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仮想の現実は無法地帯  作者: 雪斎拓馬
仮想の現実は無法地帯 上
8/55

第一話 「街の死角は概念の中に」 8

    8


 リナ達から一度離れたヨルは近くの建物に寄りかかってデータを開いていた。

 霊猫に会う約十分前だ。

「橘のとっつぁん。遠慮はしないで情報をくれよ」

 電話だ。ヨルは橘へデータを介して電話をしていた。超能力のある世界とはいえ、電話は現実世界と同じで声に出して相手に伝えなければならなかった。それはメールにも言える。文章とはいえ画面を見られてしまえば電話と同じだ。こういったコミュニケーションには隠れ場がない。

「いらない、と言われたのだが」

「無駄な言い訳はよせよ、あんたなら俺達の状況もわかっているのだろう?」

「強弓の奴に依頼を受けている。それに、君があの街をあまり好まないことくらいは知っている」

「返しは幾らでも払ってやろう。何なら俺があんたのところで数日働くってのもいい案だと思うけどな」

 ヨルがそう言うと嘲笑のような声が返ってきた。

「自惚れるな、少年。それで、私の元へ至るまでの経緯を教えてくれないかな」

 面倒だと彼は思ったが、仕方がないと全てを話すことにした。

「武器も所持せず強弓を欺ける奴がいるとすれば超能力しかあり得ない」

 この情報は強弓のメールによって既にわかっていた。強弓が自分達を狙っているわけもないため、信憑性の高い情報だと判断していた。それから、相手には超能力者第四位がいる。それらを欺くことができるのは、超能力者だけだ。

「走る速度が遅く、身長が男女どちらにも付き、挙句超能力者は男女両方にも発現する可能性がある、と単純に考えればおそらく女だ」一呼吸をしてから推理した結果を自慢げに話すように、「あんたは昨日の最後、新たな超能力者が現れたと言った。それが女で、俺には殺せないともな」

「それで、私に情報提供を要求したと?」

 いや、もう少し考えていた、とヨル。

「俺の知っている超能力者を探したんだが、どうにもアーキアより強い人間、ではなくアーキアを簡単に突破でいる人間などいなかった。だから、『新星』かと思ってな。そういえば橘のとっつぁんが新星について話していたな、と思い出して」

「良い判断だ。確かに私は彼女、霊猫と名乗る超能力者を知っている」

 ヨルは思わずにやけた。ああ、間違っていなかった。

「さて、無料とはいかない」橘は考えるような声で言った。

「その霊猫を働かせばいいのでは? あんたの言った『破壊』という能力は、能力や物質を破壊する能力だろう? 第二位に『消滅』を使う野郎がいるが、おそらくそいつとは違うものだ」

「その通りだ、女は能力を破壊する。アーキアは後方から攻撃していたようだが、全部無効化されていたさ」

 強弓はリーダーが超能力者というだけではなく、兵士もまた高度な技術を持っているのだが、それでも銃弾を破壊されているようでは敵うはずもない。おそらく霊猫という女は敵兵士を破壊したのだろう。

「能力の波を作れば大体の居場所がわかる、この理屈は通用するな? 自分が超能力者と自覚していない彼女が無意識に能力を発動しているからこそ、強弓を潜った」

 それもその通りだと笑ってから橘は一息ついて提案へ返した。

 この約十分後に彼はこの作戦を行った。地面を叩き、地震のような能力の波を作り、超音波の跳ね返りを使って物を探る蝙蝠の如く、霊猫が無意識に消した波の穴を探る。これによって彼女の位置が簡単にわかる。

「私は良い子ちゃんが嫌いでね、そんな女は私の元には置けない。だから、代わりに情報を頂こうかな。おまえも知る通り私は超能力者専門の情報屋をしているからね」

 新星の情報は完璧ではない、と続けた。

「強弓のメールアドレスを()()()()リナへ特徴を送ってくれ。彼女は迷わず俺を呼ぶだろうから」ヨルは見透かした口調で頼んだ。

 この後すぐにリナへ霊猫の情報が届くが、それは強弓からではなく橘からのものである。

「交渉成立だ。情報は彼女へ渡した。だが、よかったのかね、おまえは声を消しているから問題はないだろうが、データ画面は人に見られる。偽造メールなど確認されれば強弓は黙っていない」

「心配いらないさ、とっつぁん、奴らは何と言おうと霊猫を排除したい。偽造メールだろうと情報が入れば得になる。霊猫の排除を確認した後に偽造メールの出所を調べるはずだ。なに、俺達はそれでも屈しないがな」

 自惚れるな、と橘は言うと電話を切った。

 その後すぐにリナから着信。さて戻るかと彼はリナ達の元へ帰った。



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