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広い部屋に天使が床に座っていたんだよ。

でかいの。背中にでっかい羽根があって。

ふわっとした白い服を着て、顔も優しい顔してるの。手もすらっとしていてさ。


もう呆気。ぽかんとして(え?天使?)って思いが頭をぐるぐるして。着ている服の白さと、顔の白さと、羽根の毛の白さが全部微妙に違って、綺麗なの。

服は青みがかった白で、肌は透き通るような白で、羽根は濃い白。どれも凄い綺麗で、(天使?)って思いがすぐ(綺麗だなー)って思いに変わって、なんで地下室が明るいのか、天井を見るのをすっかり忘れてたよ。

頭の輪っかは見なかったな、あったのかな。

天使の色は綺麗だと思ったけど、顔の造作は普通だった。標準的外国人。

ところがさ、その天使が俺に飛びかかってきたんだよ。無言で無表情で。

そりゃびっくりしたよ。

でもすぐガシャンって音がして地べたに這いつくばるんだけどさ、足が太い鎖で繋がれてて、そこまでしかこっちに来られないんだよ。

羽根があるからその姿勢のままこっちに飛びかかってくるのは何も疑問に思わなかったけど、顔がそのまんまでさ、これはびっくりした。

怖いよー。助けてくれ鎖を解いてくれって頼まれるとかさ、よくもこんなところに閉じ込めやがってって怒った顔で飛びかかってくるんなら、まぁ解るだろ、でもさ、何も言わず、表情を何も変えないでこっちに飛びかかってくるんだぞ、これは怖いよ。

床に爪を立てるようにしてこっちを見て、這いずって来ようとするんだけどそれ以上進めなくて、腹ばいのままふわっと上に上がるんだけど、こっちに来ようとしてまたガシャンと鎖の音がして地べたに落ちてさ、それの繰り返し。

うん、しばらくぼーっとして見てたよ。天使も何も言わずに何回も同じ事の繰り返しで。

怖いけど、これ以上こっちに来ない安心が出てきて、それで馬鹿馬鹿しくなって、また梯子を上って玄関に戻ったよ。

頼み事も恨み言もなくてさ、何をしろっての。

鎖の鍵がどこにあるんだかも知らないし、そもそも鍵穴があるんだかも解らないし、近づいたらぶっ飛ばされそうだし、誰か呼んでくるにしたってじいさんしかいないだろ、子供にどうしろっての。

階段上ってる最中にもガシャンガシャン音がしてさ、あの天使はあの光の中でずーっとガシャンガシャンやってんのかなーって。

あ、俺が行くまでは大人しく座ってたのか。


そんなことがあったけど、聞いてて別に怖くはないだろ?

俺も時間が経ってから、あれ?なんで地下室明るかったんだ?って気になったくらいで、そのことに気がつかなかったその時の俺、なんで気がつかないんだよって、そんなもんよ。

じいさんにも聞けなかったな、なんであんなところにあんな家が何軒も建っていたのかとかも。

別に知りたいとは思わなかったんだろうな。

それで次の日、突然親が来て、じいさんともお別れ。

そんな家のことととか天使のこと以前に、あのじいさんが誰だったのか、あそこはどこだったのか、全く解らない。

あー帰るのかーってだけで気にならなかったし、親が死ぬまでヘンなことだったなとは思っても、不思議なこととは思わなかったし。

一番わけが解らないのは、子供の頃の俺だな。


でもさ、そんな俺でも「なんだアレ?」って違和感をバリバリに感じたことも、なかったわけではないんだよ。

そんな山の中でさ、いる間中じいさん以外誰とも会わなくてさ、車で何十分もひたすら一本道を走るところでさ、

帰りにその山道を歩いてくる男と女の子を見た時は、目を剥いて「なんだんだこいつら!」って思ったね。

車がすれ違ったってんなら、まだ解るけど、こいつらどんだけ歩いてんだよ、どこまで行くんだよって。

それが俺には一番の謎。

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