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閑話ートルガ開発日誌ー

「ホンゴー伍長! 持ってきましたよ!」


 首都アウグスタからレッグスが大量の荷物を持って前線基地にやってきた。本郷たちが作業に取り掛かった2日後の事である。

 そして、レッグスとともに荷馬車を運搬していたのは本郷たちとは別の獣人族だった。


「ノエル少佐が街に溢れた奴隷たちをドンドン雇って解放してるんですよ。今頃トルガにもかなりの人数が移動し始めてるんじゃないですかね。それに今じゃトルガの方が儲かるって商人たちまで移動を始めてるみたいですよ」

「あの人、本当にこの国を乗っ取るつもりなんじゃないか……?」

「少佐ならやろうと思えばできるでしょうね……。それにホンゴー伍長がいない間に、トルガの開発にも色々手を加え始めてるみたいですよ」

「うーん、俺の世界の事を色々と話したのは本当によかったんだろうか」


 以前に、ノエルとリリアの羞恥的な責めに合った際、本郷の世界についても話していた。そこまで興味がなさそうに聞いていたので、単に流されていただけだと感じていたが、実行しようと頭の中で色々考えながら聞いていたのだろう。


 本郷がノエルに伝えたのは、あちらの世界ではごく一般的な話である。

 軍から支給(ほとんどノエルが強引に奪い取ってきたという方が正しい)された報酬を全員に配当していた。もちろん戦場に立つ兵士の場合は給料は高めだ。危険手当もつけなければ差別意識が生まれてしまう。そして月給制、出来高制の導入。

 それに役職ごとの給与の変化、深夜の場合にはその手当、本郷のいた世界の制度をドンドンと取り入れる。むしろ本郷にとってはタダ働きや二束三文の給料で働かされていた事実の方がおかしいのだ。


 そして、トルガに残った人員で作物を育てる農業、鉄や革製品に織物の工業、その他飲食や日用品の販売、出来ることから徐々に街に普及させる。給料を貰った人たちが自由に買い物を行い、売った方はそれを元手に新しい商品を作る。これぞ自由貿易。そして資本主義である。

 こうすることで獣人族が離反していくのを防ぐ目的もあった。働くだけでは人間とて精神に異常をきたす。それは獣人族も変わらない。娯楽やサービスを提供することもまた必要である。


 そして余剰に出た分は首都の軍に販売し代金をもらう。貴族派のおかげで潤沢に資金はあるようだし、ノエルからも『搾れるだけ搾り取れ』とヤクザ紛いなことも言われている。そんなこともあり、首都の人々も過疎化するアウグスタからトルガへ移住する人が出てきたというわけだ。


『これ以上増えたら警察とか病院とかその辺も整備していかないとダメだろうなぁ』


「それと、ノエル少佐が退役軍人を集めて、学校、病院、軍警察なんかにも手を出すと……」

「俺がやろうとしていたことをすでにやりだしてるのかよ……」

「もともと軍には存在している部署ですからね。素人に勝手にやらせるよりは上司を付けたほうがいいと思いますし。これが今後の計画だそうです」


 レッグスから渡された書類に目を通していく。その書類には設備投資から人材の育成まで事細かに記載されている。


『ただの変人だと思ったけど、少佐になるだけあってやることはちゃんとやるんだよなぁ。これで街の女性をつまみ食いする癖が無くなればもっということはないんだけど』


 パラパラと書類に目を通していくと、今後の開発設備に関しての記述を見つけた。

『女性専用の会員制店舗』と記載されている。間違いなくノエルの私的な設備だ。これはコブスとジェリドも一緒に反対してくれるだろうと本郷は考え、更に目を通す。


『金貸し屋の創業』と『女装男性の働ける店舗』と手書きで書き足されている。本郷はすかさずコブスとジェリドの方向を見てキッと睨んだが、書類に目を通しているのを見ていたのだろう。すでにいなくなっていた。

 この様子だと、ノエルの私的な設備に関しても自分たちの条件を呑む代わりに手を回されているに違いない。止めるのは難しいだろうと思った。何をされるか分からない。


『まぁ、変な店が少しぐらいあってもいいか……』


 引き続き書類に目を通す。勉学についての記載があった。

 年齢ごとにクラスを分け、順々に指導する、と書かれている。学校制度の導入は本郷も賛成であったので、これは問題ないだろう。小学校、中学校ぐらいまでの年齢までは一般常識の普及は数十年先になれば目が出るだろう。

 しかし、ここにも手書きで文章が書き足されているのを見つける。

『小学校代表・リリア』『中学校代表・リリア』『子供全員の教育管理・リリア』

 もうすでに犯人が1人しかいない。子供好きもここまで来れば異常ではないかと思うが、性格的には任せても問題ないだろうし、これも反対すれば首を絞められる気がしてならない。


 最後のページに付けたされたような紙が挟んであった。開いてみるとそれは家の設計図だった。

『子供3人が住めるスペース、ベランダ設置、日当たりは譲れない』

 これはアイネの文字だろうか。今から家族計画とはアイネらしい部分である。本郷は旦那になる人は大変だろうなと感じていた。


 一方でアイネは困惑していた。自分が妄想でにやけながら描いた家の設計図を紛失していたからだ。

「ない! 私が描いた図面がない! タイチさんに見られたらどうしよう……」


 2人の関係が進むのはもう少し先である。

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