領主を継いだのでエビを購入してみた
しばらく経ったある日、地元とは別の商人が売り込みに来た。
なんと!? 生きたままのエビを持ってきたらしい。ちゃちな川エビではなく海で育ったでかいヤツだ。
「こちらの宿屋の方に領主様がエビを求めていると聞きましたが、如何でしょう?」
ーー宿屋の親父よ、ありがとう。
けど、オレが良く知ってたな。・・・い~や、細かいことはいい。早速モノを見せてくれ。
「こちらになります」
そいつは木箱を持ってきた。
あれ? 生簀は?
その商人の勧めるまま木箱を開ける。中にはおがくずが入っていたが、それを除けると、その中からエビが現れる。突っつくと、尻尾を跳ねさせる。
すげ~、ちゃんと本当に生きてる。水の中じゃなくっていいのか? 何でだ?
「ウチは特別な運送方法をしていますので」
何か秘密の方法でもあるのだろう。
ひゃっほ~っ! エビだぜ。すぐさま料理してやるぜ。何が良いかなぁ。
しかし、次の一言がオレの喜びに水を差した。
「僭越ながら、生は止めておいた方が良いですよ。火を通しておいた方が良いかと」
「な・ん・だ・と~!? じゃあ、踊り食いは? 刺身は?」
「やめた方が無難かと。まあ、食中毒になるのを気にしなければ別ですが」
気にするに、決まってるだろう。
「では、お買い上げになりませんか?」
木箱を下げようとする。
「いやっ、買わないとは言っていないだろ」
結構高かったが、もちろん全部買ってやった。まあ、別の商人が提示した額に比べれば断然安い。
「ときに、貴家で以前所有している宝石類を手放したとか。宝石をお持ちではありませんか。まだお持ちなら、高く買い取らせていただきますが?」
「ちなみにどのくらいの値段で買い取るんだ?」
「・・・そうですね。物にもよりますが、このようなデザインの宝石をお持ちならこの位で買い取ります」
くそっ、王都で全部売ってしまった。こいつに売った方が儲かったのに。
後悔しても、もう手放した後だからやむをえない。仕方ないから、焼いて、煮て、炒めて・・・エビをガッツリ馬鹿食いしてやったぜ。