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僕は( )  作者: 『無価値』
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新垣勝一郎と出会ったのは高校に入学してすぐのこと。入学式が終わり教室に戻ると、そこに一際大きい背丈の彼もいた。

─お前も名前、「しょういちろう」なの?─

と、珍しいものでも発見したみたいな口調で話しかけてきたのがきっかけだった。そして実際、「しょういちろう」という名前の人物を、僕以外に見つけたのは僕にとっても初めてだった。しかし僕と彼の名前は響きこそ同じだが、彼は「勝」で僕は「将」だったから、厳密には全く同じわけではなかった。

そしてそのルックスや性格も、僕と彼では正反対だった。僕はあまり人付き合いが得意な方ではなく、どちらかと言えば暗い種類の人間。ポジティブな表現をすれば真面目とも言えるが、あまり人から注目される方ではない。

反対に彼は社交的で、初対面の人ともすぐに仲良くなれる。クラスでもリーダーシップを発揮して、皆んなを引っ張っていくような人物だ。彼のその性質のおかげで、僕は彼とこうして巡り会えたわけだ。後になって聞いた話によると、幼い頃から野球に熱中して、厳しい練習に耐えて来た中で、彼のその人格は磨かれたようだった。

見た目はと言えば、僕は身長も体重も平均的。肌は白く、前髪が目にかかりそうなくらい伸びていて、顔立ちも、良くも悪くも特徴がない。僕自身、普通というのを一番体現していると自負している。

彼は、小さい時から体を鍛えてきたから、身長も高く、筋肉質で、肌は程よく焦げていて、いかにもスポーツマンといった感じだ。何より印象的なのは笑った時にちらっと見える八重歯だった。それのせいで、彼は体の割に無邪気な子供のような風貌をしている。

僕と彼が同じところは、名前と、そして

母子家庭ということ。

少し違うところは、同じ母子家庭でも僕は兄弟がいないから、貧乏なりにそこそこの生活をしているが、彼の家は五人兄弟で、長男である彼は家事の手伝いで毎日多忙。その生活はかなり切羽詰まったものだということ。これでは同じ貧しいにも、天と地ほどの差がある。

だからこそ僕は、彼に惹かれていったのだろう。今では唯一無二の友でありながら、尊敬する師のような特別な思いも持っている。


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