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星図盤上のエデン   作者: 絶望の裏の対なる存在
7/12

7*天秤の中心に立つ者 ・マヤ 『ーー調整者の少女と界現視の少年ーー』

アイツが作った世界を私が調整しなければならない。それも毎回だ。

「ほんと面倒くさいわ。あのアスとかいう少年には界現視の適性が本当にあったのかしら?」

ワルは後継者の選定を見誤ったんじゃないのかと本気で思ってしまう。

アス。

彼が創った世界はあまりにも歪だ。正直言って、調整の範囲ではおさまりがつかない。これはもう修正のレベルまでいっている。

彼の造った世界を私一人で管理して調整するのも大変なので、もう一人の私の目として私の分身を『バイアス』と名付けてモニター役、観測者として鏡庭園(ミラー・ガーデン)に置いた。

けれど、それでも私の調整作業は間に合っていない。


(結局、私一人で行っているんだから当然なんだけど)


自分の分身は一人しか置けず、それも世界との干渉をしない場所に限るという運命輪(ディスティニーサークル)に与えられたルールがある。調整というものは少なからず世界との干渉が伴うものなので、いずれにしてもここに私の分身を置くことはできない。


「はあ……運命はいつも私に厳しいな」


つい、心の愚痴が漏れてしまう。


私はもう一度ーーこの裏側の世界を見渡す。


目に映る世界の両端にある天秤はどちらかに偏ったままだ。平行空間の均衡つまり天秤の傾きを保ち、世界の(スフィア)(にご)り、およびその色を適切な濃度に保つ。その両方の調整。それが世界の調整なのだけれど、正直、私はもう疲れた。

いままでも多くの調整に時間をかけてきたけれど、

いまある世界ほどに歪で不完全なものは存在して来なかった。たしかに界現視(創り手)の意思は様々でばらつきは沢山ある。それでもこれまでは許容範囲内で、時間は結構掛かることはあっても調整を行なってくることが出来た。

けれど、今回だけは違う。これはもう無理だ。


「いっそ彼に会って文句を言ってやりたい!」


それはしてはいけないと分かっているけれど、


「もう! 我慢の限界よ!! 運命!!!! ーーー私は彼に会ってくる。そして文句と微調整で済む世界を要求するわ!!」


運命輪(ディスティニーサークル)に許可を得ずに、私は無理やり世界の中の裏側から世界の外側に飛んだ。(因みに、実際に時間が流れて秩序が動いているのは世界の表側だけ)


世界の外側とは界現視が創る球体(スフィア)(世界の元)の外側の場所で、本来ならば調整者のーー私が訪れてはならない場所ではあるのだけれど。


それは


『創り手の意思に直接干渉してはならない。』


それが運命輪(ディスティニーサークル)の意志だからだ。

けれど、今回は初めてその固い意志を持つ運命が私に味方をした。つまり、それほどにいま造られている世界は歪であり、それを造っている創り手.界現視もまた運命の意志の許容範囲を超える存在だということだ。


「運命の意志を捻じ曲げるとかよっぽどの存在ね。もちろん悪い意味でたげど」


そもそも世界の創作は界現視の生まれ持った質や感覚、いわゆる才能の要素が大きく必要とされてきて、あとは自身の経験値とーー先代の界現視である自分の師にあたる存在の経験値と重なり合わせて造られる。けれど、造られる世界はどっちかと言えば、やはり現在(いま)の界現視(創り手)の本質の部分が大きくでてくる。

それは当然のことで、創り手は先代のコピーではない。何十何百何千とそれぞれか寿命の限界まで生き、それが尽きるときに膨大な知識・経験の回路を自身が選定した適正者たる次の界現視に引き継ぐ。でも、時間が経てば経つほどに概念なんてものは変わってくる。

(まあ言ってみれば伝言ゲームの最初と最後が違ってくるようなものと思えば近い。それがとてつもなく壮大になってるだけのことね)

だから実際にいまの世界を造るのはいまの創り手の界現視なんだから、その者の影響が強くなる。


私はそれらの創り手たちか造った世界の歪みを調整するのが定め。私は彼らのように年もとらないし寿命もないので、次の者を選ぶことも引き継ぐこともない。不老不死という概念が私の存在なのだと思う。だから私はいままで何代もの界現視(創り手)たちを見てきたし、それぞれの世界の調整もしてきた。困ったことも数知れずあったけれど、その度に界現視(創り手)たちに直接会って文句を言ってやろうともしたけれど、その都度、運命輪(ディスティニーサークル)の固い意志の力に阻まれてきた。

でも、今回は初めて、最初で最後かもしれないくらいに奴(運命)の鉄壁の意志が根をあげたので、私はそのおかげでここにーー世界の外側にくることができた。



「ここが世界の外側? 思ってたとおりの殺風景な場所。ーー 運命の了承は得なかったけど、半ば強引でも目を瞑って道を通してくれた運命に『ありがとう』と言いたいわ」


運命に感謝したあとで私はこれからどうすれいいのか

と考えた。でも、考える時間もそんなに必要はなかっった。なぜなら、私が会いたかったアイツは、向こうからすぐに現れてくれたからだ。


球体(スフィア)(世界の元)の影からこちらに向かって、少年が歩いてくる。


「キミはだれ?」


静かな声で、

少年が私の姿を視界にとらえる。


「私はマヤ。貴方たちが造った世界を調整する者よ!」


大きな声で私は答えた。


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