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愛するあなたの為に ~祝福を…~

「……私は主人を殺した人を許せません。出来ることなら私がこの手で主人の仇を取りたい。」

そうクリスさんは答えた。全員は静かに聞いていた。

「でも、主人も私も敬虔なテミスティ教の信者です。主人は特に敬虔な人でした。自分には悪に対する力が無い。だから記者としてペンで戦うんだと常に言っていたんです。神様は常に私達を見ている、だからその行ないに恥じない生き方をしようって。」

「だからこそ、私の願いは主人の意思を組みます。そうすることが主人に対する私の思いなんです。どうかお願いです。主人を殺した仇を捕まえて下さい。」

クリスさんは切実にそう願った。

「………あなたの願いはご主人の仇を捕まえるですね。クリスさんの本心もわかりました。そこで1つ私から提案があるんですが聞いてくれますか?」

そう私はクリスさんに提案し全員は静かにこうなることを把握していたかのように聞いていた。


少し時間は遡る。


……バタバタバタ。

「……様ぁぁ!!どこですか!!全くまたいなくなって!!」

そう怒鳴り声をあげながら長い通路を走り回る初老の男性がそこにはいた。

「全く!!いつもいつも!!」

そこをたまたま通りがかったノーブがいた。

「ノーブ様!!」

そう初老の男性は叫んだ。

そして対するノーブは初老の男性フーリに対してどこ吹く風といった感じで言い返す。

「私があの馬鹿のいる場所を毎回知っているとでも思っているのですか?」

そう言い返す。

かたやフーリは走り回った疲れと年齢が年齢の為息を切らしながら怒り心頭といった感じで言い返す。

「ノーブ様が行動の監督をしなくてどうするのですか!!それでも筆頭ですか!!」

と言い返す。

その場の言い争う声を聴いていた者達はまたかと思いながら遠巻きに静観していたら……。

「…いやぁ。今日も平和ですねぇ。」

と春の日差しを感じさせるような声が通路から聞こえてきた。

「………フーリ様?」

とノーブの表情は怒り心頭。

そしてフーリはフーリで表情は怒り心頭。

「……ノーブ様この話しはまた別の機会にしましょう。今は急いでいますので。」

とフーリはノーブに言い放ち、そして。

「……主様ぁぁぁ!!!」

通路にはフーリの怒声が響く。

「……はへぇ??」

素っ頓狂な返事が返ってくる。

そしてその後通路には怒声と首根っこを摑まえれて執務室に連行される主様と呼ばれた男がいた。

その表情は相も変わらず笑顔であった。

執務室に着いた2人は部屋の主が来る前に待っていた人がいた。

「……やっと見つかりましたか。」

そう言うのは傍目から見たらまだ少年と言えるが纏う雰囲気は既に長い時を生きているような碧眼の美少年だった。

「おや?珍しいですね?あなたがここに来るのは幾年ぶりですかね?」

いまだ首根っこを掴まれたままの主は少年に対して笑顔を向けながら話す。

「……火急の要件があったのと私自身が動く必要があったので。それに久しぶりに古い知己に会わないとあなたは平気で忘れてしまうでしょう?」

と笑いながら少年は話しかける。

「……火急の要件というのが気になりますが、私がそんなすぐ友の顔を忘れるわけないじゃないですか。」

そう言いながら椅子に腰かけ、フーリは隣に立った。

「…今回の私が直接動かなくてはいけなかったのは、私の管理する地区で奴らの動きが確認された。」

そう伝えられた2人はお互いに顔を見合わせた。

……そして。

「わかりました。ならば私達の管轄ですからね。場所はどこですか?」

……ちなみにこの話しが終わった後に主様と呼ばれた男は、長いとても長い説教を受けながら雑務をこなし、雑務と説教が終わったかと思った矢先にノーブのとめどない罵詈雑言を受け精神と肉体がボロボロになったのはここでの毎回の事なので誰一人助けないのであった。


そして時間は戻る。


………聖歌が奏でられるなか神父が棺に向かい聖水と祈りを捧げる。


その中で別室にいる本来祈りを捧げるはずだった教会の関係者達は面には出さないようにしてはいるものの小声で話しをしていた。

「一体あいつらは何なんだ?」

そう漏らすのはこの教会の管理を任されている男だった。

「わかりません。今回急に法王庁より巡視をしていると法王様直々の認可証を持ってきましたし、認可証のサインも認可管理官に魔術式で確認させましたが本物と断定されました。」

管理者の腰巾着として常に傍らにいる男がそう報告している。

「…ふん。非常に不味いタイミングだったが何とかなったからいいがな。そういえば奴らは?」

「今回の件が終わってからは連絡が来ていないですが、まぁ荷物の引き渡したがこの間ありましたし近々には来るんじゃないですか?」

「そうだな。まぁこの街の治安維持部隊も事の真相に気づきもしないから問題はないだろう!それに、この後にあの夫人には消えてもらうのだからな!」

そう管理者は言いながら笑い出し、続いて腰巾着も笑い出した。

……この時彼等は気付きすらしていない。すぐ側でこの会話全てを聞いている存在がいることを。


「彼の者はここに眠る。今世に生まれテミスティ教の教えの元で生前の善性を積むも、悲しき事に巻き込まれてしまった。彼の者に今世の命と来世の命に女神テミスティ様と法王猊下の祝福があらんことを。」

そう私が祝福の祝詞を捧げる。

「祝福を!」

「「「「「祝福を!」」」」」

教会内にいる参列者全てが一斉に捧げる。

そして棺を運び、最後の祈りを捧げた。

全ては順調に終わり参列者は家路についた。

それを遠巻きに眺めながら見ていた私に近づく気配を感じた。

「……非常に悲しいですが私の考えていた通りの結末になってしまうのですね。」

そう1人呟くように言い、私は青い空を眺めるのでした。


時間は流れ深夜。


クリスさんの自宅に近づく人影達がいた。

「……お頭?急に強盗なんざ珍しいっすね?」

と傍目から見たらただの旅人然としている男が、これまたただの旅人然としたお頭に言うとお頭はめんどくさそうに返事を返す。

「……ふん。俺も足がつくから好んでやらしねえよ。ただな、今回は別だ。この街のお偉いさんがちょっとお困りで俺らの今までの罪状を見逃してやるから手を貸して欲しいんだとよ!」

と、お頭はさも面倒くさそうに言いながら部下達に言う。

「……お偉いさんなら子飼いの闇を飼ってそうなもんですけどね?」

「どうも連絡がとれなくて困ってんだとよ。ただまぁ俺も馬鹿じゃねぇ。金も前金で全額いただいたし終わったらさっさとトンズラよ!それに、この家に住むのは女1人だって聞いているが絶対殺せ、家には証拠が残らないように火事を装えだとよ。」

「……そうっすね。下手するとあっしらが殺されるかもしんないっすね。」

「おうともよ。それじゃあ野郎どもそろそろ行くか!」


そして強盗集団はクリスさんの家に押し入った。

……足音1つ立てずにクリスさんの自宅に侵入した強盗集団は各部屋を確認していった。そしてクリスさんが眠る部屋に到着した。

部屋に侵入してきた強盗はベッドの膨らみを確認した。目配せでお頭に指示を仰ぎ、頭を少し振った事を合図として一気にベッドを剣で上から下に差し込んだ。

……剣が貫いた部分から液体が染み出てくる。念の為シーツを剥ぎ取り確認をしたら……。

「おっお頭!!女がいねぇ!!」

確かにシーツからは血と思われる液体が染み出ている。にもかかわらずベッドには対象の女はいないこの現状に訝しむ部下達と、何かを感じたのかお頭は即座に部下に指示を飛ばす。

「逃げるぞ!!わかんねぇが何だかやべぇって肌が感じてやがる!!」

そう言うやいなや、全員が動こうとした瞬間に視界が暗転した。

一瞬の出来事に何が起きたのかわからない中で、完全に場違いな声が聞こえた。

その声はまるで優しさに溢れる声で集団に問いかけた。

「あなた方はなぜこの家に住む人を襲ったのですか?」

そう聞いてきた声の主をお頭は音を頼りに探した。

そして気付いた。

さっきまで剣だけが刺さって謎の液体が染み出ている場所にまるでずっといたかのように悠然と腰かけている男を。

男を確認したお頭達はさらに驚愕することになった。

男達は誰1人体を動かせないのだった。

「あぁ!みなさんには色々聞きたいので動けなくさせてもらっていますよ?」

そう何でもないような事のように言い放つ男を見据える強盗達は何とか体が動かないか試すも指先1つ動かせない。

「ではまず聞きますが正直に答えて下さいね?このように人を殺そうとする行為は大罪ですがなぜこんなことを?誰かに弱みなどを握られてですか?」

そう聞いてきた男にお頭も部下達も表情には出さないが何とか嘘で乗り切れると確信したのだそしてお頭は答える。

「そうだ!俺達はただの旅人で偶々この街に来たら仲間を人質にとられたんだ!」

そう答えたお頭に同意するように全員が頷く。

「では誰に指示されたんですか?」

「わっわからねぇ!相手の顔はフードで隠れてわからなかったんだ!」

「そうですか。神に誓って今の話しが真実だと誓えますか?もし嘘ならばあなた方はその命を奪われてしまいますよ?」

「誓える!!神に誓って俺達は嘘なんかついちゃいねぇ!」

そう答えた瞬間に場は急変した。

今までは優しい笑顔をしていた男から表情が抜け落ち、部屋の温度が急速に抜け落ちていくような錯覚を強盗達は感じていた。

「……残念です。あなた方は今嘘をつきました。神に誓うと言った誓いを破りました。誓約は制約です。私はあなた方に言いましたよね?命を奪われると。」

「待ってくれ!なんで俺達の言った事が嘘なんだ!!」

お頭はそう言い放つ。事実は嘘だがこの男にわかるはずがないと。

この集団は見た目から強盗だとわからないように工夫をしていた。

身なりも、多くの街に滞在する際に疑われないように一介の旅人の集団として潜り込み獲物を物色し事が終われば次の街へと活動拠点を設けていないことから公けに顔がばれていないのが特徴だった。

「それはとても簡単ですよ。あなた方が街に来た時から知っているのですから。」

「……はぁ??」

強盗達はこの男が何を言っているのか理解できていなかった。

「あなた方がこの街に来た時の人数は今いる人達で全員ですしその後に増えてもいない。そして私は最初から見ていたと言いましたよね?」

そう話している男の横に気づいたら……いた。

急に男は現れた。そして今度は黒い猫がいた。

まるで最初からいたという雰囲気を出して悠然とベッドに横たわる猫。

そこで気付く。さっきまでベッドに染み出ていた何かが綺麗に消えていることに。

「……では、あなた方に判決を下します。」

「待ってくれ!命だけは!頼む!!」

そう言いだしたが男はただただ無表情に言った。

「逆にあなた方は今まで殺してきた人を助けましたか?」

そう言い終わると同時に足元の闇に飲まれていった。

……静寂がその場を支配する中で男は猫に語り掛ける。

「……お腹壊さないでくださいよ?」

と普段の優しい顔で語り掛けるのだった。

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