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バンデン砦奪還戦【5】

「タイチ、変な奴だとは思っていたが、そんな趣味があったのか……」

「バカ言うなよ! ラぺリングするから体を縛ってくれって言ってるんだ」

「ラぺリング? なんだそれは?」

「正面から行っても入れないんだろ? だったら窓をぶち破って入ろうって話さ」


コブスもベアーズも、どちらかと言えば筋肉質で体格がいい。窓のサイズから考えても一番身軽で小さい自分が行くべきだろうと考えた。それに、武器は好きなタイミングで取り出すことができ、司令官がいるなら相手の召喚者の情報だって持っているはずだと思った。


自分の身体にロープを縛ってもらい、コブスとベアーズが少しずつ本郷を降ろす作戦だ。本来であればどこかにロープを縛って下りればいいのだろうが、砦を見る限り、引っかかりそうな場所がない。それに、これも見よう見まねの行動であった。実際にラぺリングなどしたことはない。映画でそのシーンを見たのを記憶の中から引っ張り出しているだけである。


「急に離したりしないでくれよ……。落ちたらマジで死ぬ。それと、俺が飛び込んだらすぐにロープを緩めてくれ。引っ張られたままだと外に戻ってくるかもしれないし」


本郷はそういうと、引っ張られたロープをぐいぐいと引っ張ってみる。2人が窓の位置が見える様に移動してロープのを持つと、本郷は砦の外に身を乗り出す。


「思ったより高いし怖いな……。でも、行くしかないか……!」


少しずつ、ロープを緩めてもらいながら下を目指していく。時折、上を見上げるとコブスがこちらを見ているので、大丈夫と頷いて合図を出しながら確実に窓へ近づいていく。窓の横まで降りると、相手に見つからないように窓の中を覗き込んだ。


「相手は……1人。こいつが司令官か?」


見るからに他の兵士とは違って少し高級そうな服装をしている。扉の方向に向かって銃を構えているので、突破されたらすかさず撃つつもりなのだろう。

他の兵士たちは扉の外でこちらの獣人族の仲間たちと応戦しているようであった。。内側からパンッ、パンッと銃の発砲音が聞こえる。


もう一度、上を見上げてコブス達に親指を立てて合図を送る。本郷はトントンと2回勢いをつけてから、一気に窓ガラスに向かって飛び込んでいった。


『ガシャーン!』


扉の破片が顔に当たらないように顔を守りながら窓を突き破る。そして着地と同時に銃を取り出すと、間髪入れずに相手の司令官の頭に銃を突きつけた。


「動くな。動いたら撃つ……! ゆっくりと銃を捨てろ」

「分かった……! 分かったから撃つな! 言う通りにする……」


敵の司令官はそういうと、ゆっくりと銃を降ろし、床に捨てた。


「答えろ。お前たちの力を強くした奴は誰だ」

「強くした……? 何のことだろうな……?」


もう一度、相手の司令官にもしっかりと分かる様に銃を強く突きつける。間違いなく何かを知っている。本郷はそう感じていた。


「撃つな……! お前は私たちに力を授けてくださった賢者様の事を言っているのか……?」

「賢者様? 名前は、名前はなんだ……!」

「ダルシオ……。ダルシオ・コンスコンだ。もういいだろう! 離してくれ……!」


ついに掴んだ相手の召喚者の情報である。ダルシオ・コンスコン。賢者と呼ばれることと、力を授けたということは恐らく相手を強化するか、その術を掛けることができるなどの力を持っているのだろう。


「そいつは何処にいる! お前なら知っているだろう!」

「知らん! 本当に知らんのだ! 恐らくは王都、エスタル城にいるはずだ……」


エスタル城。これで相手の居場所も掴むことができた。殺さずに尋問することができたのは幸運だろう。後は相手の容姿が分かればされに申し分ない。


『ズドン!』


しかし、突然扉の向こうから爆発音が聞こえ、外側から爆風が室内に吹き込んでくる。突然のことに本郷は一瞬隙を作ってしまう。相手から情報を聞き出そうとするあまり、外の戦闘が激化し、味方の手榴弾による強行に気が付かなかった。


「バカめ! 油断したな……!」


先に動いたのは相手の司令官だった。こちらの隙をついて飛び退くと、床に捨ててあった。銃を掴みこちらに狙いを定めると引き金を引いた。


「クソッ!」

『パンッ』


本郷はすかさず横へ飛んだ。そして、本郷がいた場所を銃弾は通り過ぎ、壁に当たった。


『バンッ』


本郷も飛び退いたのちに、撃ち返すが手榴弾の爆発で起きた煙に遮られ狙いが定まらないままの発砲だった。倒れた音がしないということこちらの銃弾も外れていたと考えた。

ガシャンと何かが床に落ちる音がした。恐らく、司令官が銃を投げ捨てたのだろう。そして本郷は思った。ラカスラトの司令官が、『銃しか使えないわけがない』と。必ず次は魔法で攻撃を仕掛けてくる。


発砲と同時にすかさずレバーを動かし、次の弾薬を装填する。銃身を構えたまま辺りを確認する。数秒後、敵の司令官がこちらに手を突き出したまま煙の中から飛び出してきたのを見た本郷は銃を少しだけ動かして狙いを定めていた。


「銃は次の装填まで時間がかかる! 魔法が使える私の勝ちだ! 恨むな!」

「そうだな。アンタの同じで単発式だったら『負けていた』よ」


司令官がこちらの銃に向かってきている。相手の手が魔法を放つよりも、本郷が引き金を引く方が少しだけ早かった。


『バンッ』


放たれた銃弾が、一直線にこちらに向かってきていた司令官の頭を撃ち抜いた。その場にドサッと倒れ込む司令官を銃を構えたまま本郷は冷静に見つめていた。


「タイチ! 大丈夫か!」


扉の奥からコブスが飛び込んでくる。上にいたコブスがここにいるということは無事にバリケードを突破したのだろう。本郷はすぐに立ち上がり、扉を出ようとした。


「大丈夫だ。すぐに城門の制圧に行こう!」

「そっちも大丈夫だ。もう片付いている」


コブスに腕を掴まれ、動こうとしていた体が止められる。


「片付いた? なんでだ?」

「ガムルスの正規軍さ。奴らが途中から戦線に加わったんだそうだ。もう、戦いは終わったよ」


ガムルス軍の死傷者数十名に対し、ラカスラト軍は死傷者が300名を超え、逃亡者100名以上という大勝でバンデン砦奪還戦の幕が下りたのだった。

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