イメージ通りの神などいない!
不定期投稿です
もう1つの作品をメインに投稿していきます
「⋯⋯」
「⋯⋯」
窓から朝日が差し込む静かな部屋でベッドの上で見つめ合う1組の男女
女⋯⋯いや、赤髪の少女は頬を髪の色と同じ緋色に染めチラチラと男をみ、男はピクピクと眉を動かす
「おい、どぉしてここにいる」
「ふふふ
お兄様、それは愚問というもの
愛し合う男女が一緒に寝るのはごく普通のこと⋯⋯」
「妹よ、愛には種類がある
俺からの愛は兄妹愛、裸の妹と一緒に寝る間柄じゃない」
ベッドの周りに散乱しているのは子供用の服に、ショーツに、パンツ⋯⋯
そして腕から伝わってくる人肌の温かさと小さな感触
決定的な証拠⋯⋯
「お兄様、これには深いわけが⋯⋯」
「ほう、言ってみろ」
「昨夜ベッドに入った際、ベッドがとても冷たく私は驚きました」
「いや、暖かい方がおかしいよな」
「それと同時にお兄様がこんな冷たいベッドで寝ては風邪をひいてしまうとお兄様の身を案じ
魔法で窓を開けよば⋯⋯、人肌で温めようと寒い中裸になり潜り込んだのです
お兄様のために私は──」
「なら、そのお兄様のために早く服着て自分の部屋に戻れ」
「⋯⋯わかりました
では、お兄様
私に服を着せ──」
「俺は二度寝するからその間に出とけよ」
「そんなぁぁぁぁ、お兄様ぁぁぁぁ」
布団を剥ぎ取り頭を覆う
喚く義妹の声を聞きながらつい先日終わった平凡を思い出した
〜
ミーンミンミンミーン
小学校に入って初めての夏休み
僕は公園で一人、ブランコに揺られていた
午前中は友達と遊んでいたのだが、親戚の集まりや塾などで、午後は1人で遊ぶこととなってしまったのだ
ブランコに揺られながら、ぼーっとしていると小さな泣き声が聞こえてきた
何故だろう
その時、僕は使命感に似た何かを感じいてもたっても居られず泣き声のする方へと、急いだ
僕はその日かけがえのないものが1つできた⋯⋯
ジリジリジリジリジリジリジリ
ベッドと小さなテーブル、白色のカラーボックスしかない狭くて、散らかった部屋にけたたましい目覚ましの音が鳴り響く
ベッドで寝ていた青年は顔をしかめながら、自分のスマホを手探りで探す
枕元で鳴り響くスマホを捕まえ、うっすらと目を開けて、目覚ましを解除するとスマホの画面を見る
7月26日 水曜日
7時30分
スヌーズ中あと8分38秒
「・・・」
スマホを置き、目をつぶ──
「寝坊したぁ!」
(やばい!)
床に投げてある制服に着替え、テーブルの上のカバンを取って⋯⋯
「やべスマホっ」
枕元に置いたスマホを取って玄関から飛び出し全力疾走
なりふり構わずある場所を目指す
だが──
「⋯⋯くっそぉ、まに、合わなかったかぁ」
青年は、近所のバス停につくと息を切らしながらバス停を掴む
「えーっとつ、ぎは⋯⋯」
バス停の時刻表とにらめっこ
次にバスが来るのは20分後、青年の住むアパートからこのバス停までは近所といっても、立地上時間がかかるため、家に戻って朝食、とは行かないのだ
とは言っても20分も、日陰もベンチもなく、狭い歩道にあるバス停で、待つのも通行人の邪魔である
仕方が無いので道の反対側にある小さな公園に行き、ベンチにもたれ掛かかった
(はぁ、終業式の日まで遅刻かよ)
遅刻の常習犯である青年は肩を落とし、財布から学生証を取り出し、スマホで学校に電話する
ぷる-ぷる-ぷる-ぷる プチン
「もしもし、あの、2年3組の関崎 奏です、寝坊してしまったので少し遅れます、終業式が終わるまでには着くと思いますので⋯⋯、はい、はい、申し訳ありませんでした、以後気おつけます」
普段は遅刻したからと言って電話などしない司だが、さすがに今日は、終業式ということもあって連絡した
はぁ、っとため息をつき、公園の端にあるブランコに目をやる
懐かしき夏の思い──
「え!?」
いきなり紫色の薄い壁⋯⋯いや光に囲まれた
「なっ、なんだこれ」
光が呼応しだんだん強くなり⋯⋯
眩しさのあまり俺は目を閉じた
真っ赤なまぶたの裏の光景が黒に変わると俺は目を開けた
「おいおい、どこだここは⋯⋯」
目の前に広がる光景は先程までいた公園とは打って変わって真っ白な空間がただただ広がっていた
突然のことに頭が回らない、呆然とする
すると、突然女の子の声で
「⋯⋯お兄様、お兄様〜」
と甘えた声が聞こえ、ぎゅっと後ろから誰かに抱きつかれた
ふわっと香る、いい匂い
「だっ誰だ」
「お兄様、まさか私を、ウェンディーをお忘れですか?」
振り返るとそこには赤髪ツインテールの少女が──
「おまっ」
「はい、お兄様の最愛の義妹
ウェンディー・シェルナンデスです!」
万遍の笑みを浮かべ、少女は抱きついてきた
「お前今までどこにいたんだよ!
てか、お前もここに飛ばされたのか?」
「えっとー、その話をするにはですね
先に色々と話さなければなりません⋯⋯」
「色々⋯⋯」
「はい⋯⋯
まず、私はお兄様に謝らなければならないことがあります
それは──」
「それは?」
真剣な面持ちで少女は口を開いた
「私実は神様なんです⋯⋯」
「かみさま?」
「はい」
「ゴッド?」
「はい、ゴッドです
簡単に言うと数多の神々の中の一人ですね」
「お前⋯⋯」
「はい、私はとっても──」
「頭大丈夫か?」
「お兄様、私の頭は正常です」
「病院に行こう⋯⋯
精神と脳外科どっちがいいかな⋯⋯」
「あのお兄様⋯⋯」
『その子が言っていることは本当です』
感情のないまるでロボットが話しているような声が聞こえてきた
「誰?」
「えぇっと、ですね
私の上司です⋯⋯」
「上司!?
神様にもそんなのがあんの!?」
『私は第9500〜第10000の世界を見守り、そこに存在する神々の規律を正すもの
この子はその中の第9892世界の恋愛神ゆえ、私の部下同然なのです』
「はぁ」
『関崎 奏、まだ多少聞きたいこともあるでしょうがまずは私の愚痴を聞いてからにしては貰えないでしょうか⋯⋯』
え?今愚痴っていわなかった?
「ちょ、ちょっとま──」
『私はいくつもの世界を管理、監視しているのですが
時々、そこにいる恋愛神のように神の仕事をサボり下界のものにちょっかいを出すものがいるのです』
「あの、アルテミラ様、もうそれ以上は──」
『神にもルールや禁忌がありまして、そのひとつに下界のものの未来を変えるようなことをしては行けない、勝手に世界を破壊しては行けない
といったものがあるのですが、そこの恋愛神はこれの1つを犯しました』
「アルテミラ様!」
「どんなことをしたんです?」
「お兄様聞いてはいけません!」
わーわーギャーギャーいい聞こえないよう頑張っているのだろうが、アルテミラとかいう神の言葉は頭の中に直接聞こえるため無意味⋯⋯
『えーっと、ある男に恋心を抱いた女に悪夢を見せ諦めさせたり、下駄箱に入ったラブレターを消し炭にしたり──』
恋愛神が真逆のことしてる
恋路の邪魔してるぅ
『直接告白してきた女への返答を故意に変え男が伝えようとした内容とは全く違う内容を突きつけたりとかですね』
「へー」
ウェンディーを見ると少しほっとしているようだった
隠したかった内容は話されていないのだろう⋯⋯
『じゃあ、話を戻しますね
それで犯した罪として、神権の剥奪をしようと思ったのですが、さすがに厳しっかなぁーって思ったので、ある世界に生まれた魔王を討伐したら神権を戻してあげることにしました』
最初と口調が違うが⋯⋯
神にツッコむ勇気はない
『そこで、神でなくなった女の子に1人で魔王討伐をさせるのは酷かと思い、好きなものを1つ持っていくことを許可したのです』
「まさか⋯⋯」
『彼女が、選んだものはちょっかい出していた下界に住む被害者
私は立場上嘘、偽りを言ってはいけませんので叶えてあげることにしました』
おい、今なんて言った
下界に住む被害者だと⋯⋯
ちらりとウェンディーの方を見ると顔をそむけた
「おい、義妹よ
これはどう言うことだ」
「なんのことでしょう、ウェンディーわかんなーい」
『そのままの意味です
先程話した禁忌の被害にあわれたのはあなた、関崎 奏さんです』
「⋯⋯」
絶句し、過去を振り返る
中一の冬、静電気を浴びながら開けた靴箱の扉
中に入っていた革靴には黒い粉がかかっていた
「お兄様⋯⋯」
高二の春、クラスメイトの女子をふった次の日、女子や男子から白い目で、汚物を見るような目で見られた
「俺の青春⋯⋯」
項垂れる
恋愛神によって俺に春は来ず、年中雪の降る真冬に設定されていた⋯⋯
『あぁあと、バレンタインチョコも──』
「アルテミラ様、こんなことをしている間も魔王が人々を苦しめています
はやく、私達を下界に⋯⋯」
必死でアルテミラによる暴露を止めるウェンディー
俺はただただ端のない空間の端を目で探していた
「読んでいただきありがとうございました」
「ありがとうございました」
「はぁ、義妹よ
そろそろ、離れてくれないか?次話を軽く説明したいんだ⋯⋯」
「お兄様⋯⋯、やっと会えた義妹になんて残酷なことを⋯⋯」
「腕から離れてくれればいいから⋯⋯それだけでいいから⋯⋯」
「⋯⋯分かりました
では、辞世の句を──」
「そんなに離れなくていいから!?」
「また明日⋯⋯変神2話も⋯⋯よんでね⋯⋯
字余り⋯⋯」
「どんな次話予告だよ!」