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「……森くん」
「えっ」
「気になっている人は、森清光くんよ」
気恥ずかしさもあって、ポツリと呟くように伝えた。
―――――――――――『えぇーー!?そうなの!?』
『でも分かるかも、テスト順位でいつも学年1位の人でしょ?』
『憧れるよねー!』
『ええそうね。でも憧れというわけではないの、単なるきっかけというか。』
『落ち着いていて同世代の男子より大人びてるもんね、委員長と相性ぴったりだと思うよ!』
『気になるって、そういう意味ではないって言ったでしょ。
恋愛対象として見ているわけでは無いの。』――――――――――――――
頭の中でやり取りを想定しながら、次の言葉を待ち構える委員長。
だが友人達の返事はまったく違うものだった。
「森くん…?そんな人いた?」
「1年の時の知り合い?」
2人の様子に拍子抜けし、少しの間ぽかんと口を開けて固まる委員長。
「一応進学校なのだから、学年1位の人のことは意識しておいて欲しいわ……」
同学年には知れ渡っていると思っていただけに、僅かに、ショック。
2人は気にした様子もなくゴメンゴメン、と軽く流しつつ。
「それで、委員長は森くんの頭の良さに惹かれたってこと?」
学年1位とは言うまでもなくトップ。彼女よりも好成績を残している証だ。
真面目な委員長が意識を向けるのは自然でもあり、前置きで話していた、気になる相手が偶然男子だった、という話にも納得できる。
だからこそ、委員長の
「顔立ちが良いからつい見てしまうの」
という言葉はなかなかにインパクトがあった。
「顔が好きってこと?」
「好みとかではなく、整っているから目を向けてしまうのよ。
隣の席にイケメンがいる、って思わなかった?」
「隣の席だったんだ…」
名前も知らなかった彼が同じクラスであることも、席が隣人であることも、友人達は全く気付くことが無かった。
単に興味が無かった、というだけではなく、彼はそれほどに目立たない人だったのだ。
「それにしても、委員長がイケメン好きとは意外だなあ」
「思った。それと、顔ならユーキ先輩の名前が出ると思った」
「確かに!」
彼女達はユーキ先輩について楽しそうに会話し始めた。
どうやら学内の女子から大人気で、読モ-読者モデル-もやっている3年の先輩らしい。
当然知っている、といった話しぶりだったので曖昧に相づちを打ちながら、頭の隅に"ユーキ先輩"の名をインプットさせた。
こんなやりとりをした、月曜日のお昼だった。