【君と一緒の最寄り駅】
「今日のテスト死んじまったよ。」
「そんなに難しくなかったじゃん。今回は」
「はぁー?お前みたいな優等生とは違うんですー!だ!」
「どうせ君は今回もろくに勉強してなかったんでしょ?」
「うっ。」
このアホとつるんでもう1年か、ふとそんなことを考えてみた。
「あー!もう!お前は授業きいてるだけで何でもできていいよなぁ。
半分ぐらい俺にもその才能分けてくれよ。」
「お断りです。だいたい私だってちゃんと家で勉強してるしそんな超人じゃないよ。」
私たち二人は電車通学だが、ほかの人はあまり使わないほうの路線を使っているので登下校で同級生に会うことが少ない。
一年のときにクラスは違うけど部活をやっていない同士、帰る時間が一緒ということで仲良くなったのだ。
「そういえば、お前とこうやって帰り始めてもうそろそろ1年目に突入するなぁ。」
心で思っていたことと同じことを言われてドキッとしてしまう。
「確か去年もこのテストの辺りだったからちょうど一年かな?」
このバカがそんなことを考えているだなんて思わなかった。
「それがどうしたの?」
「何か記念になることでもしようと思って。」
「そ、そんな恋人同士でもないんだから!」
「いや、お前と出会ったのは奇跡としか言いようがない!記念日にすべきだ!」
こんな冗談でも時折本気で言ってるから困る。
「確か、お前と帰り始めたのがテストが終わって三日後だったから、今日から三日後が記念日だ!」
「ふう、君のバカには付き合ってられないね......」
「なにを言う!記念日は大切なんだぞ!」
だめだ、作る気でいる。そんなこっぱずかしいもの作らなくてもいいのに。
「それに、お前が恋人同士でするものなんだっていうなら恋人同士になってやろうじゃないか!」
ドキッとしてしまう。なぜだろう。このバカに恋なんて絶対にない。......と思いたいが好きである自分もいる。
「き、君みたいなバカとつき、付き合ったら私までバカみたいに思われるからやだよ。」
思いっきり照れ隠しに強めに言ってしまう。
「うぅ、いつもお前は俺をバカだバカだと言って。俺のどこが馬鹿だっていうんだ!」
必死なところが少しかわいく思える
「そういうとこ。」
そっぽを向いていってやる。
「うわああああああん!お前なんて知らない!自信のあるテストが欠点で返ってくればいいんだ!」
「君みたいなバカじゃないから、そんなへまは何百年に一回できるかどうかだよ。」
バカという度気分がいい。
くっそお!と嘆くバカをよそに駅がちかづく。
「あ、駅だ。またお前に言われっぱなしかよ。今度は勝ってやるからな!」
指をさして、宣戦布告してくる。
「それ、君何回目だよ。いい加減私に勝ちなよ。」
駅までは一緒だが二人、逆方向に帰るので一緒なのはここまでだ。
「くやしいいいい!覚えてろよー!」
このバカとはいつまでもこうやってこんなことをやってれそうだ。
あともう少し遊んでやってから告白してやるか。
そんなことを考えながら歩いている私はきっとすごくだらしない顔をしているだろう。
あんなの、頬が緩まないわけない。そのうち溶けてしまいそうだ。
でも告白をしてしまったら、と考えて顔に出てしまう。
うーむむ、どう転んでも、まだまだあいつとバカをやることになりそうだ。
ジリリリリリリリ!!!!!!
そこで目が覚める。ああ、またこの夢か。彼は誰なんだろう。思いは募るばかり。
そして私は今日も彼のいない通学路を歩くのだった。