恋人じゃあるまいし。
「じゃあかえろっか?」リュックサックを背負いながらあいつが言う。
「おう、いこうか。」いつも通りの放課後の帰り道。小学校から腐れ縁のこいつと二人で帰るのがお決まりになっている
「ん。」 「あぁ。」
そうやっていつも手を差し出しあって、手をつなぎあって帰る。学校から家までの少しの間、そうして帰る。いつからか、それが普通になっていた。
「やっとあったかくなってきたね。」なんて話しながら歩いていると疑問がわいた。
「そういえばなんで、手をつないで帰ってるんだっけ?」
そう問いかけるとあいつは、「んー?なんでだっけぇ?」と間延びしたような声で答える。
俺たちは男女で、毎日手を繋いで帰っているが、恋人でも何でもないのだ。なのに、なぜ。
この二年間そうしていたが、ふと気になったんだ。
「んー、入学したての時はしてなかったよねぇ。なんでだったかなぁ?」すこし握る手が強くなるのを感じる。
「俺も思いだせないよ。でも俺たち恋人になった覚えはないよな。お前はいいのか?」俺も少し強く握り返す。
「んー、いいんじゃない?別に好きな人がいるわけでもないしさぁ。」
そんなもんなのか、と思いつつもう一つ聞く。
「学年で俺らが付き合ってるって噂になってるの知ってるか?」もう少し強くする。
「うん、知ってるよ。時々友達にも聞かれるけど一応否定してる。」でも逆にあいつは手が緩んだ。
そんなあいつに少し安心しつつ、そうか。と返す。
「まあ、私は君と付き合うのも悪くないと思うけどねぇ。」また握る手が少し強くなる
「俺もそう思うよ。けど俺たち付き合っても今とそんな変わらなそうだな。」笑って少し力が緩んだ。
そう笑っていると、あいつは、
「そうだねぇ。変わらなそう。」と優しく微笑んだ。握る手の力が緩む。
「まぁ私はしばらくはこのままでいいかな。」「俺もだ、まったく気が合うなお前とは。」
家の前に着いて、手をはなす。
「じゃあ、また明日。」「うん、またねぇ。」
いつも通りに分かれる。今日はなぜか、別れた後の手が寂しく感じた。