領主を継いだので娘の横着ぶりに呆れてみた
「父様、これ食べたい」
下女が生んだ二人目の娘が言った。
寝転がっている彼女の手には空想小説があった。確か、あれはラーメンとかいう食べ物が載っていたはずだ。転がって近づいてきて、そのページを見せてくる。
下から半目で睨んでくる。生意気で横着な奴だ。
「面倒くさい。自分で作れ」
オレも寝転がったまま答える。
そもそも、作り方や材料がが曖昧で無理だ。昔、オレも気になって挑戦してみたが、単なるうどんが出来上がった。麺にかん水ってのを混ぜるらしいが、それ何? その説明が書いていない。娯楽本であって、料理本ではないのだから仕方ない。
「じゃあ、妹に頼んでみる」
また、娘は本に視線を戻す。
こいつの妹って、まだ小さいガキじゃないか。こいつ、鬼だな。お前が作れよ。
こいつの妹は料理を始めて2カ月。呑み込みは良いが、まだまだ危なっかしい。少し前もお菓子作りに挑戦してちょこっとヤケドしてたじゃないか。
・・・またヤケドされたら、面倒だ。
「材料と作り方がわかったら、今度作ってやる」
まあ、そんな日は来ないだろうけどな。
こんな堕落しきった娘じゃ、自分で調べるなんてしないだろう。案の定、諦めてすぐに眠ってしまった。
「父様、お金ちょうだい」
今度は金か? 何て強欲なガキだ。
「働かざる者、食うべからず」
こいつは食っちゃ寝しかしていない。こいつの姉は野良仕事を、妹は下女たちの手伝いを率先してやっているのに、こいつは何だ。毎日オレと一緒にごろごろしているだけだ。
だが、何でこんなに堕落してるんだ?
もう少し小さかった頃は飼っていた犬と散歩に行ったりして運動していたようだが、今は絶対運動不足だろ。子供なんだから外へ行けよ。
まあ、グータラしているオレが言える義理じゃないかもしれないが。いや、こいつらが生まれる前は結構勤勉に働いてたよな。
うん。このグータラは正当な権利だ。偶に料理作りもしてるしな。
「親の悪いところばかり見せているからですよ、坊ちゃん! ということで、これお願いしますね」
おばちゃんに言ったら、部下に任せていた仕事も渡された。何故、オレが怒られたんだ?・・・解せぬ。
水路開発計画の紙だった。
「いや、これってもう部下に任してあるから」
ギロッと擬音が脳内に再生される視線を浴びた。突き返すことは、恐ろしくてできない。
娘はおばちゃんに商店の帳簿計算を押し付けられていた。まあ、あいつは馬鹿ではないし、要領がいいから大丈夫だろう。
けれど最近、品目が増えてるから計算面倒なんだよな。
まあ、頑張ったら金ぐらいは恵んでやるか。