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ニューヤード平原制圧戦【コブス&ジェリド編】

 ニューヤード基地右側に隠れていたジェリドは空高く飛んでいく閃光を見逃さなかった。


「来た! 合図よ!」


 その信号を見てジェリドはガバッと立ち上がる、ベアーズ以下数十名もそれに合わせて立ち上がる。


「行きましょうジェリー隊長!」

「あら、べーちゃんやる気満々じゃない♪ アンタ達~! 着いてこいよオラァ!」


 男たちは一斉に砦に向かって駆け出していた。本郷たちが正面から攻撃を仕掛けているのでこちらが気が付かれる気配はなかった。


「手榴弾で吹っ飛ばしちゃうわよ!」

「了解です!」


 頑丈な扉にジェリド達は数十人で一斉に手榴弾を投げ込む。


『ドカン!』


 いくら頑丈な扉とてこれだけの爆薬ならば簡単に穴を空けることが可能だった。空いた穴から砦内部に突入していく。


「なんだお前らガムルスの……!」

「邪魔なのよ! 寝とけや!」


 目の前にいた敵兵士にジェリド渾身の右ストレートが当たり、盛大に吹き飛ぶ。吹き飛ばされた兵士が建物にぶつかり、周りにいた兵士が驚いて一瞬動きが止まっていた。そして一斉にこちらへと向かってくる。


「死ねぇぇぇ!」

『バスン!』


 咄嗟に切りかかってきた兵士に本郷から渡されていた散弾銃を撃っていた。当たった男から大量に血しぶきが飛び、後ろ吹き飛ばされる様に飛んだ。


「あらやだ、これ凄いじゃない♪」

「隊長! 敵が……!」

「……!? 全員密集陣形よ!」


 ジェリド達の予想よりも早く、敵がこちらを取り囲んでいた。そして、分断される前にジェリドが全員を固める。まるでこちらの突入が事前に分かっていたかのような早さだった。


『もしかして、バレてた? いくら何でも早すぎるわね……!』


「アンタら! 誰かが倒れても振り返るんじゃないわよ! 目の前の敵にだけ集中しなさい!」

「「おぉ!」」

「ぶっ殺してやんよオラァ!!」


 ジェリドが先陣を切る様に敵の一団へと向かっていった。


「ラカスラトに負けるんじゃないわよ!」

「撃て! ガムルスの連中を生きて返すな!」


 密集したジェリド達が敵兵に向かって一斉に銃を放つ。ジェリド達にも一斉に浴びせるよう数のな魔法が放たれていた。そして、その魔法がジェリドを、仲間たちを貫いていく。


「痛い…じゃない……! 乙女の身体に何してくれんのよ……!」

「なんだこのオカマは!? お前達早くこいつを殺せ!!」


 その言葉を聞き逃さなかった。自分をオカマと言ったそいつを、そして周りに命令を下した男を。


「オカマって言ったわね……。殺す……! お前は絶対に殺す!!!」

「ヒッ……! 早く撃て! そいつを殺せ!」


 ジェリドに目の前に無数の魔法の光が映っていた。


 ◇  ◇  ◇


 同時刻、ニューヤード基地左側に隠れていたコブスは天高く飛んでいく信号を見逃さなかった。


「来たか…! 行くぞ! 私に付いてこい!」

「お前らコブス隊長に続け!」


 コブスにマウシーそして仲間たちが砦に向かって一気に突き進む。もうすぐ扉に到着するというところだった。


『ギギギ……』


 コブスは走りながら驚いていた。壊して突入するはずの扉が開き、敵兵と目が合った。


「ガ…!ガムル……!」


 相手の兵士が最後まで言葉を発するよりもコブスの剣が兵士を貫く方が速かった。そして兵士を盾にするように基地内部へと突入する。


「来たな。やはり賢者様の言った通りだ!」

「賢者だと……? やはりいるのか!」


 本郷に知らせようと信号弾を取り出そうとしたが、こちらへ放たれた魔法を見て咄嗟に飛び退いていた。


「ぎゃああああ!」

「クソ! 味方が……!」


 避けきれなかった味方に敵の攻撃が当たり、燃える姿が見えた。


「全員止まるな! 狙い撃ちにされるぞ!」


 コブスの指示で獣人達が一斉に集まり反撃を開始する。しかし、明らかな待ち伏せだった。


『おかしい、なぜこんなに準備が……? やはり召喚者の指示か? 早くタイチに知らせねば……!』


「そこのジジィが隊長だ! 殺して武勲をあげろ!」


 敵兵の中から声が聞こえる。間違いなくあいつがここの隊長だろうとコブスは確信した。


「マウシー! 私が頭をやる! 後の部隊を任せるぞ!」

「了解です! 聞いたなお前ら、コブス隊長を援護しろ!」


 コブスを先頭に敵陣へと斬り込んでいく。周りの敵を気にも留めず敵の隊長に向かって突き進む。


「邪魔だ! そこを退けぇぇぇ!」


 目の間に立ちふさがる敵を、捌くかのような剣戟で切り伏せていく。一瞬だけ後方を見た。立っている仲間の数が半数程に減っていた。それでも、倒した敵の兵士の数の方が圧倒的に多い。


『流石は私の育てた部隊だ……! しかし、これ以上味方をやらせるわけにはいかないのでな』


「老いぼれが! 死ね!」

「おっと」

『バスン!』


 コブスは散弾銃で至近距離から敵を射抜く。敵の腹が吹き飛び向こう側が見える。


「タイチめ、私でも当たる銃を作ったじゃないか! 気に入った!」


 手当たり次第に散弾銃を放っていた。広範囲に渡り当たる銃が目の前の敵を薙ぎ払っていく。


「ジジィ1人に何を手こずっている! 早く殺せ!」

「私を簡単に殺せると思うなよ! まだ妻の料理の腕を上げておらんのだ……!」

「何だ? こいつは何を言っているんだ!?」


 突き進むコブスに向かって大勢の敵が更に覆いかぶさるように剣を振り下ろした。



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