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俺に力を貸してくれ!

城門の前に募集の話を聞いて集まったであろう獣人たちが塊のようになっていた。


軽く400人は超えていただろう。


その中には男だけでなく、女性や子供、中には赤ん坊を抱えている女性も混じっていた。


「タイチ、男たちはいいとして、女子供はどうする? 戦力的には置いていくべきだと私は思うが……」


コブスの意見に反して、アイネは全員を連れていこうと言い出す。


「ここにいるということはかなり状況が苦しいはずです。子供や赤ん坊を見捨てるわけにはいきません。タイチさん、全員連れていくのはダメでしょうか?」


コブスの気持ちも分かるが、アイネの言う通り職を失いここに来た者がほとんどだろう。特に子供や赤ん坊などは体力的にも放っておけば飢え死にする可能性もある。


「とりあえず、全員に再度条件を伝えてからどうか決めてもらおう。選ぶのは自由だからな」


ここは自分よりも立場がもっと上の人に言ってもらった方がいいだろうと考え、後ろでタバコをプカプカとふかしていたノエルに説明をしてもらうよう依頼をする。


「あのー、少佐? 全員に向けて再度条件の提示をお願いしたいのですが……」


「は? お前がやればいいだろう? お前の計画なんだから責任を取ってやれ!」


「はぁ、分かりました……」


責任を取れと言われるとやるしかないと感じてしまうのはサラリーマンだったからだろうか。

ノエルに軽くいなされてしまった。


「助言をしてやる。有象無象の新兵たちを教育する場合などでは、一番最初が肝心だ。畏怖と忠誠をいかに叩き込むかが重要だ。最初がダメなら後の戦いにすら響く」


「それじゃただの脅しになっちゃいますって……」


ノエルの助言も言っていることは分かるが、そのまま実行するとただの脅しであった。


「タイチさん、大丈夫ですか?」


「ノエル少佐に頼んだんだけど、お前がやれってさ……」


「私やジェリド、お嬢さんがやるって方法もあるが、ここは異国人扱いのタイチの方が案外向くかもしれんな。ガツンと決めてやれ」


心の中で

『そうは言われましても……』

と、本郷は悩んだ。


こういう時は何というのが最適だろうか。重圧が本郷の背中に覆いかぶさる。

何とか昔見たアニメや映画で、偉い人物が演説するシーンを思い出していた。


地球に大きな隕石みたいな者を落とそうとする人物や、某軍隊の軍曹などが頭に浮かぶ。そうこうしているうちにとうとう全員の前に立ってしまっていた。

 

スキルの効果で多少の緊張は軽減されているが、うまく言葉が出るだろうか。

導き出した結論は、カリスマ性がないのなら、知識として得るしかないということだった。


『【カリスマ】を習得しますか ※確率80%』


どうやら、絶望的に適性がないようであった。

魅力が低いのもこのようなところで影響されるようである。

カリスマを習得することを諦め、もう少し別のスキルを、それも複数組み合わせて使えそうなものを思い浮かべる。


『【演説】を習得しますか ※確率10%』

『【威圧】を習得しますか ※確率5%』

『【殺気】を習得しますか ※確率4%』


 威圧と殺気は戦闘で培ってきた経験が多少は考慮されるだろうと思い選んでみたが、演説も絶妙な死のリスクであった。

 しかし、ここで計画が終われば元も子もない。


『【演説】を習得しました』

『【威圧】を習得しました』

『【殺気】を習得しました』


今回もハズレを引かずに済んだようであった。

 しかし、知識以外のステータスが毛が生えた程度の軍人がどれぐらいの力にはなるか分からない。一か八か賭けてみるしかなかった。


本郷は大きく息を吸うと一言だけ言葉を発した。


「自由が欲しいか!」


この言葉にざわついていた全員が話すことを止め、こちらを一斉に見る。


「今回の計画に賛同し、成果を上げた者には自由が保障される! それにはラカスラトと戦争に勝って自らの力を示すことだ必要だ!』


 自由という言葉に集まった獣人たちから歓喜の声が上がる。


その後に続いた戦場で死ぬという言葉に反応しすぐに静寂を取り戻した。


「もちろん、戦うということは命を落とすかもしれない。それでもこのままガムルスが負ければ主人が入れ替わるだけで一生奴隷のままだ、それでいいのか! 嫌なら俺についてこい! 勉学も医療も経営だって、俺が知っている知識を全部くれてやる! その代り俺に力を貸してくれ!」


「ホンゴーのやつ、やはり国を根底から覆すつもりか……」


 2本目のタバコに火を点けながらノエルは本郷の演説をニヤニヤと笑みを浮かべ聞いていた。

本郷の演説が終わり、しんとした静寂の後、大きな喝采が沸き起こる。


『俺は戦うぞ! 勝って自由になるんだ!』


『妻を、子供を守れるならなんだってやってやる!』


『子供と一緒に居られるのよね? それに食事もとらせてあげることが出来るならなんでもやるわ!』


本郷は倒れそうなほどの疲労感に襲われていた。集まった人々の言葉を聞く限り、なんとか演説は成功とよんで良さそうだった。


「俺に力を貸してくれ……か、若いな」


「笑うなよコブス。俺も途中から自分が何を言っているのか分からなくなっていたよ。まぁ熱意は伝わったみたいだからいいかな……」


「タイチちゃんは上手くやったと思うわよ?」


「ジェリーもありがとう。さっそくなんだけど、みんなにお願いがある。コブスとジェリーは戦えそうな人をピックアップしてほしい。俺には見わけなんてつかないだろうから。アイネは子供と赤ん坊を連れた人、それとケガや病人がいれば優先的に馬車に乗せてほしい」


 本郷は近くにあった椅子に座ると、それぞれに人員の振り分けをお願いした。

ぐったりとしていると、ノエルとリリアが本郷に近づいてくる。ノエルは笑いが抑えられないといった感じだが、リリアに至っては今すぐ首を跳ね飛ばしかねない威圧感を出している。


「少佐の前であのような演説をするなんて!」


「そう怒るなよリリア。私は案外面白かったから満足だ。いいだろう、ますます気に入った……!」


威圧感とは何か違う悪寒を本郷は感じたが、それが何なのか分からなかった。

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