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神様の社畜は戦う

 蹴られたせいで体中が痛い、それに飯田が盛った毒のせいで、胃が焼けるような痛みと冷や汗が止まらなかった。それでも本郷は生きていた。


(こっちの世界に来てから蹴られたり吹き飛ばされてばっかかよ……。アニメみたいな最強過ぎて超余裕! みたいな展開が俺にもほしいもんだ……)


「だからさ、なんで立ってんだよ! ちゃんと死んでくれないと困るんだよ!!」


 飯田は机の上に置いてあった書類やグラス、ワインを横殴りにするように弾き飛ばす。

 その顔は困惑と怒りの表情を混ぜたような顔だった。


「申し訳ないんですけどね、そんな簡単に死ぬわけにはいかないんですよ。皆も待ってるし、スウェーバルの連中だって相手にいなきゃいけない。そんでもって、神様にもそうするように仕事の依頼を社畜なもんで……。アンタみたいな卑怯者に構ってられないんですよ!」


 ゆっくりと、しかし確実に飯田に向かって本郷は歩いた。


「ひ、ひぃ……! 俺を殺せば貴族や軍だって黙っちゃいないぞ!」

「アンタが頼りにしている連中なら全員仲良く牢屋に行ったじゃないですか……」

「そうだ取引しよう! 俺があいつらを説得すればいくらでも好き勝手が出来るぞ! 金も女も困らないし、嫌な奴だって簡単に消せるんだ!」


 飯田の必死の説得に対して、本郷は一歩、また一歩と歩みを止めることはなかった。


「分かった! 降参、降参する! 紋章もくれてやるし、俺はガムルスから消えるから命だけは助けてくれ! お願いだ!」

「……本当ですか?」

「あぁ、嘘じゃない!」


 もう少しで手が届こうかという距離で本郷は立ち止まった。


「じゃあ、『紋章をこちらに渡してください』よ。そしてさっさと消えてください。アンタの顔なんて二度と見たくない」

「ちょ、ちょっと待て、今渡すから」


 飯田は自分の紋章が見えるようにしようと動いた。

 しかし、その動作も全て考えた上での行動であった。


「死ねや本郷!」


 腰に隠していた短刀を素早く右手で取り出して構える。そして、数秒後には構えた短刀が飯田の目の前から消えた。

 取り出したと同時に、本郷がアイテムボックスから取り出した太刀で手首ごと斬ったのだ。


 斬られた右手がコロコロと地面を転がったのを見て、飯田は混乱していた。


「あれ? 俺の……手? あ、あぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!! いでぇぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 のたうち回る転げ、左手で何とか斬られた右手から溢れ出る血を止めようとしているようだった。


「そうなんですよ。少しは痛む人の気持ちが分かってもらえましたかね……?」


 本郷はのたうち回る飯田の身体を片足で抑えつけて仰向けにさせた。


「なぁおい、助けてくれ……。マジで死んじまう……」

「この世界じゃこんな事、日常茶飯事なんです。敵にそんなこと言ったって助けてくれる奴は本当にお人よしか、バカだけですよ」


 持っていた太刀を逆手に持ち返し、その剣先を飯田の喉元に突き立てようとした。


「本郷お前が死ねよ!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……」

「先輩、今までお世話になりました。成仏して二度と出てくんな……!!」


 グッと剣を喉元に突き刺すと、飯田の身体が数回痙攣して、動かなくなった。

 そして、飯田の肩の紋章が自分に移動したのを確認してドサッと腰を落とす。


 嫌いな人ではあった。最後まで気にくわない死に方だった。

 それでは、知り合いを殺すということがここまで精神的に負担があるものだと本郷は知らなかった。


「ダメだ、めっちゃ疲れた……」


 今までにない疲労感に襲われていた。


 そして、部屋の扉が開かれた。


「タイチさん、()()()()()()()()……?」

「うん、終わった。でもダメだった。話し合いで何とかなると思いたかったんだけどね。人生なかなかうまくいかないことだらけだ」


 心配そうにこちらを見るアイネにニコッと笑って見せた。

 アイネはぎゅっと背中から覆うように本郷を抱きしめた。


「無理、しなくていいんですよ……」

「そうだな。慣れって嫌だなぁ。知り合いを殺したっていうのに涙一つ出ない。むしろ嫌だって感じすらしなかったわ……」


 血の付いた両手をじっと見て本郷はつぶやいたが、アイネは何も言わず抱きしめる力を少しだけ強めただけだった。


「タイチさんは私が守りますから」

「はは、それって本当は男が女に言うセリフなんだけどな……」

「じゃあ、タイチさんは私をずっと私を守ってくれますか?」

「あぁ分かった……ん? え?」


 振り向こうとした際に、突然口を塞がれる形でキスをされる。

 本郷の頭は真っ白になり、目が丸くなったまま固まった。


「え? アイネさん……?」

「さ! 行きましょうタイチさん。やらなきゃいけないこともいっぱいありますよ!


 スクッと立ち上がったアイネは悪戯っ子の様に笑う。

 こうして、本郷は4つ目の紋章を手に入れたのだった。







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