第3話 捨て子奴隷は魔力を知る
やはり昨日のヴァレン君のことをジルに報告すると驚いたらしい。やはり初日で二つの教科の1年分を済ませてしまったのは驚くのだろう。今日は魔術を教える予定だ。魔術は覚えるのに才能も関わるから時間がかかるけどヴァレン君はどれほどの才能があるだろうかと考えていると当の本人がやってきた。
……やはり袋を引きずりながら。
「今日は魔術のお勉強をするわよ」
「はーい」
「じゃあ、さっそく始めるわね。 まずはこれをつけて頂戴」
と、中心に白い石が付いた腕輪を渡す。これは初めの魔道具というもので、身に着けると勝手に大きさを調整し、装着した人の魔力をなくなるまで放出させ続ける。最終的にはこの魔道具なしで魔力を放出させられるようにするのが目的になる。自発的に魔力を放出できるようになったかどうかは魔術で視力を強化させると体が放出している魔力を見ることができるためわかる。また、魔力を放出させているとそれだけで身体能力が向上するなど様々な利点がある。ちなみに放出して消費した魔力は自然に回復する。しかし体内にある魔力を出し続けて枯渇し始めると疲労感が出て完全に枯渇すると気絶する。
キャシーせんせいにもらったわっかをうでにあてると、きゅうにちいさくなってぼくのうでとぴったりになった。そしたらきゅうにからだがぽかぽかになった。
「暖かいような感覚がするでしょ? それは魔術を使うためにある魔力が全身から出ているからよ。 いずれその腕輪なしで、自分で魔力を出せるようになったら次の勉強に進」
「せんせいこれはずしてもなおらなーい」
……は? そう思いヴァレン君を見ると確かに腕輪を外している。……確かに魔力が放出されている。
目の前の光景が理解できない。
「せんせー?」
ヴァレン君の言葉でやっと我に返った。……自発的どころか無意識で放出させ続けるなんて。普通はそうなるまで数年から十数年かかる。ありえないほどの才能だろう。
「じ、じゃあそのまま次の話をするわね。いまヴァレン君の体で放出している魔力はもともとヴァレン君が持っている魔力を体の外に出しているから起こっているの。だからたくさん出すことも、ほとんど出さないこともできるの。やってみてくれる?」
「やってみるー」
まりょくをおしだすようにからだにだすとへんなかんかくがつよくなった。
「上手ね。今度は出さないようにできる?」
「うん」
こんどはまりょくをからだのなかにおしこむ。
「まさか1発でできるとはね……はぁ、慣れてきたわ。次の話に進むわね。今度は腕に魔力を集めてくれる?」
「はーい」
みぎうでにまりょくをおしこむ。こんどはみぎうでだけへんなかんかくがくる。うでがすごくあつい。
「できてるわね。じゃあ石板を持ち上げてみて」
「はーい。……すごい!かるい!」
「そうでしょ?魔力は体の外に出してると少しだけ力持ちになったり、目とか耳とかもよくできるわ」
「へー。せんせいつぎはー?」
「え、別にいいけど疲れてない?」
「だいじょうぶ!」
「うーん、初めての子は長くてももうすぐで魔力が切れるんだけど……本当に大丈夫?」
「うん!」
「そ、そう……じゃあ、始めるわね。次は魔力を魔石に込める方法よ。まず、魔石っていうのは魔力が固まってできた石のことね。魔力が魔石になると魔力を貯められるようになるの。魔力を込めた魔石はあるといろいろ便利だからできるようになっておいて。はい、これに魔力を込めてみて」
キャシーせんせいにわたされたとうめいなませきをにぎってまりょくをこのいしにおしこむ。そうしたらだんだんませきがしろくなってきた。
「それが魔力を込めた魔石よ。魔石は魔力を込めると色が変わるの。今日はここまでね。放出してる魔力を止めて」
「はーい」
……やはりとてつもない才能ね。ほぼ1年分の魔術の練習を一度でこなすなんて。昨日のこともあるし、今日の報告書は早めに出しておきましょう。
……なんだったんだろう。さっきの。きょうはまじゅつのべんきょーをした。だけどキャシーせんせいのおはなしがむずかしくていみがわからなかったことばがあるのに、まりょくとかまじゅつのおはなしだけはあたまにはいってきたみたいにどうすればいいかわかってた。ふしぎ。なんでだったんだろう。……ねむくなってきた。…………ねよう。
……どこだろう。ここ。むねがむかむかする。うう……ぜんしんがいたい。いつのまにかめのまえにひとがいた。「こ……なら……せ。無……がな。いず……王は……がえる」
今回も読みずらい箇所がございますがご容赦ください。もうすぐ解消されるので。
意見、感想、指摘等ございましたら教えていただけると幸いです。