第4話 情報と能力
その日はシズルさんの家に泊めてもらった。
普段の俺なら女性の部屋に泊まるというだけで心が踊るような体験だというのに、その相手が美少女なのだ。こんな体験、二度とないだろう。
だがその日は状況が状況だったので、すぐ寝てしまった。俺はなんてタイミングが悪いのだろうとつくづく思わされる。
そして翌日、俺はとりあえずこの世界についての情報を集める事にした。やはり情報というのは行動をする上で、とても大切なものだ。昨日のシズルさんとの会話の中で分かったのは、ここが少なくとも俺の知っている所ではないという事である。
これからこの世界で生きていくには沢山の情報が必要になる。そう考えた俺は、シズルさんの家にある色んな本を読む事にした。
文字はなぜか読めた。こっちに来た時の影響なのか、理由は分からないがずっと違和感が残ることが立て続けに起こっている。まあ、文字が読める事はありがたい。俺は深く考えないようにした。深く考えてしまうとキリがないからな。
色んな本を読んでいくうちに気付いた事がある。どうやらこの世界、科学ではなく魔法が発達した世界らしい。どこぞの国民的アニメのヒロインが言っていた「科学なんて迷信でしょ」がこの世界では常識らしい。
という事は……という事はだ……!もしかして俺も何か魔法が使えるのでは??
「……」
声にならない期待で溢れる胸を押さえながら、俺は自分が魔法を使える可能性について検証してみた。
とりあえず、昨日までの行動を振り返る事にした。
昨日は急に異世界に転移して、気付いたら変な森にいた。そして人影が透けて見えて……あれ?人影が見えるのは分かるが、透けてたんだよな……これっておかしいよな……いや絶対おかしい!
これが俺の魔法なのか?はっきり言ってしょぼいが…使い用はある!例えば、覗きとか覗きとか覗きとか!いや覗きにしか使えないなこの能力……まあ試してみるか。
俺はシズルさんのいるリビングへと向かった。覗きをしに……!!
「……シズルさん?」
シズルさんはリビングにいなかった。これはチャンスだ。
俺は透視能力を試してみる事にした。
とは言ってもどうすればいいんだ?とりあえず壁の方に意識を集中させて……
クソッ…!見えない…某国民的アニメでは見えてたぞコレ。じゃあどうすればいいんだ……
そして俺は悩んだ。悩んだ末……
「……やってみるか」
前回の透視でシズルさんの人影を見つけられたのは、無意識とは言え、助かりたいという俺の強い想いからだ。
つまりこの能力は俺の感情が関係している。まだ確定ではないが、試してみる価値はある。やってやる!
「ふう……」
少し深呼吸をしてからこう叫んだ。
「シズルさん大好きシズルさん大好きシズルさん大好きシズルさん大好きシズルさん大好きシズルさん大好き×∞」
シズルさんへの強い想い(という名の煩悩)から、いとも簡単に透視を獲得してしまった……これでいいのか?っと、とりあえずシズルさんにこの世界についてとか色々聞いてみないとな……
俺はシズルさんのいる方へと向かって行く。