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スウェーバルと新型銃

「あらタイチちゃん、何だか顔がゲッソリしてるわよ」

「最近は戦いの連続だったからな。疲労もたまっているのだろう」


 コブスとジェリドの心配はありがたかった。それでもアイネに襲われていましたなんて言えなかった。

 階段を降りていき厨房に入る。お腹が減った。


「おはようタイチさん」「おはようッス!」とミランダとミケットが料理を作っていた。

 トルガから一度アウグスタに戻りこちらの宿を一度開けている。


「なんか食べるものないかな?」

「そこにあるパンとサラダを食べちゃっていいッスよー」

「ありがとう」


 ミケットの指差したテーブルに合ったパンとサラダを受け取り、厨房を出てカウンター席に座って食べ始める。スペシャルメニュー以外は本当に旨いんだよな。


 朝ご飯を食べていると、アイネが二階から降りてくる。とても機嫌が良さそうだ。

「タイチさん、昨日はお楽しみでしたね」

「それは第三者が言うセリフだ……。ずっと魔法で拘束しやがって」

「だって逃げるじゃないですか! ()()()()()()()()()()()()()

「ヒェ……」


 最後に含みのある言葉を言うとアイネは厨房へと消えていった。

 これからも定期的にあれが起きるということのようだ。


 別の意味での身体の疲れをどうやって癒そうか悩んでいたとき、

 レッグスがこちらを訪ねてきた。


「ホンゴー伍長! ノエル少佐がお呼びです!」

「分かった。なんでそんな傷だらけなの? なんで嬉しそうなの……?」

「これは自分が遅いので、少佐にお仕置きを頂いただけですよ! ありがたいです!」

「そう、平常運転なのね……」


 早々に朝ご飯を食べ終えてレッグスについていく。

 案内された試写室にはノエルとリリアが待っていた。


「ホンゴー、昨日はお楽しみだったか?」

「アイネを焚き付けたの少佐でしょ?」

「その言い方だと当たりらしいな! 次は私とリリアの相手もしてもらおうか」

「新しい技も覚えました。簡単には落ちないようにしますよ」

「リリアまで怖いこと言わないで!?」


 嬉しいような嬉しくないような方向にハーレム要素が高まっていた。


「それで、今日は何の用です?」

「新しい武器を作った!」

「少佐、やっぱりこの国の採算技術の速さ以上ですよ……」

「私がドンドン開発局に人を送り込み続けているからな。この間は景気づけに私とリリアでポールダンスショーをやってみたがかなりやる気になっていたぞ?」


 そして、その熱意で無理くり動かしているのだろう。飴と鞭の使い方がある意味極端すぎる。

 目の前に黒い布が被さっていた物をばさりと布を退けて見せた。


 明らかに重みのあるフォルム。それに分厚い銃身にはホースの様なものが付いており、小さな箱に繋がっている。サイズも銃と大砲の中間ぐらいだが、人が持ち運べるものではない。

 横から装填できるようにベルトに銃弾がセットされた箱が数個ある。


「まさかこの世界でこれを見るとは思いませんでしたね。この間やっと連射式銃を作ったかと思ったばかりなのにいきなり重機関銃ですか……」

「むしろ今までが遅すぎたのさ。阿保共が自分たちの晩餐会やらパーティで無駄にしていた財をしっかり配分しただけにすぎん」


 ノエルが憎たらしそうな顔で貴族の顔を思い出していた。


「そういえば、捕らえた貴族派の中にサイスの姿がなかったな」

「え? 逃げたってことですか?」

「あれでも頭は良い奴だったからな……。スウェーバルに向かったという話も聞いてな。まだそのあたりは調査中だが」


 こちらの戦力が向こうに漏れているべきだろうとノエルが話す。


「それもあってこいつをさっさと作らせたわけだ。加えて大砲も更に改良して飛距離を伸ばしているからな。魔獣を連れていても問題ないだろう」

「その魔獣って何なんですか? ずっとあったことないんですよね」

「大体は大型の生物を差しますね。これがそのイラストです」

「え? めっちゃデカい亀とクマじゃん……」


 リリアに渡された紙に描かれていたのは人の数十倍のサイズの亀やクマの様な生き物だった。

『ドラゴンとかキマイラとかじゃないんだ……』

 よくやっていたゲームを思い出したが、そういう類ではないらしい。


「人間よりも強いし速さもある。奴らに近づかれる前に叩かないとダメだろうな……」

「んー……。あんまり気乗りしないですけど、あれもあった方がいいか。レッグス! 前に渡した書類に設置するタイプの武器があっただろう?」

「あー、地雷ってやつですか? 確かに作成は進んでいますが」

「全部遠隔で起動できるようにしておいてほしい。相手が大型ならそっちの方が有効だろうしね」


 本郷が依頼するとレッグスが開発局の人間に話を進めているようだった。


「お前の世界は本当に私たちよりも進んだ世界なんだな」

「そうですよ少佐。残念な歴史ばっかりです。殺して殺されて、未だに多くの人が死んでいます。俺の国では剣も銃も持つことは禁止されていたのでそれなりの治安の良さですけど」

「可愛い女はいるのか!?」

「本当にぶれない人だな……」


 この容姿であればすぐに人気者だろうが、スキャンダルが付いて回りそうだなと思った。


「さて、世田話もここまでだ。製造が完了次第、我々はニューヤード前線基地に向かう。恐らく戦場はアデン平原。敵はアデン砦を本拠地にしてくるだろう」


 その言葉に少しだけ震えた。

 コブスとジェリド達にとっては忌み嫌う戦場が、最後の地となったからだった。



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