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領主を継いだのでお花畑な娘を心配してみた


「お父様。あの使っていない区画、お花畑にしていいですか?」

 オレの妻を名乗っている下女が生んだ長女が聞いてきた。


 こいつが言ってきたのは、この街と西方面の村の間に横たわっている雑草が育ち放題の荒地だ。現在、そこは村と街をつなぐ道が一本通っているだけだ。

 そこはこいつが生まれる前に開拓したが、何故か育ち悪いので、長年放っておいた場所だ。大きな木も生えず、雑草さえも他の場所と比べて背丈の高いものは生えていない。

 当時肥料もまいてみたが、効果は見られず、他の土地で育てた方が手間も掛からず収穫量が高い。苦労に見合わないため、今は手つかずの区画だ。


「どうせ使う予定もないし、好きにして良いぞ」

 といっても、前記の理由でちゃんと育たないだろうけど。まあ、ちょこっと花を植えるくらいなら問題ないだろう。




 連日その娘が出かけ、夕方薄汚れて戻ってくる。ちょっと花の種をまくくらいに偉く手間がかかっている。気になったので、散歩がてら様子を見に行ってみる。


 そこには大勢の農家のオヤジたちがいた。こじんまりした花壇を予想していたオレは完全に裏切られた。道を除いた土地全体が掘り返され、耕されているようだ。

 件の娘を探すと、オヤジたちに混じって野良仕事をしていた。具体的には、掘り返した土に謎の白い粉を撒いている。

「お父様。お手伝いに来てくれたんですか?」


 いや、手伝わない。なぜなら、面倒だからだ!

 だが、こいつ酷い格好だ。服も全身粉で真っ白い。頬にまで粉が付いている。一応、若い娘なんだから身なりを気にしろよ。自分の惨状を認識していなさそうなので、布で拭ってやる。


 っていうか、こいつら何でこんなに集まってるんだ? どっから集めてきたんだ? これって、完全な土木工事規模じゃね? 金は?

「皆様、お手伝いに来てくれました」

 こいつらは、無償で自主的に集まったらしい。・・・オレが集めるときは食い物を要求するくせに、何故だ?

 納得のいく説明を要求する!


 若い娘はアイドルだと~!? 人の娘にデレデレしてるんじゃね~! このエロおやじ共め!

 ところで、何なんだ? この粉は? ヤバいモンじゃないだろうな。


 正体を聞くと、山の中にある洞窟の壁から削り取った粉らしい。わざわざ、そんな所から何のために運んできたんだ?

「夕方に行くと、夕日が洞窟に丁度入り込んで、綺麗なんですよ。今度、お母様と一緒に行ってみたらどうかしら? 感動しますよ」

 絶対、行かない。面倒だから。で、結局何のために撒いてるんだ?

「良く花が育つおまじないです」

 何、この娘。おまじない頼みなのか?

「お花って、話しかけながら真心を込めて世話をすれば必ず答えてくれるんですよ」

 相変わらず、この娘の垂れ流す言葉は能天気だ。

 お花畑はこいつの頭の中だけで充分だろ? あのオヤジ共、この言葉聞いたらさすがに暴動起こさないか?

「・・・ヤバくなったら、逃げてこいよ」

 一応、忠告だけは残して帰る。暴動が起ってもおばちゃんを投入したら・・・あっさり鎮圧しそうなイメージだ。まあ、オレの勝手な思い込みだが。




 それからもオヤジ共と色々やっていたようだ。そして半年後、オレの心配を他所に何故か、ちゃんと育っている。道の両側が緑の絨毯となり、所々に白い星形で真ん中が黄色くなっている花とラッパ状の薄ピンクの花が咲いている。


 どうやって、あの荒地に育つようになったんだ?

「もちろん愛情です! あっ、でも先生にもアドバイスをもらいました」

 あの変態先生のことか。確かに変態だが知識だけは優秀だが・・・ 具体的に何を教わったんだ? 一緒に作業していた農業担当の若いヤツに聞いてみるが、要領を得ない。

 というか、こいつも理解してないんじゃないか。今回は上手くいったからって、こんな能天気な娘に従ってんじゃねぇよ。


「この本も紹介してくれました」

 嬉しそうに懐から本を取り出す。

 それ、めちゃくちゃ高かった本じゃね~か!? 何でお前が持ってるんだ?

「えっ? ちぃちゃんがプレゼントしてくれましたよ?」

 あのガキ~。オレが注文した本と間違って買ったけど、買った先で返品不可だったて言われたヤツだ。屋敷に置いておいたはずなのに。

 研究者が使うレベルの学術書だぞ。機会を見て転売を伺ってたのに・・・

 そんな泥だらけの手で触るなよ。

 あ~、もう手遅れか。もう、いいや。好きに使えや。どうせ、理解できないだろうけど。



 あのメルヘンな頭を改めないと嫁の貰い手もないぞ。まあ、そうなったら仕方ないから、面倒は見てやらん事も無いけどな。


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