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仮想の現実は無法地帯  作者: 雪斎拓馬
仮想の現実は無法地帯 上
9/55

第一話 「街の死角は概念の中に」 9 *END

    9        ――END


「ヨルが新人を連れてくるなんて珍しいとは思っていたけど、それが少女となるとまたいい気味だわ」

 便利屋のリビングで、ヨルとリナ、ヒビヤとかのん、そして新入りの霊猫が集っていた。そろそろ終わりの鐘の音が響き渡る頃だ。

「聞かせてくれるかな、ヨル。何故彼女を救ったの? 女だから、とでも答えたら殺すわよ」リナがご機嫌に質問した。表情の割には恐ろしい言葉を使う。

「橘のとっつぁんに彼女を助けるよう指示された。つまり仕事の掛け持ちだ。報酬の量や信用性を合理的に判断した結果、無論とっつぁんの優先度が上がり、アーキアを片付けてきた」

「へえ、四位を殺したのか」ヒビヤは面白い情報を聞いた、と目を輝かせた。

 この世界に時計はない。時間の概念をまだつける予定はないという。そういえば最近は時間が少し延びているような気がする、とどうでもいいことが脳裏を過ぎった。

 強弓は武力を高める為に超能力者を欲しがった。偶然にも自分の街に新星が生まれ、アーキアは新星を手に入れようとした。しかしことごとく新星である霊猫に逃亡され、ヨル達便利屋に捕獲を要求した。恐らくアーキアは仲間が殺され、敵となった便利屋を仲間とした新星を見て、仲間にできないと判断したのか、ヨルと対峙した際「殺せと依頼したはず」と言ったのだろう。

「それで、何で橘さんと話す時に僕達の前から消えたの?」

「見られると困るからだ」

「誰に?」少し驚いた表情でヒビヤ。

「おまえらに、さ。おまえらには俺が本気で目標を殺すと見せておかなければならなかった。――まだわからないのか、監視だよ。奴ら強弓は用心棒雇いで有名だからな。俺達の周りに監視役を見つけた。俺達が仕事を全うするか常に見張っていた」

 それは気付かなかった、とヒビヤは素で驚いた。リナもまた気付いていなかったようで、もう少し勘をつけた方がいいと考えた。

 リナの元へ届いた霊猫の情報が偽造メールであることくらい、強弓の用心棒は気が付いただろう。その事実をアーキアへ報告した。アーキアは用心棒と合流。迷宮通り街の建物の上を跳んで行くヨルを追い、霊猫に接触したヨルを襲った。

 この一連の流れが、彼の組んだ計画だ。

「リナは途中で、俺が彼女を助けると気付いたそうだが、すまなかった」

 リナは、謝る必要がどこにあるのよ、と笑った。

「そろそろ時間かな」リナは経験を元に伝えた。

 ヨルは霊猫を見て別れの挨拶の代わりだと口を開いた。

「嫌になったらいつでもここへ来い。おまえの罪悪感は俺が全て背負う。おまえと俺は似た者どうしだ。だから、おまえの痛みは俺が受けよう。いつかおまえが俺達のところから出られるよう、俺達がおまえを救ってやる」

 大きな鐘の音が響き、やがて彼らの視界は暗転した。

 さあ、鬱陶しい朝日が待っている。

 ――失望したとは言え、現実世界は俺達に必要不可欠なのだ。




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