

[77]出立 〈Y♪〉+*+〈Y&R〉

 ※以降は2015~16年に連載していた際の前書きです。


 今話が『本編』最終話となります*

 全七十七話、お目通し誠に有難うございました!

 そんな最後を飾ってくださる素敵なイラストを戴きましたので、こちらにてご紹介させて頂きます♪

 連載途中からお読み下さり、最終話までに何とか追いつきたいと、お忙しい中を追い掛けてくださいました葵生りん様より、とっても可愛いユスリハです♡

 柔らかい色使いと、それに似合う優しい表情が大変気に入っております☆

 りん様! 本当に有難うございました!!


挿絵(By みてみん)


 三十五話からずっと地色のホワイト・ゴールドに戻ってしまっていたユスリハの髪ですが、こちらのイラストを此処に置かせて頂いた理由はつまり・・・?

 どうぞ本編にてご確認ください!

 それではまた後書きにてお会い致しましょ~嫌と言われてもしゃしゃり出ますので是非お読みくださいませ~汗!!



 朧 月夜 拝




「だから僕に任せてくださいと言ったではないですか~、タラ」

「ゴメーン! ちょっと腕が(なま)ったかしらネー」

「ツパイ! タラ! あ、アイガーも!」


 あたしは慌てて窓を閉め、巻き上がる粉塵の中から現れた、二人と一匹の影に飛びついた! 二年近く経っても変わらない、美女と子供と白黒の牧羊犬!! あ、ううん、ツパイは随分背が伸びている。


「キャー! ユスリハちゃ~ん!! 元気だったー? あっ、髪色、ピンク・グレーに戻したのネ! イヤーン、ピータンも相変わらず~!!」

「ムギュゥ~!」


 そしてこの豊満な胸の、窒息死必至な挨拶も相変わらずだ……。


「くっ、くるしっ! で、でも一体どうして急に?」


 タラの抱擁から顔を救出し、あたしは喜びで弾む質問を投げ掛けた。


「ウフーン、実はネー! ……と、その前に」

「え?」


 もったいぶった様子で解き放したタラは、あたしに格好の良いウインクを飛ばし、


「アレ……お先に直してもらえるかしら?」


 煙のおさまった背後を指差して、真っ赤な舌をペロッと出した。


 無残な姿で地面に横たわる飛行船──。


「ああ……はい。よ、喜んで……」


 後ろ髪を掻きながら笑うタラの後ろで、ツパイがゴメンと合掌していた──。




 ★ ★ ★




 あたしが修理をしている間、ツパイはラヴェルを看ていてくれて、タラは美味しいブランチを作ってくれた。


「何とか直しましたよ~!」


 前回のラヴェルの時よりも酷い有り(さま)だったけれど、あたしの腕も上達した所為か、同じくらいの時間で完了出来た。


「ありがとーユスリハちゃん! ハイ~ご褒美のブランチ」


 ダイニングのテーブルに揃った三人と二匹で、優雅な食事が始まる。


「さて……いきなりお邪魔した理由ですが……」


 と半分ほど進んだ頃、一旦フォークを置いたツパイが言葉を発した。その声にあたしの手元もおもむろに止まっていた。


「……ついに、ジュエルがヴェルを手放しました」

「え!?」


 手放した……?


 驚き開いたままの唇へ、ツパイとタラがにこやかな笑みを向けた。


「二週間程前のことです。ヴェルを覆う雲が晴れ、ゆっくりと下降を始めたのです。そうしてとうとう海上に辿り着き、ヴェルは通常の島国と化しました」

「ほ、本当にっ!?」


 大きく頷く二人と一匹。ジュエルが……ヴェルが……ついに!!


「突如海洋に大きな島が現れた訳ですからね、周辺諸国は仰天していますが……ロガール様をはじめ政府の面々が、今後の外交を求めて調整しています」

「本当……なんだ──」


 あたしの口から感嘆の呟きと沢山の空気が流れ落ちた。


 そうなのだ──。




 ──ヴェルは西の海に存在する。




 けれど海の上には浮いていなかった。


 西の海の上空に浮かんでいて、島の下面と側面は、見つからないよう雲で隠されていたのだと云う。


 だからこそ飛行船でしか行き来の出来なかった国。それが海まで降りてきた!


「ジュエルが消滅したのでは? との危惧もあり、僕達は取る物もとりあえず、此処を訪ねることにした訳です。先程ラヴェルとジュエルの様子を診ましたが、ジュエルはしっかりと存在し、特に以前と変わった様子も見られませんので、おそらくラヴェルの主張を受け入れたのではないかと」

「ジュエルが……」


 自分の左側に位置するラヴェルの部屋へ顔を向け、唇を引き締めた。ラヴェルの想い──ようやくジュエルに届いたんだ。


「でネ、ユスリハちゃん」


 目の前のタラに呼ばれ、ふと首を戻す。頬杖を突いてニコニコ微笑むタラの顔が、以前のラヴェルと重なった。


「ラウルを連れて、一度ヴェルに来てみない? 三家系の乙女が揃ったラヴェンダーの地なら……ラウルを呼び起こせるんじゃないかと。ヴェルには今、ツパイとワタシを含めて八人の乙女が居るのヨ。みんなも協力するって言ってくれてるの」

「八人……」


 そして、あたしが九人目?


「ユスリハを合わせて、三家系にそれぞれ三人ずつ。ラヴェンダーのエネルギーに包まれた祖国で祈りを捧げれば、ラヴェルとジュエルに何かしらの影響を与えられると、僕達は予測しています。ユスリハ……いかがでしょう?」


 続けたツパイの口元も問い掛けた。あたしは二人を交互に見回し、やがて微笑んだ。


「行くに決まってるわ! ラヴェルが戻るなら、いつだって、何処へだって!!」


 そうよ、そうに決まってる! それにジュエルが観念したんだ。ガマン比べにラヴェルが勝った! きっと彼は戻ってくる!!


 いや……もしかして……ジュエルもラヴェルも、あたしが学校と研修と試験を終えるのを、ずっと待っていてくれた……? そして今、整備士としても操船士としても、どちらの試験もトップで合格したあたしには、ヴェルへ行って帰ってこられる程の余裕の時間を、ご褒美として与えられているのだ。


 あたしは早々に荷作りを始め、遠い隣家のおばさんに事を伝えた。出発の準備を終えた時には、淡い夕暮れが立ち込めていた。


「ラウル、帰りはちゃんと自分の足で戻ってきなさいヨ?」


 タラはそう言って彼の頬をつねり、飛行船まで背負ってくれた。


 久し振りに踏み入れる、あたし達の旅の相棒。中身は何にも変わっていなかった。真ん中の白いテーブルセットも、窓際の収納を兼ねた長いチェストも、そして壁に埋め込まれた脱出用シューターの寝台カプセルも!


「あ、ちょっと待って……。ラヴェル、あなたの故郷(ふるさと)を見せてね」


 タラの手を制し、あたしはそっと彼に口づけた。カプセルに入れられてしまったら、しばらく毎朝のキスは難しいから。驚き「わお」と小さく声を上げたタラとツパイの目の前で、ラヴェルの頬は差し込んだ夕焼けの色に染められ、赤面したように見えた。ううん、本当に赤くなったのよね? あなたがあたしに触れる時、いつも淡々としていたのは、実のところ照れ隠しだったのでしょ?




 ──行くよ、ラヴェル。




 だってあたしのピースは揃わなかったのだから。

 ラヴェル(あなた)という名の、たった一枚のピースが。


 パズルが完成したら、其処には何が見える? 多分きっと広大なラヴェンダー畑かしら?

 早くその中を一緒に歩きたい。あの花摘みの唄を歌いながら。


 だから絶対取り戻す! あなたを、あなたの心からの笑顔を!!


 目覚めた時……お願いだからもう一度言って。


 「お姫様、どうか『僕』に目覚めのキスを」って。


 沢山捧げた『おはようのキス』より、絶品の口づけをあなたに贈るから。


 一緒に笑お? 笑って暮らそう!


 あたしは階下の操船室へ赴いた。

 見える西の空は夕陽が沈み、優しいラヴェンダー色に染まろうとしていた。




 あたし達を乗せた飛行船が、




    ふわりと白い鳥のように──




       (そら)へと羽ばたいた──!




          〔FIN〕




挿絵(By みてみん)

○ラヴェンダーの花言葉・・・『あなたを待っています』○




 ※以降は2015~16年に連載していた際の後書きです。


 この度は七ヶ月半の長きに渡る連載に、お付き合いを誠に有難うございました!


 「これって結局ラヴェルはどうなるの?」と、読者の皆様にはやや困惑気味のラストであられると思います。大変申し訳ございません・・・この作品を書き始めた頃の作者は、どうにもバッチリハッピーエンドな物語を書くのが嫌になっていたのでした(苦笑)。

 ですが書き進むにつれ「ラヴェル、絶対的に目覚めそうだ!」とハッピーな方向に妄想が進んで参りまして、初めに考えていたラストに比べれば、かなり目覚める確率の高い結末となっていたり致します・・・これでも(汗)。


 何せ途中から作者の脳内では、こんな映像しか浮かばなくなっておりましたので(爆)!



挿絵(By みてみん)



 挙句の果てには、伏線として活用出来るエッセンスが、ストーリーの中に相当隠されている事にも気付きまして(相変わらず気付かずに書いていて申し訳ありませんw)、続編を形作れる程度まで膨らませることが出来ました。

 ですので、まぁ・・・その、結局ラヴェルは「目覚める」ことになりますデス(笑)。

 そちらの物語は年明け後、或る程度のストックが出来た時点で連載を開始したいと思います。宜しかったら又お付き合いをお願い申し上げます!


 更にその前にですね、こちらもしばし完結にはさせませんで、このままエピソード短編を続けさせていただく事に致しました。

 過去のお話を三編、その後に続編に続く未来のお話を一編(全六話・年明け一月七日より週一にて連載予定)投入致します。

 お手数ですが引き続き宜しくお願い申し上げます*



 ラヴェンダーの(かぐわ)しい薫りと、美しい彩りと、そして柔らかな癒しの力が、皆様のお心にも届いていることを願いつつ・・・沢山の感謝を込めて──



 朧 月夜 拝



【最後に一つおまけの話など】ラヴェルの義眼師としてのラストネーム「デリテリート」は、「なかったこと」⇒「削除する」=「deleteデリート」⇒「デリテリート」という連想で生まれました(笑)。



【再掲載に当たっての追記】

 小説としましては、飛行船がヴェルへ向け旅立つシーンで終わりますが、私の脳内映像では、あたかも映画のエンドロールのように、エンディング・ソングとクレジットタイトルの流れる中、ヴェルに到着した面々がラヴェンダー畑に集まり、三家系の乙女の祈りを受けてとうとうラヴェルが目覚め、ユスリハの熱い口づけを受けるところで終わっていたり致します(笑)。どなたかそんな映像作ってくれませんかねぇ~(祈)。。。




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