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第5話 ボス討伐に付き合ってやる!作戦名は『数撃ちゃ当たる』だ!

1話2000〜5000文字の間くらいかな?



とりあえず始まりの街を隈なく回って数時間が経った頃、オレはサタン様にたまに視線を向けられその度に過呼吸になりながらも妹ーーミュートと共に街を回っていた訳だが、そこで妙に人が集まっている場所を見つけた。


「なぁ、いも……ミュートよ。 あの人集りはなんだ?」


「えっ? ひとだかり? イベントはまだだし、レイドボスとかの話は聞かないし、レアドロップの出る情報でも来たのかな?」


「ふーん……」


つまり、あの人集りはレアドロ狩場を独占するために人手を集めた、もしくは周りに情報を拡散させて人を呼び込んでいるという事? ちょっとMMOの常識(こういうの)はわからないからアレが何を意味するのかわからないな。 少なくとも後者の可能性は少ない気もする。 だってレアドロは独占したくなるものだろうし。

そんな感じで人集りを見ていると、ミュートがいきなり「えっ!?」と、驚いたように声を発して人集りの中心を指差す。

その視線を辿ると、そこにはヒビキがいた。


「あーっ! いたー!! おーい、ヒビキくーん!」


「ん? ああ、ミュートか……ってリク!? お前、復帰したのか!?」


ヒビキはオレを見るとまるで幽霊でも見たかのように驚いた。 ちょっとその反応に納得できるだけに複雑だ。 オレあの時、凄いパニックになってたもんな……。

とりあえず、返答はしっかりしなければ。


「復帰じゃない。 一言お前に謝ろうと思ってな」


「謝る? 何が?」


「そんな事より、これは何の集まりなんだ?」


この後に及んで聞き返すバカは知らん。 オレは謝るという目的をさっぱり振り払って別の話題にすり替える。 ミュートの視線が痛いし、オレとしてもここで逃げるのはカッコ悪いと思うが、察してくれないのは寂しいのだ。 親友なのに……。

辺りを見渡すと、人集りはざっと30人くらいのプレイヤーだ。 今からレイドボスを狩りに行くとでも言いたげな布陣だ。 これ、ヒビキが集めたのだろうか?


「いや実はさ、オレのギルドのプレイヤーがβには無かった特殊クエストを見つけたんだけどよ。 それがめちゃくちゃ難しいのさ。 幸いなのか参加人数に制限は無いから経験値配分が少なくなろうが、数の暴力で攻めるために掲示板で有志を募ってるって訳。 内容は簡単なボス討伐なんだけどな?」


「え〜っ! そういうのは真っ先に私に相談してよー!!」


「いや、悪かったって」


ヒビキとミュートがきゃいきゃいと楽しそうに話しているのを遠目で見つめる。 要はめっちゃ強いボスがいたから袋叩きにしよう!ということか。

地味に妹とヒビキがゲーム内で仲いいのが疑問だが、MMOってこういうものなのだろうか。 いや、絶対違うな。 周りから歯ぎしりの音がする。 独り身プレイヤーには女子と仲がいいというだけで爆弾だからな。


………その女子にオレがカウントされてなければいいけど。


「あー……なんだ。 お前、辞めるんだろ?」


「まぁ、な」


そんな他愛もない事を思っているとヒビキがオレに向かって話しかけてきた。 話の内容はなんとなくわかる。 少し気まずくなりながらも、さっき振り払った目的を果たす為に返答を返す。


「それは別に止めねぇけどよ、ちょっと寂し……何でもない! それより、実はお前に渡したいものがあったんだ」


「……渡したいもの?」


しかし、目的の謝る事は叶わず、オレが言葉を発する前にヒビキは言葉を紡いだ。 ヒビキはほんのちょっと本音が出そうになりながらもその「渡したいもの」を【フレンド】画面の機能の一部であるトレードシステムに乗せてオレに送る。 このトレードシステム、実は片方がアイテムを選択しなくてもトレードが成立する。 結果として物々交換の他にも純粋なプレゼントとしても使える機能だ。

だが、そのトレード画面に出てきたアイテムが聞いたことのなかったものだったのでオレは思わず首を捻る。


「……『映し鏡』?」


「おう! これがあればステータスの振り分けを一度だけやり直せる消費アイテム。 これもβ特典なんだけどな。 まぁ、お前辞めるんだから要らないかもだけど、オレの気持ちとして受け取ってくれ」


「まぁ、それなら……」


「……へへ、ありがとな!」


決定ボタンを押し、アイテムを受け取る。 ストレージを見て、たしかに受け取っている事を確認して少し………落ち込む。


親友にVRギアもソフトも用意させて、勝手にやめて期待に応えられず、最後にはコイツがβで頑張った証である特典を奪って帰っていく。


____そう考えるとオレって最悪だな。……と、そう考えてしまったのだ。


なんか不思議な程落ち込んでしまう。 罪悪感も凄い。 こんなオレにありがとうと言えるヒビキは凄い。 まぁ、本人は気持ちを受け取ってくれてありがとうっていう何気ない言葉なんだろうけど、ここまでやってまだ感謝できるコイツには頭が上がらない。


「…………」


ミュートがじっとこちらを見ているのには気づいている。 多分「お兄、ここまでされてまだ逃げる気?」 とか思ってるんだろう。 たしかにこのままじゃオレは最低だ。 少しでもヒビキにこのゲームで報いなければと思う。 でもなぁ……。


「………(ちらっ)」


「しゅるる……」


「ひゅっ……!」


オレにとっての魔王様をチラ見すると目が合った。 それだけで息が詰まる。

ヤバイ。横目で見ただけで結構ダメージくるわ。トラウマって根強いね。 オレはすぐにミュートの胸に抱かれてるサタン様から目を逸らした。

流石に魔王様に脅かされるからって事でヒビキも見逃してくれない……? いや、ヒビキならどんな下らない理由でも見逃してくれるだろう。 オレは未だにそれに甘えているのだ。


「………お兄」


「……しゅる」


ミュートとサタン様の呆れたような声が耳に響く。

うぬぬぬ……! わかったよ。 どうせここまでされて退くなんて選択肢無かったんだ。 妹とサタン様にあんな目で見られたら逃げ道なんてない。


オレは意を決してヒビキに向き直る。


申し訳なさへの謝罪と、このゲームで作れる筈だった思い出の代わりに、何かヒビキに報いる為に。


「じゃあ、リク。 またリアルでな」


「ちょっと待て!」


「……ん?」


意を決した、とは言えなんとなく切り出しづらく、もごもごしてしまう。 それでもヒビキは何も言わずに立ち止まり、オレが言葉を出すのを待ってくれていた。そもそもこれはオレがヒビキにここまで施されていて何も返す事ができない事による意地のようなものだ。 親友は対等じゃなければいけない。 なら、オレも何かヒビキに返すべきなのだ。


「その、だな……」


「おう」


「そのボス討伐……人手が必要なんだろ?」


「まあな」


「数撃ちゃ当たるって言うし……初心者でもいいなら………」


「……?」


もじもじしながら言葉を紡ぐが、あまり言葉が続かない。 本当ならヒビキが察してくれるのが一番だったのだが、どうやら察してくれないようだ。 まぁ、コイツは勝手に一緒にやれる!と一人で盛り上がって友達のトラウマを刺激してしまった、とか考えてるだけで、オレが悪いとか一切思ってなさそうだし………オレが罪悪感を抱いているとは思っていないのだろう。

………なんかそう思うと苛立ってきた。 オレ達は親友なのに、どっちも自分が悪いと思い込んで思考を閉ざしている。


……ああ、もう! ハラ括れ、オレ! もうここまで行ったらヤケクソだ!


「つまりだな!」


「お、おう……?」


「ーーーどうせ最後なんだから、そのボス戦に付き合ってやるって事だ!」


言った! 言ってやったぞ! なんかドキドキする。 妹に発破をかけられたとは言え、ちゃんと自分の意思で言えた! ミュートもこちらにサムズアップして笑顔である。 サタン様? 視界に映してないから知りません。


「……………えっ、マジで?」


「二度は言わない」


ヒビキの困惑の声に応える。 ヒビキはしばらくポカンと間抜け面を晒していたが、次第に理解が追いついたのか、


「うおおおおおおおおお!!!」


「……ぅえ!?」


オレとゲームができると知って感極まった様に大きな声を上げてオレを抱きしめてくる。 ちょっ、男に抱きつかれても! と思いながら手で押さえるも、身長差から難なく抱きつかれてしまう。


「マジか……マジか…………うおおお!ありがとう!心の友よぉお!!」


「ちょっ、ひっつくな!」


ひっついてきたヒビキを手で押さえながら、ヒビキの腕の中にすっぽり収まる自分の身長に嘆きながら、何か返すことができた事に謝罪の代わりにはなったかな?と思いながら。


___まぁ、こんなに喜んでくれるならいいかと思ってしまうのも事実なのだ。 オレはひっついてくるヒビキに何となく自分が優しい目を向けている気がしたのであった。 その後、ミュートにジト目で引き離されるまで、ヒビキはオレを抱きしめてクルクル回っていた。









ちなみに絵面的には高校生男子が幼女に抱きついているという事案であったのは間違いない。 この後、ヒビキは周りのプレイヤーに袋叩きにされる事になるのは完全に余談である。

なろう小説でよくあるVRゲームって大体夢みたいに自由度高いよね。なのに、本当に廃人と呼べる程のキチガイが少ない。あれほどの完成度ならやり込む人居てもおかしくないような………いてもリアルチート系主人公が多いですし、純粋にやり込みで勝負するキャラって見かけないなぁ……と、コレ前から疑問だったんです。例えば、サモナーの場合育成廃人みたいなステータス厳選や進化ツリー開拓描写も無いしソシャゲ廃人みたいなリセマラや周回描写も無い……せいぜいリアルラックで強力な獣魔を手に入れた存在が掲示板で囁かれるだけとか……。

なので、この作品ではそんな廃人の凄さを語りたい。でも作者は廃人って呼ばれる程ゲームやり込まないから廃人とはなんなのかわからない。結果としてそんな描写は書けない。そもそもMMO自体やった事ないからMMO廃人とやらがどんなのかも知らない。…………これは書けませんね。と、言うことでこの作品では廃人やガチ勢キャラは、「ステータスドーピングやスキル構成の巧さで最強ダメージ叩き出す攻撃力最強プレイヤー」とか、「低確率出現のレアモンスターを何千匹も捕まえてステータス厳選する根気最強テイマー」や、「五日以上継続ログインを繰り返してるプレイ時間最強プレイヤー」などのわかりやすいタイプだけ登場させる事に決まりました。


………これ他の作品に出てくるガチ勢と何が違うのでしょうか?

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