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ある殿上人の話


「あの成り上がりの息子が後を継いだが、何か企んでるに相違ない」

 そう言ってきたのは、ある領地を任されているおっさんだ。まあ、私もおっさんなので人の事云えないけれど。

「しかし、何で私に言ってくるかね。できれば、愚痴は私ではなく、他の人に言ってくれないかね」

 肩をすくめる。


「ふんっ。あの成り上がりは貴殿の元部下だろう。それに、あいつは御上のお気に入りだったからな」

 残念ながら、私の要望は馬耳東風の様だ。延々と彼は愚痴を続ける。

 更に先代の文句まで飛び出す。先祖代々王に仕える者にとって数十年前に仕えるようになったぽっと出は信用できないらしい。だが、元部下だった彼はそれなりの実績を上げていたので王の覚えは悪くなかった。


「私も彼の事をを嫌っていた訳じゃないんだけどね」

 この面倒なおっさんと私は同類と見られていたのか?

「あやつを顎でこき使っていたお主が何を言うか」

 それじゃ、まるで私が傲慢な上役みたいじゃないか。有能な人材に仕事を割り振っていただけじゃないか。


 愚痴を除いて要約すると、件の新任領主は街道を整備して子飼いの部下を育てようとしている。明らかに軍備増強の兆しだ。領主になった途端軍備を増強するとは、怪しいにもほどがある。疾しい事を企んでいるに違いない。


 滅茶苦茶な理由だ。ーー独り合点にもほどがある。開いた口がふさがらない。



「あの新領主、海老が食べたいんだってさ」

 私が街道整備の目的を言うと、おっさんは鼻で笑う。

「はあっ? 何を馬鹿な事を。戯言だ。そんな理由で街道整備を行う者がいるか」

 あそこに居るんだけれど・・・、私の話は信用出来ないのだろうか。


「今後のあそこの軍事行動を警戒する必要がある。進行先は隣り合っている我が領地しかない。が、あそこには治安維持の最低限の数しか駐留させていない。如何にすべきか?」

「だから、何でそれを私に言うのかな?」

 そんなに心配なら、反対側に位置する別の領主と連携をとるようにすれば良いのでは? 万一の場合の保険になるでしょう。

 ちょうど、そこのご令嬢が輿入れ先を探していますよ。貴方のご子息なら年齢的にも家の釣り合い的にも問題ないでしょう。

「なるほど。検討の価値はあるだろう」


 一応、満足したのか。おっさんは帰っていた。もしかして、ただ愚痴が言いたかっただけか?



 全く、ああ云う手合いは放っておけば無害なんだけれどなぁ。下手に突っつくと逆に怪我するんだから、無視しておけば良いのに。


 ふと、机の文箱を整理していると、ある侍女殿から「坊ちゃんに無駄遣いさせないでください」って何故か抗議の手紙が来てるし。

 何故、私言ってくるのだろう? 騙して売りつけた訳でもないのに。・・・理不尽だ。


 美味い物でも食べて、気分を変えよう。

 海鮮チャーハンにするつもりだったけれど、他の具があっても、海老がないと寂しいな。せっかく仕入れたのに自分で食べようと思っていた分も含めて全部買われてしまったしなぁ。

 チャーシューで焼き豚チャーハンでも作るかな。


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