2*箱庭の世界で佇む少女・セツナ=スユ
「どうして……私は泣いているのかな?」
少女は右手で涙をぬぐいながら立ち上がる。
そこは赤い砂の砂漠。
乾いた風が吹く、車輪の太陽が無数に見える煉獄の空。
辺りには無数の屍があり、それはもう骨となり赤い砂の中に同化しかけている。
その中心に少女はいる。
ーー悲しんでも仕様がないーー
少女は心の中で呟く。
「ーー仕様が無いのに……」
心の呟きが声になって出てしまう。
我慢しても耐えようとしても、心は正直だ。でもそれはまだ心が壊れていない証拠でもある。少女がまだ人間である証だ。
「行かなくちゃーー私が見たことを、知ったことを、早く他の誰かに伝えたい」
そうすれば、何かが変わるかもしれない。いやーー変わって欲しい。
その想いが少女の原動力になる。その想いがなければすでに膝を折って地につけている。
弱音を吐いている暇が有るのなら、地に膝をつける自分を想像する暇があるのなら、まだ歩ける余裕があるということだ。何も考えられなくなったときが本当にダメになった時なんだ。
少女は、そう自分に言い聞かせる。そうすることで、私は他の大勢と同じように壊れたりはしない。自分だけはそうなってはいけないんだから。
2* オープニングーー箱庭の世界で佇む少女ーー