6、名門
首位はここまで8勝0敗の浅草エンジェルス。
2位に神戸クイーンと東京エリーザが7勝1敗で並んでいた。
リーグ戦、前半のラストゲーム。
この日の対戦は東京エリーザだ!
観戦する試合すべてに勝利をしているこのチームが負けるはずがないと高を括っていた。
俺の予想とは裏腹に東京エリーザの一方的な試合展開に圧倒された…
ボッコボコにやられ0対5の大敗。
試合後、ピッチで泣きじゃくる浅草エンジェルスの選手達。
その姿をにらみつけるようにして引き上げて行く東京エリーザの選手達。
女同士の意地とプライドをかけた戦いに恐怖を感じた…
「長老、負けちゃいましたね。」
「やっぱり、エリーザは強いな。女子サッカー界の名門だからよ!」
「名門…」
「エリーザはよ、関東のサッカー少女を集め、そん中から選りすぐりをセレクションして徹底的に鍛え上げたエリート中のエリートなんだよ。」
「エリート…そういや、監督のオッサンも大声を出しまくってましたね。」
「ありゃ女だよ。寺本といって、元日本代表のエースストライカーさ。」
「女っすか?どう見ても男にしか見えねぇ…」
「エリーザにあらずんば女子サッカーにあらず!
エリーザこそが女子サッカーの最高峰!それが寺本の考え方だよ。
そのためには選手が泣こうが、わめこうがスパルタでビシビシ鍛え上げて
女子サッカーマシーンを作り上げてきたのさ。」
「そういやエリーザの選手は勝ったのにニコリともしてませんでしたね?」
「まあ、あいつらからすればエンジェルスの選手は格下なんだよ。
格下のくせに少し連勝したくらいで調子に乗ってんじゃねえ!って思ってんだよ。」
「エンジェルスの選手はみんな泣きじゃくってましたけど…」
「うちの選手は少しばかりメンタルが弱いからよ、心配ではあるな。
フロントが3年前にベテランをバッサリ切っちまってよ。
若手ばかりのチームに切り替えたもんだから頼れるベテランみたいなのがいないんだよな!」
「それは不安ですね…確かキャプテンの谷口が一番年上で25歳でしたよね。
それに引きかえエリーザの選手のたくましさは半端ねぇっすね。」
「ま、一週間で切り替えられるかどうかだ!
じゃあ、兄ちゃん。また来週な!」
俺が観戦し始めて初黒星・・・
本当に悔しかった!