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領主を継いだので肉食系男子を目指してみた


 もう、海産物はダメだ。ならば肉だ! 漢なら肉だよな。時代は肉食系男子だぜ。


 だが、この地方では肉食は主流ではない。肉の主な入手先は狩人が森に入って捕ってきたイノシシやウサギだ。とても領民の胃袋を満たす量は確保できない。

 牛も育てているけれど、それほどの数は育てていない。育てている目的は酪農、つまり牛の乳のためだ。

 何故数が少ないかというと、冬になる前に繁殖に最低限必要な分を残してしめてしまうからだ。冬場は人間の食料でさえ不足するのだから、家畜に食わせる分は少なければ少ないほど良い。また、しめた家畜は冬の備蓄食料にもなる。

 そんな理由で一定以上は増えない。ほかの地方では食用の豚や鶏などを生産しているらしいけどな。


 この領地でも、やってみるか? 何が必要だろう・・・

 まず、土地の確保だろ。最初はどこから子豚や鶏の雛を仕入れる必要がある。餌はどうするか? 冬に食わせるために増産もしなければならない。


 すっげ~、手間がかかるんじゃね? もう、街道整備でこりた。もう、肉だけ他から買おう。その方が楽だ。麦とか野菜とかなら数ヶ月で食えるようになるのに面倒くさ過ぎる。



 想像したら、食いたくなってきた。思い立ったら実行だ。

 豪勢に生きた豚を一匹丸ごと買い付けてやった。丸ごとでもエビよりはるかに安かった。

 豚を持ってきた業者に血抜きしてもらって、新鮮な豚を厨房の梁に吊るす。

 すげ~迫力だ。めちゃめちゃ食いでがありそうだ。

 自分たちより大きな豚にガキどもが慄く。

 お前ら、ビビってんじゃねえ。っていうか、解体ってどうやるんだ? 今まで解体された肉塊しか買ったことないから、分からん。


「何やってるんですか、坊ちゃん。丸ごと一匹なんて無駄遣いして」

 おばちゃんがガキどもが騒いでいるのに気ついて顔を出す。

 無駄遣いが怒られそうだから、コッソリ仕入れたのにばれてしまった。案の定、怒られた。良いじゃん。金はあるんだから。

「買ったのに、皮のはぎ方が分からない? じゃあ、どうするつもりだったんですか?」

 そこまで考えていなかった。豚を持ってきた業者はもう帰ったし、呼び戻すか?

「アタシがやりますよ」

 呆れ顔のおばちゃんに皮をはいでもらう。さっきまでビビッていたくせに、ガキの一人が豚の顔をお面にしてコロコロと笑っている。騒がしいガキだな。


 そんなガキをよそに、肉をそぎ落として新鮮な肉を焼いてみる。

 あれっ? 思ったよりも、結構固くね? 新鮮だから柔らかくてジューシーな肉が食えると思ったのに。

 期待外れだったから、お前らにも食わせてやるぜ。ガキどもに焼肉を振る舞ってやる。

 しかし、こいつらタダだからって、遠慮なくバクバク食いやがるな。その中で、ひとりのガキが口に合わなかったのか、残している。贅沢すんな。拾ってやる前は食うに困ってたくせに。

「好き嫌いするんじゃない! 栄養バランスも考えてるんだから、ちゃんと残さず食え。でっかくなれないだろ」

 うわっ、こいつ睨んできやがった。いいから食いやがれ! 生意気なガキだ。こんな食い物をくれてやっただけじゃ、洗脳が足りないのか? 甘いモノが食いたいのか? 今すぐにはどうにもならん。今度用意してやるから、これで我慢しやがれ! あっ、ちゃんと野菜も食えよ。

 くそ~、健康に育ったら、こき使ってやるんだからな。全く。


 といっても、豚一匹は流石にデカい。連日肉料理が続いても一日二日では食いきれなかった。あまり置いておくと腐っちゃうから、今日あたり塩漬けでも作ってみるかな。どうすりゃ良いか、色々な部位をちょっとずつ食べ比べしてみる。

 あれっ? 初日より美味い気がする。気のせいか?

 今日も肉料理を作り、ガキにも訊いてみる。

「え~と、領主様の作るものは何でもおいしいです」

 聞いたオレが馬鹿だった。こんなガキに味の違いが判る訳ないよな。

 もしかして、新鮮なものよりちょっと置いた方が熟成されるのか?


「坊ちゃん、意地汚いことしなさんな」

 焼いた骨付き肉を食べ終わった後もしゃぶっていると、おばちゃんに注意される。

 いやっ、結構味わいがあって悪くないよ。

 あれっ? もしかして、骨を煮込んだら、美味いスープが出来るんじゃね?

 今までは骨は捨てて、スープにコクや旨みを出すときは肉を煮ることによって抽出していた。そう云えば、魚も身だけより丸ごと煮た方が美味い気がする。

 --試してみるか。


「領主様、お金なくなっちゃったんですか?」

 骨を煮込んでいると先日甘いモノをねだったガキの一人が心配そうに声を掛けてくるが、勘違いだ。余計なお世話だ。

 お前らは貧乏人だったのに骨に食らいついたことないのか?うるさい。お菓子はまた今度だ。自分の食いたいモノじゃないからって、骨くらいでガタガタ言うな。

 しかし、連続で肉は飽きた。しばらく、肉はいいや。仕方ないから、お菓子でも作ってやるか。

「はぁ~、エビが食いたい」

 やっぱり、食べられないモノって余計食いたくなくなるよな。



「領主様~。えびとってきました!」

 後日、ガキが川遊びをしたついでに小さなエビを捕ってきた。

 オレが食いたいのは川エビとは違うんだよ。まあ、せっかくだし食べるけどな。


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