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消えた召喚者

 ニューヤード平原へ向かう途中、アウグスタからリリアが合流した。


「ホンゴー。少佐からの伝言です。『間違いなく貴族派の中にいる』と」

「やっぱりガムルスにもいるのか」

「今回の急な出撃も、援軍がない件についても貴族派の手引きだと少佐はお考えです。自ら出てこない辺り、すぐに向こうから仕掛けてくることはないと思いますが、恐らく向こうも、ホンゴーの事に気が付いているはずでしょう」

「ありがとうリリア大尉、助かった。ノエル少佐にもありがとうって伝えておいてほしい」


 ノエル少佐が言っていた通り、バンデン砦の一件が致命的だったようだ。こちらが向こうに気が付いたように、向こうもこちらの存在に気が付いた。それでも、何か理由があるのかは分からないが、本郷を戦わせて死ぬようにしたいようである。


『自らの戦闘力がないタイプなのか? それとも自分が出るまでもないってことなのか?』


 残念ながら現段階ではまだガムルスの召喚者の情報が少なすぎた。引き続きノエルに頼むしかなさそうである。伝言を伝えてきたリリアは、また首都に戻るとのことだった。


「ホンゴー。今度から私の事はリリアで構いません」

「え?」


 去り際にリリアはそう本郷に伝えて去っていった。その顔は何処か楽しそうな顔であった。


「タイチさんはリリアさんみたいな人が好きなんですか……?」

「アイネ、顔が怖い。それと、銃を持つのも勘弁して」


 後ろからアイネに銃を突き付けられた。本郷は怖くて後ろを振り向くことができなかったが、声色からして間違いなく怒っていると感じた。


「どちらかと言えば、アイネみたいな大人しい方が好みだよ」

『殺気を放たれたり、首を絞められるような人は嫌だし。そりゃ2人は胸デカいけど、デカけりゃいいってもんでもないし、命がいくつあっても足りない気がするんだよな……』


「そ、そうですか! 私みたいなのが好みですか……!」

『これって告白された……でいいのかな!? でも、直接好きって言ってくれたわけじゃないし……。どうして大事な時にちゃんと言ってくれないのかしら』


 本郷は説得という名の愛情表現をしてしまった結果、頭を銃で撃たれずに済んだ。


 ◇  ◇  ◇


 その日の夜はバンデン砦を越えた先、もう少し進んだらニューヤード平原に辿りつくだろうという山中での野宿となった。


 自分たちが向かう方向、ニューヤード平原がある方向を見る。真っ暗な世界が広がる中、一か所だけとても明るい場所が存在していた。


「あれがラカスラトのニューヤード基地か……。ここからでもはっきり見えるってことはかなりデカいな」

「そうですね。コブスさんにも聞きましたが、ここを越えれば一気にラカスラトの王都手前まで押し返せるだろうって」


 ガムルスの勢力図は大きく変わってきていた。単発式から5連装への銃の切り替え、手榴弾の普及。そして攻撃を繰り返すだけの戦いから、相手の戦力や戦意をどうやって削ぐか。本郷がレッグスに伝えていたことが少しずつ効果を出し始める。


 バンデン砦の後も小さな砦がいくつもあったが、何カ月もかかってラカスラトが進軍したことに対して、昼夜問わずの強襲と、敵に用意する暇を与えない攻撃を繰り返し、一週間と少しでそのすべてを取り返していた。


「タイチさんは寝ないんですか?」

「もう少しだけ観察してから寝ることにするよ」

「分かりました。じゃあ、先に失礼しますね」


 本郷を残し、アイネは先にテントへと戻っていった。そして、久しく反応がなかった携帯が息を吹き返したかのように振動を始める。


「うぉ! びっくりした……」


 周りを確認して、見つからないように林の中に入り込む。画面には【神】と書いてある。ベルフェゴールからの連絡のようだ。


「もしもし、本郷ですけど」

「まだ生きてるみたいで良かったわ。まぁ死んだらすぐにわかるんだけどね」


 ベルフェゴールの面倒くさそうな態度は相変わらずだった。


「それで、なんで突然連絡なんかしてきたんですか?」

「そうそう、それなんだけどね。1人減ったって連絡をしようと思ったのよ」

「減った? 何がです?」

「何言ってるのよ。 召喚者の1人が『減った』て言ったの。殺されて死んだみたいよ」


 召喚者が1人死んだ? 言っていることは分かるが、理解が追いつかない。


「だって4人倒さないとダメだったんじゃないんですか!?」

「他の神達だって戦ってるんだから別にアンタが全員倒す必要もないでしょ?」

「そういうもんなんですか……。全員倒さないといけないんだってずっと思ってましたよ」

「そういうもんよ。説明してなかった?」

「されてませんよ! 中途半端な説明でここに送られたんですよ!」


 軽い説明は確かにあった。しかし、強制力やらアイテムボックスの件については不明瞭な部分もかなりある。


「それと、この間なんか勝ったらしいじゃない? おめでとー。報酬はちゃんと入れておいたから」

「またガチャなんですよね? せめてギャンブル要素がないようにしてもらいたいんですが……」

「私がつまらないから嫌よ。それに今回は私の『特別仕様』だから。じゃ頑張って!」


 ブツリと電話が切られた。相変わらず自由気ままな神様だ。

 それでもライバルが1人減ったというのに嬉しさも、喜びも何も感じない。むしろ先を越された、悔しいというような感情の方が強いかもしれない。


『なんかおかしくなってきてんのかな俺……』


 そんな感情を抱きながらベルフェゴールのくれた報酬を確認する。アイテムボックスには宝くじのようなマークのアイテムがあり『ベルフェ様特別ガチャチケット』と書かれていた。

 特別ということは何かかなりいいものが出るに違いないと期待を込めて使用することを決める。


『ベルフェ様特別ガチャチケット』が『お守り』に変化していた。恐らくこれはゲームである力や防御を上げたり、神様の加護が貰えるものに違いない! さっそく取り出してみる。


 手のひらに収まるサイズで、少し硬い。それに首から下げられるような長い紐が付いている。感触は布のようだった。恐る恐る出てきたものを本郷は見た。


『無病息災』


 昔、近所の神社で祖父母からもらったものと同じような形の一般的なお守りが手のひらに合った。

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