一話 彼女の面影
誤字や意味の分からない言葉があったらすみません。
彼女が死んだ。幼馴染だった彼女は下校中、交通事故によってこの世を去った。棺の中の彼女は化粧をしており、とても美しかった。
火葬場の匂いが鼻の奥にこびり付く。白くなった彼女は固いベッドの上で寝ていた。もう、目を覚ますことはない。その夜も火葬場の匂いと彼女の家族の啜り泣きは鼻と耳を占領した。
――
彼女の死後何日が経っただろうか。体は酷く重く自室を出るのも億劫だ。下から響く階段を上る音も遥か遠くの雑音に聞こえてくる。
部屋のドアノブに手を掛けた瞬間、頭に響いた衝撃により朝の何も考えれない頭が覚醒した。
「痛」
急に開いたドアを回避できず頭にあたり鈍い音がした。しりもちを付き意識が一瞬欠け状況が分からなかった。
意識が戻り中途半端に開いたドアをしっかりと開けドアをぶつけてきた張本人と思われる人物を見るために首を上に曲げた。
そこに立っていたのは死んだ彼女だった。
いや、彼女ではなく双子の妹だった。でも、なぜだろう彼女が今そこにいるような感覚に陥り安心する。彼女がどうしようもない自分を見ているような感覚がする。
幼馴染の双子の姉、俺の彼女だった田島美紀は髪が長くおしとやかな女性だった。お互いアクティブではない性格であったから、よく家の中で読書やゲームをしていた。それとは逆に双子の妹、田島由紀はスポーツを好んでしており、関わりが薄い人は彼女らを髪の長さで判別していた。
しかし今、目の前にいる彼女はショートカットなのにどこか落ち着いた目をしており引き込まれる。彼女はスカートを膝で挟み、膝を揃え目の前にしゃがんだ。
「ねぇ、高貴話があるの。」
彼女の振る舞いは美紀のように美しい品のある動きだった。彼女は日曜日だというのに制服を着ている。
そして、彼女の服を認識し今日が何の日か分かった。
「49日か..」
美紀がこの世を去ったときはまだ暑かった。急に汗ばんだカッターシャツを着た感覚に肌が刺激され胸元を仰ぐ。
「そう、今日が49日。そうなんだけど、話したいことがあるの」
由紀が何かを決意したように目で訴え掛けてくる。力がこもった黒い瞳に映るのはみっともない俺だとわかった。
「わかった、とりあえず顔洗ってくる部屋で待てて」
階段を降り洗面台の鏡で自分を確認し彼女の瞳に映っていた顔が現れた。少し痩せただろうか、頬がこけた気がする。蛇口を上にあげお湯が出るまで少し水を流す。お湯が出たのを確認し顔を洗う。
鏡に映る自分の顔は醜く見えた。服で顔の水を拭いながら階段を上った。階段を上がり左手の廊下の一番奥の部屋を目指す。
ドアを開けて出たはずだが今は閉まっていた。
何故だろう、もう何百回と入っている自室の先が怖い。出た時はまだ意識はハッキリとせず自分が言った言葉すら曖昧だ。掌が湿り震え始める。
ドアノブを捻りドアを押す。勉強机に座っていた彼女が椅子を回転させ振り返る仕草に心拍数を抑えることができない。鼓膜を振動させる波は外から入るものではなく、内側から響いたものだとわかる。鼻呼吸では酸素を取り込むことが困難になり口が乾き始める。髪の毛を強く左手で握るが眩暈は収まらない。
「高貴大丈夫?」
椅子に座っていたのは由紀の体の美紀だった。