表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

テロの始まり

3.


翌週には、すべてが様変わりした。

僕は土曜のうちに家に戻ったが、それはT県に用が無くなったからではなく、幸運にもS駅へ向かう新幹線がまだあったからだ。

これを逃せば、帰れなくなる可能性があった。


全国のあらゆる路線で、この前僕たちが遭遇したような「遺体なき人身事故」が起き、列車が足止めされていた。

明らかに、計画されたテロ行為であり、大都市の鉄道網の中でも動脈となりうる重要な路線ばかりが狙い撃ちされていた。


それに、連中はY駅で行なった「テスト」からひとつ学んでいた。


僕とビィが墓参りをしたあの日、Y駅のホームから不死身の人型が飛び込んだが、結局2時間ほどしか電車を足止めできなかった。

人身事故に慣れている都市部の路線では、同じ手で20分も止められないだろう。

だから、今回の「本番」では、飛び込んだ者たちは皆、大量のコンクリブロックを線路に持ち込んでいた。

リュックや、自転車の荷台にブロックを詰め込み、荷物ごと侵入する。

結果、事故の被害者が見つからないというトラブルの他に、飛び散ったブロックで二次被害が出たり、欠片をすべて取り除くまで線路が使えない、などの障害が重なることになった。


警察や報道機関は一貫して「威力業務妨害の容疑者が現場から逃走した」という言い回しを貫いていた。

しかし、目撃者たちの口に戸は立てられない。

インターネットを介して噂はさざ波のように広がり、今まで都市部を避けていたアレがついに本気を出したのだ、この社会はテロの脅威に追い詰められ、危機に晒されているのだと、皆が理解していた。


そして食品テロのほうも、事態は深刻だった。

各店舗はスタッフを夜通し残業させて棚卸しを行ない、チェック済みの商品から再度品出しをしたが、袋入りの食品を買う客は激減した。

代わりに、缶詰が飛ぶように売れ、一部の食品会社は緊急増産体制に入った。

また、外食店は自社農場や固定の仕入先を持っていることをこぞって宣伝し、ほとんどのチェーン店には連日行列ができた。


僕の母はと言えば、至って冷静だった。

農家をしている友人に連絡して米や野菜を直接買い、卵や魚介を扱う知人も紹介してもらった。

だいたいこうしたルートで買うと「ダンボール1つ」が最小単位になるため、食べきれないぶんは隣近所に配り、その見返りに別な食品や、日用品や、最新の噂話を仕入れた。


「学校には行っときなさい」と、母は言い、毎日弁当と手作りのお菓子を僕に持たせた。

コンビニなどで袋入り商品を買い食いしないように、子供に手製のお菓子を持たせる親は多かった。

母の腕前は素人の域を出なかったけど、スナックが食べたいと騒げる歳でもない。


電車を使って遠距離通学をしている生徒は、半分くらいが「自宅学習届」を出して学校に来なくなった。

これは、僕の通う高校が進学校だというのが大きかった。

そもそも入学した時から「大学のための予備校」としか考えていない生徒が多く、学校側もそれを容認した。


ビィのSNSページは相変わらず沈黙していた。電話もずっと繋がらなかった。


僕は「追い込み」の続きに取り掛かり、他のことを忘れるように努めた。


テレビやネットのニュースサイトは上滑りした建前を流し続け、掲示板やSNSは異様にギラギラした投稿で埋め尽くされていた。

見るな、見るな、と僕は自分に言い聞かせた。


重苦しく、長い1週間が過ぎた。


毎日、どこかで列車が止まり、どこかで混入物いりの食品が見つかった。

そのうちの幾つかは単なる自殺や便乗した愉快犯、模倣犯かも知れず、また食品混入物に至っては「野菜に虫が」などの神経質すぎる報告や、画像加工を駆使した偽の証拠写真が蔓延し、混乱の一途を辿った。


ネット上では皆がイライラし始め、手っ取り早く目に付いた者を批判した。

土日が明け、最初に血祭りにあげられたのは「女子マラソンのファン」、火曜日の敵は「フォアグラ反対論者」。

理由など無い。

1行の投稿、1枚の写真からすぐに火が点き、燃え出すと皆、訳も分からず油を注ぎ続けた。


水曜日の夕方、神白が家を訪ねてきた。

あの日一緒にS駅まで帰った時、住所を教えてあったのだ。


「ニートの曜日感覚は違うね」

自室に通して、母が階下に去ったのを確認してから、僕は言った。


「元気そうで良かったですよ」

神白は床に直接腰を下ろした。


僕はベッドの縁に腰掛け、神白には勉強用の椅子を勧めたが、辞退されてしまった。


「君の町は落ち着いているの」


「まあ、そうですね。農家は何かと備蓄が多いし、うちの村は電車もないし」


「今日はどうかしたの。急に」


「お願い、というか、質問があって」

神白はそう言って、背負ってきた小さなバッグから何かを取り出した。

輪ゴムで留めた梱包用シートを解くと、中からパソコンの内部パーツみたいなものが出てきた。


丸い、緑色の基盤に無数の小型チップが植え付けられ、プリントされた金色の導線が複雑に走っている。

その全体が堅そうな箱に収まっていて、透明な蓋で密閉されていた。

大きさは、直径10センチ弱。

厚みは3センチも無いだろう。

規則的な円柱ではなく、どちらかというと凸レンズ型だった。


「これが何に見えますか」と、神白は言った。


「何かの部品というか、家電のマイコンとかに見えるけど」僕は優等生的に答えたが、次に神白が何と言うか予想できる気がした。


「ヤツラの身体に入っていたものです」果たして神白はそう言った。「そもそもうちの自警団はあまり積極的にヤツラを追わず、単に山奥へ追い払うようにしてたんです。ただ、この前の視察でT県の人達はかなりヤツラの身体を研究してる様子だったので……思うところがあって、あえて捕まえてみたんです」


「それで解剖してみたわけ」


「さすがにそれは無理でした」


「一応は試そうとした、みたいな言い方だね」僕は顔を歪めてしまった。


「以前に何度か捕まえてしまったときは、地面に穴を掘って、その中で荼毘にふして、そのまま埋めてしまう、という方法を取ってたんです。服や所持品もそのまま燃やしたので、骨以外のものが焼け残っても疑問を持ちませんでした。

ただ、T県の人達が何か含みのある言い方をされてたので、気になって今回、裸にして処理してみたんです。それで骨とともに焼け残ったのがこれです」


「はあ」


「伊東君はこれが何だか分かりますか? いえ、うちの町には、分かる者がいなくて。

僕が知る人の中でいちばん賢いのは、伊東君なので、持って来てみたんです」


「いや、僕にも分からないよ」僕は苦笑いした。「ただ、こういう部品はパソコンや家電には必ず入ってるんじゃないかな」


「これが頭脳の代わり、なんでしょうか」


「どうかなあ。家電はともかく、パソコンはもっと複雑な役割分担があるし、その、ヤツラも自律して歩いたり人を襲ったりするわけだよね? とてもこんな部品ひとつで、そんな複雑な動き方はできないと思うけど」


「では、これ自体に何か感情とか考えが宿っているわけではないんですね」神白は基盤入りケースを見下ろしてそう言った。


当たり前じゃないか、と笑いそうになった。

しかし、それはさすがに失礼か。

知識が無い人にとっては、よく分からない技術は神秘的に見えるのだろう。


「その部品自体は、単独では何の働きもしないと思う。電源や、実際に動作する本体と上手く組み合わさって働くものだから」


「なるほど……」


「たぶん他の必要な部品は燃えてしまったんじゃないですか。人の身体を焼くとなると、相当な高温にしないといけないんでしょ。このケースが耐熱性があってたまたま燃え残ったけど、きっと熱で基盤はダメになってると思うし」


「はあ、熱でダメになるんですか」


「大抵はそうだよ」


「じゃ、もし万が一、この部品を僕の脳に埋め込んでも、何もならない?」


「何も、というか、そんな手術したら普通死ぬけど、死ななかったら、まあ今まで通りの神白さんだと思うよ」


「うーむ」神白は深く頷いた。「そうか、そうですか……」


「そもそも、この人、じゃなくて、このナニカさんが、どこかに身体的な障害を抱えていて、体の一部に機械を埋め込んでただけかも知れない。

義足とか義手とか、人工心臓とか、そういった身体的な道具の部品かも……それこそ家電みたいなもので。とにかく、こういう部品だけでは、人の考えや動き方を制御することはできないと思う」


「そうですか……いや、勉強になりますね。聞きに来て良かった」


神白が素直に有り難がるので、僕は気分が良かったが、同時に何だか不安な気持ちでもあった。


「僕は専門じゃないんで、上手く説明できてるか分からないけど」

と僕は言い、この言い方は高校によくいる雑談好きの教師と同じだな、と気付いた。


それから僕と神白はビィの行方と、ネット上での乱痴気騒ぎについて少し話した。


お互いに、新しい情報は持っていなかった。


「食品テロのほうも、ヤツラの仕業なのかな」


「タイミングが合いすぎてますからね」と神白は頷いた。


「ヤツラを動かしてるのは、誰なんだろうね。このテロを仕切って指示を出してるのは」


「少なくとも、人間でしょうね」と神白は言った。


「そうなの?」


「僕が退治してきたヤツラのほとんどは、駅前に出るどころか、まともに道を歩く事もできていなかったです。舗装道路と藪の区別が付かなくて、ただ行きたい方向へ何もかも突っ切っていくのです。そういうところが、明らかに生き物ではないな、と感じられるわけです。ヤツラはもともと、誰かに使われる道具なのだと思います」



「散歩でもしませんか。ちょっと外の空気を吸いましょう」急に神白はそう言った。


「僕、そんな暗い顔してる?」


「そうですね。とても辛そうです」


「受験のストレスだよ」と僕はうそぶいた。


用もなく外に出るなんて、もう何年もしていなかった気がした。

日が暮れたばかりの住宅地は、夏草のにおいの風が吹いていた。


狭苦しい世界だ。家がぎっしりと詰め込まれて。

テロリストたちはこの社会を怨嗟しているようだが、社会の反応は至って自分勝手で、冷淡だ。

皆、ネットで暴言を吐きながら、普段の暮らしは意固地に保守している。


「お洒落な町ですね」神白は別なことに感心していた。「街に来ると、田舎を出て行く者の気持ちが分かります」


「じゃあなぜ、出ないの」


「なぜでしょうか。面倒だからかな。田舎は自分の部屋みたいなものですから、刺激は無いけど居心地はいいんです」


それに、と神白は言った。

そのまま、彼が何も続きを言わないので、聞き間違いだったのかなと僕は思った。


「弟がいるんです」と、神白はずっと経ってから言った。ゆっくりと絞り出すような言い方だった。


「何か訳ありなの」


「障害があるんです。2年前、ヤツラに襲われて、脊髄をやられて」


「そう」僕は気の利いたことを言おうとしたが、上手く思いつかなかった。


「辛気臭い話して、ごめんなさい」


「いや、別に……ていうかそれは弟さんに失礼でしょ」


「うーん」


「寝たきりなの?」


「……病院からは、リハビリに通うように言われてるんですが、あんまり気乗りしないみたいで」


「ニートと引きこもりの兄弟というわけか」


「そうなりますね」


ちょっとだけ広い道路を渡ると、周りの家2軒分ほどの広さの公園に行き当たった。

遊具は全部錆びていて、子供の姿はなく、おじさんが犬を散歩させていた。

犬は雑草の根元を嗅ぎ回っていて、おじさんは犬の好きにさせていた。


「戻る?」と僕は言った。


神白は頷いた。


辺りは急激に暗くなっていた。


「これからどうなるんだろうね」


「さあ、何か起きるんでしょうか」神白はとぼけた感じに言った。


「だって、テロだとしたら、いずれ犯行声明とか、政府への要求とかあるんでしょ」


「ああ……そういう手もあるのか」


「それともただ世の中を混乱させたいだけなのかな」


「問題はそれでどういう得をする人がいるのかという事でしょう」と神白は言った。「僕らは攻撃を受けると、自分がどれだけ嫌な思いをしたか、ばかりを考えてしまうものですが、相手だってその攻撃のために手間暇をかけて苦労をしているわけです。そして、見返りが無いのに苦労を選ぶ者はいない。こんなふうに、日本に住んでいる者全員が困るような攻撃は、相手にとっても負担なはずだし、長続きはしないと思いますよ」


確かに、その通りだ。

僕は神白の大人びた考えに感心した。

もうちょっと科学知識とかもあれば、尊敬できるのにな。


その日の夜更け、僕は着信音で目覚めた。

ビィからだった。


「お兄ちゃん! 電話くれてたね」彼女の声は、快活だった。「いやーごめんごめん! まさかこんなことになるとは思わなくて」


「無事なんだね?」僕は目をこすりながら言った。


「うん、ピンピンしてるよ。ただ電話の使えないところにいて」


「それならいいんだよ……何してたの?」


「ハッカソン」


「はっかそ……」


「プログラミングの勉強会というか、コンテストというか、合宿みたいなものだよ」


「へえ……。食べ物とか大丈夫だった?」


「ああ、混入事件のこと? まあ、確かめてから食べればいいや、みたいな感じで、誰もあんまり気にしてなかった」


ビィは僕よりもずっとたくましく生きていたらしい。


「ゾンビに攫われたのかと思ったよ」


「ごめんごめん。結局何とも無かったんだ。心配したよね」


「いいんだけどね」僕はT県までわざわざ出向いたことを言おうかどうか迷った。


しかし、僕が何か言う前に、


「じゃあ、また」とビィが言った。


「あ、うん」


電話は切れてしまった。


僕は時刻を確かめ、神白は寝ているかも知れないと思った。それで、簡易メールでビィの無事を伝えた。


"よかったです。安心しました。"

神白はすぐに返信してきた。


僕は夜分に起こしてしまったことを謝ったが、


"起きてましたよ。ニートなので。"

と返ってきた。


「あっ、そ」

どいつもこいつも能天気だな。受験で苦しんでるのは僕だけなのか。


ずり落ちていた掛け布団を乱暴に引き上げて、僕は寝直した。



その週の後半には、全国のガソリンスタンドが新たな標的になった。


有人、無人を問わず次々と放火され、激しい爆発とともに散った。


ヤツラは必ず、客のふりをしてスタンドに入り込み、正面から堂々と火を放った。

結果、辺りにいた者多数が死傷し、ヤツラも無事ではないはずだったが、遺体の判別にはいちいち時間がかかった。


まだ被害を受けていないスタンドも、恐れをなして営業を停止したり、縮小しようとした。

ガソリンの流通が止まれば、他の交通手段がない田舎は干上がってしまう。物流への打撃も計り知れない。

各地のスタンドに警察が緊急配備され、人手が足りないところには自衛隊も駆り出された。

ものものしい監視の中で人々は粛々とガソリンを買うようになった。


誰が言い出したわけでもないが、車の種類や社会への貢献度に応じて、一度に給油して良い量が異なる、という認識が広まった。

物流に関わるトラックや、バス、タクシー、介護用車などが優先的に満タンが許されるいっぽう、仕事の無さそうな若者や学生が満タンを頼むと白い目で見られた。


赤ん坊を乗せた主婦が強気に満タンを主張したことで、ネットの世論はまた燃え上がった。

田舎体質の抜けない土地では、地元のお巡りさんが率先してこうした「選別」に口出しをすることもあり、それがまたネットに取り上げられると大炎上した。

ついに総理大臣自らが会見を開いて「国内のガソリンの流通は質、量とも通常通りであり、奪い合う必要はない」と呼び掛ける事態になった。


ウンザリするような毎日。

自分の生まれ育った社会が、こんなに愚かで場当たり的で、くだらない連中によって構成されていたなんて。

教師の中には授業中にこうした「衆愚」の体質を熱心に批判する者もいたが、生徒の半分くらいは醒めた顔で聞き流していた。

自分と、自分が愚かだと思う人達の間に、明確な線引きができるという自信を、僕たちは持てなかった。


ビィのSNSへの書き込みは再開されたが、明らかに前より少なくなった。

また、何かをわざと伏せているような、謎めいた書き込みが増えた。

僕自身も、SNSへの熱意を失いつつあった。

僕にはもう、「バーチャル妹」は必要ないし、亡き本物の妹に対する異様な執着も、必要ないのだろう。

妹の不在は、単に、僕という人間を構成するプロフィールのひとつに過ぎなくなったのだ。


警察はようやく、一連の事件の容疑者を何人か逮捕した、と発表した。

5つの「容疑者」の顔が公表された。

どの顔も、何となく日本人離れした、しかし外国人とも言いがたい、男の顔だった。

疲れ切ったような無表情の顔写真だったが、意外にも人間らしく、それぞれに個性も感じられる顔つきだった。

見れば人間ではないと分かる、というのが神白やビィの言い分だった。

ということは、この5人は少なくとも人間の犯人なのだろうか。

それとも、顔写真では分からないような他の特徴があるのだろうか。

容疑者は全員が「身元不明」で、「黙秘を続けている」と発表された。


僕は毎日通学し、時間割をこなし、放課後は「自習」と称して教室で麻雀をした。

校則がうるさい学校ではないが、一応、教師からのイチャモンを避けるために、本物の麻雀牌ではなく、カードの余白に麻雀牌が印刷されたトランプを使っていた。

この兼用トランプはクラスの才女、河野が「たまたま家にあったから」と貸してくれたものだ。

当初、僕たちは河野やその友人の女子を交えて、いかがわしい罰ゲームつきの麻雀ができるのではと期待したが、河野は「麻雀は知らないしこれから知るつもりもない」とバッサリ。

結局、馬鹿男子数名が母親に持たされたお菓子を賭け合って戦うという、じつに健全な課外活動になっていた。


「お前、先月すげえ可愛い女の子連れてたって、佐藤から聞いたぞ」

対面の山田がクジャク型に広げた札の向こうからじっと睨んできた。


「ああ、はい、はい」


「カノジョ? カノジョ?」


「どうかな」


「ムカつくわー。どこで出会うの? まさかうちの学校の子?」


「いや、ネットで会った子」


「うわっ、最悪だ。最近の若者は。フケツ!」


「どういう視点なの、それは」


「ポン」と、神奈川が無表情に言う。


「バス停で抱き合ってたって聞いたぞ」山田は自分の番なのに、札を引こうとせず、僕への尋問を続けた。「ヤッたの?」


「ヤッてないよ」


「嘘つくな」


「まあ嘘だと思われてたほうが僕も気分がいいけどさ」


「え、なんだよそれー。腹立つわー。いずれにしろ腹立つわー」


学校に通い続ける限り、僕たちの生活は日常に埋もれ、守られている気がした。

何が起きても、この教室の平和だけは変えられないはずだ。

何が起きても……たとえ、全ての電話回線が死に、インターネットが無くなっても。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ