3*世界の意思に呑まれた者・ワルプルギス=ワーグナー
これはワルプルギス=ワーグナー。後に界現視となる老人が世界の意思と繋がるまでの、
彼が、まだ少年の時代を過ごしていた時の遠い過去の話。
『ーー何者にもなれぬお前のような奴は、この場に必要はない』
そう言われたのは老人がまだ永遠の歳を得る前の少年の頃の話だ。
そう彼を叱咤したのは
【グレゴリウス=ノイマン】
彼の魔導の師だ。
少年は先生に言われた結晶魔法の術式をうまく組むことが出来なかった。それに加え空間移送の魔法も失敗した。
もともと怒りやすい気性の先生にはこの立て続けの失敗が許せなかったようだ。
「ワル。私はお前のことが嫌いだからこんなことを言っているわけではないんだぞ」
「……すみません。先生」
少年は抑揚のない声で申し訳なさそうに答えた。
「ただ、私の教えたことができないお前が憎いんだ。なぜ出来ない? 私の説明が理解できないわけではないだろう」
「……………」
少年は無言でうつむく。
「私も教えてるのがお前でないのならここまで腹は立たないんだよ。なぜならあの時ーーお前が私より優れた魔法を無学で使うことができたからだ」
『あの時』とは、ここから数ヶ月前のできごとに遡るのたがーーーーーーー