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トルガ開発と手榴弾

 途中での野宿を越えてトルガ村へと到着したのであった。


「あ! タイチさんに皆さん。待ってたッスよー」


 ミケットが村の入り口で両手をぶんぶんと振っていた。その横にはミランダの姿もあった。


「ミランダさん! ミケット! お待たせ。ちょっと予定より人数が300人程増えちゃって……」


「まぁ、それならちょうど良かったかもしれませんね」


 トルガ村に到着して、本郷はそれぞれの人員への指示をコブス達に任せると、ミランダとミケットから村の現状を聞いた。


 家畜を村に送る際に一緒に付いてもらった建築関係の職人たち。予算もそんなにないので、放牧地に柵を作ってもらうことと、簡易的な家を建ててもらうだけ。

 と、いう契約だったのだが、全員がアウグスタに戻らないと言い出し居座ってしまったということだった。


 職人たちの言い分としては、アウグスタにいても戦争のせいで仕事が減ってしまったということ、それに首都に居ればいつ徴兵されるか分からないが、【軍関係の仕事をしている】という大義名分があれば徴兵される心配もないので賃金が安くてもいいからこのままここで仕事をくれ、という話らしい。


 それと職人たちが口々にしたのは、

『ミランダさんがここにはいるし……』

 と、いう言葉だった。どちらかというと一番最後のセリフが残りたい最大の理由だろうが、男たちを意図せずに手玉に取っていくとはノエルとは違う意味で恐ろしい。


「建築や煉瓦の作成、鍛冶なんかも出来る職人もいるのか……。うーん、素人集団に任せるよりはいいものが出来るだろうし、職人の下で働かせれば技術習得にも繋がるか」


 賃金をしっかり払う代わりに、獣人も分け隔てなく指導し技術を教えることを条件に了承した。しかし、職人たちは1つだけ条件を付けくわえてきた。

『ミランダのいる食堂兼酒屋を提供すること』

 大勢の人が出入りする食事処はいずれ必要とは思っていたので、こちらも更に条件を付けて了承した。

『人妻なので手を出さないこと! ※旦那に殺されても文句を言うな』

 こうして、安上がりで職人の腕と技術の指導役を手に入れることが出来た。


 次の課題は作物や畜産関係の指導であったが、トルガ村はもともと作物や畜産を主な産業としていたので、村のお年寄りたちがその技術を教え込む、ということになった。


 戦争のために利用することになるので住民の反対も起きるだろうと思っていたが、事前にアイネが出していた手紙を見て、なんとかこの国を救いたいという本心に心を打たれたそうだ。

『お父様に似て、良い娘になられた……』

『アイネは私たち全員の子だ。そのためなら老骨に鞭打ってでも働こう』

 なんという可愛がりだろうか。若い人間は殆ど兵士として徴兵されたか首都で働かされるために連れていかれてしまっていたので、アイネが皆の孫として扱われてきたのだろう。


 時間はかかるだろうが、田畑を増やして、家畜の数も増やしていけば村の中での安定した供給と、余剰分は首都への出荷も出来るので、食料面と金銭面もカバーできるだろう。


 そして、子供たちの教育に関して、50人程の子供たちは軍が立て直した町長だった家の広間を一時的な学校として扱った。ちゃんとした学校が出来るまでの繋ぎだ。


「あーもう、ケンカしないの! それに触っちゃダメー!」


 リリアは自由勝手に動く子供たちに悪戦苦闘をしていた。『鋼鉄』と呼ばれ兵士たちに恐れられていたとは思えない姿であったが、嫌とは一切言わなかったので満更ではないらしい。


 2階の町長の執務室に関してはアイネが使用しないということでノエルが個人的に占領していた。

 いつの間にか私物やらベッドやらを持ち込んでいるらしく、夜な夜な若い女が屋敷に入っていくという目撃情報もあったが、本郷は知らないほうが幸せなこともあると言い聞かせて回った。


 そして、コブスとジェリドが選んだ兵士たち100人だが、訓練前に2人にはレッグスに依頼した銃剣について説明をしておいた。


 これまでの様に、銃で撃った後に腰の剣を抜いて一斉に突撃といった特攻ありきの戦い方を廃止し、現代的なファイア・アンド・ムーブメント、要は射撃と運動を軸にした戦い方の指導をするように依頼した。例えば、攻撃班が銃を撃ち相手をけん制している間に移動班が防御の薄い部分に移動したり包囲して一気に叩く戦い方である。


 これに関してはオンラインゲームでも嫌というほど敵にやられた、いわゆる【裏取り】先方もその1つ。加えて銃剣の特徴的な戦い方だ。基本動作が突くなので教えやすい。それに、折れたとしても着脱式なので交換も容易だ。


「楽になった分、教育的な指導もやれるな」


 武器を持ってコブス達の後ろをついていった兵士達が、夜に戻ってきた頃には荷馬車に放り込まれピクリとも動かずに戻ってきたのは予想通りだった。

 死んだように眠る兵士を見て、本郷は疑いの目を2人に向けた。


「手加減なしで殺しにいったの……?」


「タイチちゃんの時よりも、かなり優しく教えたのよ! ちゃんと手取り足取り指導したもの!」


 ジェリドがプリプリと怒りながら不満げな顔をしていた。

 このようなことが数日間続いていたが、1カ月も経つと、兵士たちが銃に恋人の名前を付けて磨くという異様な光景を村で見かけるようになった。


 その間、本郷が何をしていたかというと、専ら運搬と雑用である。

 ベルフェゴールに与えられた刀の切れ味が良く、職人たちが斧で時間をかけて切るよりもそちらの方が早かったため、切り倒した木をアイテムボックスにしまい、職人のところに行って取り出す。そして加工された木材をまたアイテムボックスにしまい、建築中の現場に運ぶ。そしてまた木を切る。この繰り返しである。


 他にも運搬の人手が足りない時にまとめて運ぶ手伝いや料理の手伝いもなんでも行っていた。

 自らが言い出した計画だったため、やれることは全部やろうと思っての行動である。


 時折、レッグスが持ってきた試作武器や防具のテスト運用も行い、その結果を伝えていく。

 この時には5発式の銃に着脱式の銃剣が人数分以上に揃うほどに開発が進んでいた。


「えー、これが手榴弾です。こんな小さな塊ですが殺傷能力は非常に高いです」


 本郷は訓練場にいる兵士たちの前で実際にデモンストレーションを行った。


「まずはレバーを握ったまま、ピンを抜く。このままではまだ爆発はしません。レバーを放すと数秒間経ってから爆発する仕組みです」


 実際にピンを抜いて、レバーを握り続ける。そして爆発しないことを証明し、遠くに設置した人型の的の足元に落ちる様に投げた。数秒後にドカン! と大きい音がし、その場にいた全員が耳を抑えて驚いていた。

 銃の何倍も大きい音と衝撃。この世界で初めての手榴弾だろうからこの驚きも当たり前だ。


 全員で手榴弾の落ちた場所へ移動する。人型の的は跡形もなく吹き飛んでおり、地面には(えぐ)られた様に穴が開いていた。


「自分の足元に落としたら自分どころか味方も吹き飛ぶので気を付ける様に!」


 本郷はそういうと、もう1つの手榴弾をコブスに渡した。


「おわっ! そんな危ないもの気軽に渡すんじゃない!」


「やだ! 爆発しちゃう!」


 コブスとその横にいたジェリドが恐ろしいもの触ったかのようにあたふたしていた。


「説明した通りにしないと簡単には爆発しないから大丈夫だよ」


 この日から訓練のメニューに同じぐらいの大きさの石を目標目がけて投げる投擲が追加されたのだった。コブスとジェリドも兵士たちに交じって訓練していたらしい。


 こうして目まぐるしい生活が過ぎていき、3ヵ月が経過したころにノエルに呼び出される。


「少佐、何か御用ですか? 若い女を連れてこいって言うのはもう勘弁してくださいよ」


「悪い知らせだ、ホンゴー。5日後に戦場に出ろと本部からの通達だ。」


 ノエルの自室に呼び出され、告げられた言葉は予想よりも早い出撃の命令だった。

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