一ノ瀬さんのきもち
もう終わりだと思った。今日は六本木さんと動物園に出かけた。終始お互いよそよそしい感じで、全然楽しめなかった。でもまあお互い誤解があったみたいで、これまでどおりいい友人関係を続けていけそう。……それで満足というわけではないけど。
六本木和也さん。私の好きな人。
初めて見かけた時は、怖そうな人だなって思った。だって目つきが鋭いというか。
日本のトップ企業だからかお高くとまってるんだろうな、って思い込みがあったからかもしれない。
でもたまに他の知り合いの人と話してる姿は気さくな感じもしたし、見た目は結構、いやかなり好みだった。
私年上の男の人が好きなんだよね……欲を言えばもっと枯れてる感じがあれば、いやいやどうせ時間がたてばそうなるよね。
しばらくしたら話す機会ができた。イメージと全然違ってすごく親切だし、優しい。
そんなに年離れてないはずなんだけど、大人だな、と思った。
自分で言うのも恥ずかしいんだけど、私は多分見た目は整っている方だと思っているし、男性から好意を向けられることも多かった。
有難い話だとは思うんだけど仕事も忙しいし、それ以外の時間は趣味に使いたかったし、仕事を始めてからは男性とお付き合いすることもなかった。
私は人が考えていることは比較的察することが出来るほうだと思うので、どこか男性は下心が見えてしまうので接するのを避けてしまうことが多かった。
でもあの人はちょっと違った。困ったときも親身に相談に乗ってくれるし、男女の友情って今まではあり得ないと思っていたけど心地いい関係だと思った。
でも女として見られていないというのもちょっと複雑だ。夏休みだってそう。お互い大人だし色々な可能性を考慮して一応心の準備はしていた。でもあっさりと帰された。ほっとしたというのもあるけど、それ以上に落胆してしまった。正直期待してたと思う。
この前後輩の女の子と一緒にいるところを見てしまって愕然とした。全然私とタイプが違う、小柄でかわいらしい女の子……あと若い。そりゃ私なんて相手にされないよね、こういう子が好きなのかと思った。
私はあの後、散歩して帰るといいながら一人でヤケ酒した。
そんなことがあったけど、とりあえず現状維持には戻せた。ここからは私の頑張り次第だろう。
六本木さん、あなたのことが好きです。
私のことも好きになって欲しいな。