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第4話 魔王サタン……アダ名はさたくん。

今回、実際に実在の書に記載されてる悪魔の話がありますが、wikiで簡単に調べた内容と、他人から聞いた内容がごちゃ混ぜになってます。間違っている箇所があったら遠慮なく言ってください。



____ウロボロス。


ギリシア語では尾を飲み込む蛇の意味を持つ「ウロヴォロス・オフィス」とも呼ばれる蛇、または龍の事だ。 蛇は脱皮して大きく成長する様や、長期の飢餓状態にも耐える強い生命力などから「死と再生」「不老不死」などの象徴ともされる。 その蛇が尾を噛む事から始まりも終わりも無い『完全なるもの』としての意味があるとか、なんとか。


あまり知られてない事だが、ウロボロスはあの有名な『サタン』と起源を同じくする。


………いや、起源とかそんなのちょっと聞いただけなのであまり知らないが、とりあえず関係性くらいはあるのだろう。 つまり魔王サタンとウロボロスは関係があるという事だ。 似通った所も多いしな。



サタンとは、「敵対者」とか「妨げる者」とかの意味を持つ悪魔や悪霊の王の事だ。その姿は「巨大な龍」だったり、「年を経た蛇」だったりするらしい。

元々はルシファーという神に最も近い天使だったが、自らが神になれるという傲慢から神に敵対し、弟のミカエル率いる天使達と長い激闘を繰り広げた末に負け、天界の三分の一の天使と共に堕天した堕天使である。

つまりサタンとは、『悪魔の王』であると同時に『神に最も近づいた反逆者』なのだ。堕天後、堕天使達を率いて当時の悪魔の王であるエビル………エビル…………なんちゃらを倒し、魔王の座に就いた。その時から悪魔の中にサタンの元、統率が生まれ魔界に天界と戦えるだけの体制が整ったのだろうと思われ。


つまり、「神に最も近い存在というカリスマ」+「魔王の座」+「ルシファーについていって堕天した数々の有力な天使達」=魔界大幅強化、という具合に。

実際、みんながよく見る有力な悪魔の殆どが堕天使だ。 サタンの右腕とも言われるベルゼブブなど、元々は豊穣の神に相当する堕天使である。正直サタンが現れる前の魔界の記述が少ないので、サタンが出るまでは魔界とは天界にとってそこまで重要な場所では無かったのだろうと個人的に思う。


ある意味、サタンという存在がいたからこそ魔界は天界に対抗できるのだ。 そして天界は強力な存在が軒並み堕天している事から戦力大幅ダウン。 正直神様が潔癖症すぎるせいで堕天使はかなり多い。 そういう存在を全て纏めるカリスマは魔王と呼ぶに相応しいと言えるだろう。


ただ、この魔王サタンという存在は、有名になり過ぎたせいかかなり多くの著者の違う書に登場しているのだ。 その結果、起源を同じくする別の存在が複数現れた。 それはルシファーを筆頭にサマエル、サタナエル等、中にはベルゼブブとも同一視されている書もあるというかなりのカオスぶり。

ウロボロスもその同一視される存在の一つだと思われる。


「お(にい)〜、そろそろ一緒にエデン行こうよ〜」


「オレは蛇を愛でる趣味は無い」


つまり何が言いたいかと言うと、魔王様を愛でる趣味などオレには無いという一言に尽きる。

ウロボロス(イコール)サタンとは限らないが、連想される存在であるのは確かなのだ。 これは蛇に強いトラウマを持つオレが蛇を恐れる理由を正当化するために集めた情報であり、言い訳「魔王とか嫌って当然だよね?」という言を成立させるモノである。


だから妹よ、オレはあのゲームにはいかない。 という訳でかなりの屁理屈を捏ねてオレは妹の誘いを断る。

今ゲームがいい所なのだ。 ヒロインを助けるために単身ラスボスに立ち向かう主人公カッケー。 やはりこのゲームは名作だな。


「でも、ヒビキくん、かなり落ち込んでたよー?あんなに一緒にやれる!って喜んでたのに……」


「……う」


妹の言葉を聞いて思わずコントローラーを握る手が止まる。 ……それを言われたら弱いな。 たしかにあの後、蛇を見て気絶してからは、起きてもパニックになってまともな会話はできなかったし、チュートリアルもせずに「こんな場所に居られるか!」とばかりに早々にログアウトしたから、謝る事も出来ていない。

今思えば、オレのためにVRギアもソフトも揃えてくれた親友に対してかなり酷い事をしたという自覚がある。


「どうせ辞めるなら、一言断ってからでもいいんじゃないの〜?」


「……………しょうがないな、一言謝るだけだからな」


頭を掻きながらコントローラーを置いて立ち上がり、妹に向き直る。 謝るだけだ。 謝ったら直ぐにログアウトする。 それだけはやった方がいいだろう。 オレもヒビキが嫌いという訳じゃないんだ。 それくらいの義理は果たすべきだろう。


「やった!だから、お兄、大好き」


「調子のいい……まぁいいや。準備するから」


「ハイハーイ、私も向こうで合流するよー」


「勝手にしとけ」


そう言うと、妹はスキップしながら自分の部屋に帰って行った。 おそらくエデンでオレを待つのだろう。 オレは手早くゲームを終わらせると、電源を切り、ゲーム機に繋がっているコードとVRギアに繋がっているコードを入れ替える。 そしてここ数日埃を被っていたVRギアを取り出すと頭に装着して、ベッドに寝転がる。 ーー準備は完了だ。


「ログイン。《ルート・エデン》」


オレの声に反応して視界が暗くなっていく。 しかし原因は眠気とかそういうありきたりなヤツではない。 これは、VRシステムを使う際にフルダイブ中体がゲーム内以外で勝手に動かないように体の信号を操作しているらしい。 危険性を説かれる時に詳しく言われたが、正直あんまり覚えてない。 というか今はヒビキだ。 ーー視界が暗闇に染まった時、聞き覚えのある無機質な声が響いた。


《うぇるかむ!エデンへようこそ!》



____因みに、わざわざゲーム内じゃなくてもリアルでヒビキに謝ればいい、という思考には二人とも至らなかった様である。


















「あっ、お兄!こっちこっち〜」


「ああ、妹よ。今行……」



___ボトッ。



「……かひゅっ」


「本当に死にそうだね……」


ログインと共に妹を発見すると、手招きする妹(『ミュート:LV17』と頭上に表示されている)に近づくと、いきなり目の前に『ヤツ(・・)』が降ってきた。

おそらくオレのアバターの頭の上に居たのだろう。そしてオレが妹の元に行くために立ち上がった時に落ちたと見られる。 そんな妙に冴えてる思考の中でも、体が動かなければ意味はない。 トラウマを刺激され、再び硬直したオレに妹は近づき足元に落ちている『ヤツ』を鷲掴むと自然な動作で胸に抱き、その後オレの目の前で意識を確認するかのように手を振った後「ダメだこりゃ……」と呟いた。


そこでオレはやっと意識を取り戻す。


「はっ……お、お前!? ……ログイン出待ちするとか………凶悪すぎる!? この鬼! 悪魔! 妹よ、絶対ソイツを離すなよ! オレが危険だ!! ……いつ殺されるかわかったもんじゃない!?」


「あー、うん。 さたくんは私が抱えとくよ〜……」


意識を取り戻すと出てくるのは怒りと恐怖だ。 オレはログインした途端に奇襲してくる『ヤツ』の脅威を再認識し、若干貧弱なボキャブラリーで罵った後妹に恥も外聞もなく懇願する。 妹はそれを「ホントに蛇苦手だよね〜」と呟きながら遠い目で了承した。 それに安堵したオレは少しだけ周りを見渡す余裕ができる。 よく見ると、周りの人間の殆どがオレ達に意識を向けていた。


「何あれ、可愛い……」

「必死にお姉ちゃんに頼ってる……」

「蛇ニガテなのかな?」

「なんか抱き締めたくなる」

「オレっ娘とか珍しい……」


なんだなんだ? 見世物じゃないぞ。 一体何を言ってるか知らないが、ここに長居するのは良くなさそうだ。 無駄な注目を浴びてる。


「早くヒビキ探そうぜ」


「そだね〜、さたくんも居心地悪そうだし」


「………」


ヒビキを探して謝るために、出発しんこーう! ………と行く前に気になることがある。 というかできた。

それは、さっきから妹が言う、おそらく『ヤツ』の名前と思われる言葉である。 さっきからちょくちょく出てきたが、聞くタイミングを逃したら後悔するとオレの直感が言っている。 そのため、真相を明らかにするためにオレは妹に気になっていた事を聞いた。


「あの、さ……その『さたくん』って……何?」


「へっ? ……さたくんはさたくんだよ。 この子のアダ名」


「なんで、さたくん」


「えっ、だって名前……」


しかし、何度聞き返しても妹は容量の得ない返答ばかり。 名前……名前とか言われても『ヤツ』に名前を付けた記憶はない。 ーー嫌な予感がする。 こういう時の嫌な予感は外れないから理不尽だ。

オレは妹の言う名前とはおそらく『ヤツ』の名前の事だろう、と当たりを付けて、極力『ヤツ』を視界に入れない様に『ヤツ』の頭上を見た。



『サタン:LV1』



……………………。







「なんでよりにもよってこの名前?」


「お兄が屁理屈捏ねてる間にこの子が話の中で多く出た単語を自分の名前と勘違いしたとか?」


「たしかに、パニックになってログアウトする前にオレの蛇嫌いに対してヒビキに熱弁してたような………記憶が………あるような……ないような……」


「お兄の蛇嫌いを説明する時の言い訳は何故か魔王の名前が出てくる謎理論だからね〜……普通に蛇がトラウマなんですって言えばいいのに」



一言言いたい。














____どうして……こうなった。



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