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6*語り部の魔女・イリス=ラピスラズリィ
それはワルプルギス=ワーグナー。後に虹色の瞳を持つ界現視となる老人。
彼が、まだ少年の時代を過ごしていた時の遠い過去の話。
「ワース! またあなたは魔術の修行をさぼってたでしょ! 殴るよ!」
「痛い! もう手がでてるんだけど。聞きながら殴るのとかやめてくれない? 避けようがないからさ」
ーー本当にいきなり殴ってこないで欲しい。しかもそれなりに力が入ってるから結構痛いし。
「 私の言いつけを守らない、あなたが悪いんでしょー!」
そう言ってイリスがもう一発目のゲンコツを構える。こうなってしまっては素直に謝っておかないと後に響いてしまう。そうなったらご飯抜きとかされかねない。
ーーそれだけはごめんだ。
「ごめんイリス! 僕が悪かったから。謝るよ」
素直に謝る僕の姿を見て彼女は拍子抜けした顔で頭にあげた拳を下ろした。
「今日は素直ね。どうしたの?」
「どうもしないよ。ただ、学習しただけ」
「学習?」
「いや、こっちの話だから。気にしないで」