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1.

「めぐみ、おはよう」

そういって肩を叩けば、振り返ってにっこりと笑顔を返してくれる。

「おはようたっくん!今日もいい天気だねぇ」

栗色の地毛を肩口でそろえた、朗らかな笑顔の似合うこの美少女は俺、久坂巧の幼馴染であり彼女の仁田めぐみ。

すらりと伸びた手足は健康的で、少しタレ目の目尻と整った顔立ちの中で、ぷっくらした唇が色気と可憐さを絶妙なバランスで共存させている。

めぐみとはじめてあったのは幼稚園の頃、みんなの輪になじめずにいためぐみの手を引っ張ったのがきっかけだった。そこから自然と一緒にいるようになり、家が近所だから放課後は一緒に遊んで、一緒に勉強して、夏休みはお互いの家で宿題をこなしたりするようになった。

めぐみは成長するにつれて美人になっていき、そしてそれに比例して他人にやさしい子になっていった。俺はいつも誰にでも優しいめぐみが俺はずっと好きだった。

満を持して中学の修学旅行で告白したときには、自分もずっと好きだったと、はじめて手をとってくれたときからずっとずっと大好きだったと、泣きながら告白を受け入れてくれて俺は天にも昇るような気持だったのをここに記しておこう。

そこからの中学校生活は、登下校は毎日一緒、休日は2人で色々なところへデート、クリスマスには2人でおそろいのペンダントを作ったりと、恋人らしい関係を少しずつ積み重ねてきた。一緒にいた10年と少しの時間と、恋人としての約1年。・・・学生で、お互いに奥手だからキスもまだな清い恋愛だけれども、ゆっくり関係を深めていけばいいと思っている。



「たくみぃぃぃ、俺今日授業で当てられるのに宿題忘れちゃったんだよぉ、教えてくれぇぇぇ」

教室に入ると、坊主頭が眩しい悪友が抱き着きながら助けを求めてきた。

「またかよ藤吉ィ!・・・しかたねぇなぁ」

こいつは小学生からの悪友で豊口藤吉。

出来は悪いが憎めないやつで、なんやかんやと面倒を見るのが高校になっても続いてる腐れ縁の関係だ。

「さすが相棒っ、お詫びに俺秘蔵のえっちな本貸すぜ」

「いらんわ!さっさと済ませるぞオラっ、ノート出せっ」

そんな俺たちのやり取りを、傍らでめぐみがニコニコしながら眺めていた。

「2人は本当仲良しだね、いいなぁ」

そういって笑うめぐみに、「俺と巧は親友だから!けど仁田ちゃんとのラブラブっぷりにはかなわねーけどな!」そういって俺とめぐみの事をからかう藤吉に、顔を真っ赤にするめぐみ。

今朝も賑やかな朝だなぁ、と思いながら、楽しい時間は瞬く間に過ぎて行った。


「じゃぁね、たっくん!私は部活があるから、またね~」

そういって手を振りながら歩いていくめぐみの背を、手を振りながら見送る。

「それじゃあ帰るべ巧」

隣で俺たちの様子を見ながら待っていてくれた藤吉に、おう、と答えて並んで歩きだす。

高校に入学した当初は、毎日めぐみと一緒に帰っていた。

だが、めぐみがテニス部に入部し、俺は塾に通うようになると帰る時間が合わなくなり、藤吉は俺と一緒に帰るようになった。お互いのスケジュールを合わせて部活も塾もない日は一緒に帰ろうかと誘うのだが、自主練習があると断られてしまうのだ。

中学の頃は毎週のようにでかけていたデートも、今では部活があるからとほとんど行けなくなってしまった。

一応、夜になるとメッセージがくるのでやり取りはしている。

会えない時間が増えて寂しく思うので、、休みが合う日は出かけたい、と時折送るのだが、時間が出来たら、とか、その時は声をかけるね、と中々色よいという言葉が帰ってこずにもどかしい。そこに寂しい気持ちはあるが、めぐみは部活を頑張っているのと楽しんでいるようなので、彼氏としては応援するべきだと、頑張れと言うようにした。

「ラブラブな2人の帰り道邪魔するのは悪いと思ったから遠慮してたけど、帰る時間が違うなるならぼっちより俺と一緒の方が寂しくないじゃん?俺は帰宅部だからいつでもフリーだしな!」

「何いってんだよ。・・・まぁ、でもありがとうな。・・・なんでお前時々いい奴なのにモテねーんだろうな、やっぱり坊主だからかな。頭つるつるだもんな。」

「坊主なのは実家が寺だからしょうがないじゃないですかやだー!!」

残念なやつだ。でも、いい奴だ。

めぐみと会えない時間が多いのは寂しいが、その分藤吉が絡んでくるようになった。

中学の頃は土曜日は部活だったり、藤吉や友達とだらだら遊んで、日曜はめぐみとデート、といった過ごし方をしていたけど下手すると土日とも藤吉や、藤吉と他の男友達と遊んでる気がするので週によっては一週間藤吉の顔を見ているかもしれない。

・・・今度好物のチャーシューマシマシのラーメンでも奢ってやろう、

言葉にできない感謝の気持ちと一緒に。

恋人も、友達も恵まれて、塾の成績も好調だった。


「次の日曜はいつものショッピングモールにデートにいかないか?最近、ずっと部活だっただろ?」

ゴールデンウィークを前にした金曜の昼休み。

ここのことろデートにさそっても、部活で断られ続けていためぐみを、改めてデートに誘ってみた。

「えぇ?・・・う~ん、そうだね。ここのところずっと出かけれなかったもんね」

そういって、少し考えた後、困ったように眉尻を下げてめぐみは承諾してくれた。

「なんだなんだ倦怠期かよお二人さん」

そういって少し離れたところから藤吉が声をかけてきて、「そんなんじゃないって・・・」とめぐみが返していた。

でも実際、高校に入学してからの土日でめぐみとデートに出かけることはめっきりなくなった。いつ誘っても部活に忙しい、自主練を頑張っているという事だったので、頑張れよ、と声をかけて出かけずじまいだった。

すると、ピロリン、とめぐみのスマホが震え、画面を見ためぐみは弁当をそそくさと片付けた。

「私、部室に忘れ物してたみたいだから・・・ごめんね」

そういってパタパタと駆け出しためぐみの背中を見送りながら、弁当をひとりでつまんでいると、藤吉が声をかけてきた。

「巧・・・あのさ・・・」

何かいいづらそうな、奥歯にものが挟まるような様子の藤吉の様子に、「どうした?藤吉らしくないな」と声をかける。

キーンコーン、とチャイムがなった。「・・・また後で!」と返事をする藤吉。

暫くすると教師が入ってきたが、めぐみは帰ってこなかった。

その日の放課後、藤吉に帰ろうぜ、と声をかけたが藤吉は何か考え込んだ様子で、「悪い、俺ちょっとやることがあるから今日は一人で帰ってくれ」といいつつ、荷物を纏めるとどこかに駆け出して行った。

なんだか今日の藤吉の様子は変だったな・・・何か悩み事があるなら聞こう、友達だしな、とそんなことを考えながら帰り、日曜日のデートに思いをはせた。

この辺り唯一にして最大のショッピングモール。

中学の時付き合いだして、初めてデートしたのもあそこだったなぁと思いだしながらカレンダーをみる。そう、次の日曜は付き合いだして一年目の記念日なのだ。

この日のために用意したプレゼントもある。

中々一緒に遊べなかった分、楽しい時間にしよう、たくさんめぐみを笑顔にするぞ!と意気込みと準備はバッチリなのだ。

あぁ、日曜日が待ち遠しい!


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