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領主を継いだので下女に命令してみた


「よっしゃー!! 仕事もないなんてラッキーだ。好き放題してやるぜ」

 

 権力を握ったオレは無敵だ!(領地内限定で)

 拳を振り上げ、ダンスだって踊っちゃうぜ!

 テンションMAXで高級店の給仕のように家令の妻である飯炊きおばちゃんをベルで呼び・・・たかったが、無いものは仕方ない。

 今回は大声で呼ぶことで妥協する。


 くっ。 宴会に続いてやることが出来てしまった。豪華な呼び出しベルが必須だ。

 心のメモに深く刻み込む。


「おばちゃん! 早速、宴会の準備だ。領主就任祝いに宴会やるぞ! 料理の準備を一任する。頼むぜ!」

 キラーンと(妄想の中で)歯を光らせ、サムアップする。


 豪華にいくぜ! 豪華に! 何が良いかなぁ~。夢は膨らむ。


 だが、おばちゃんはオレを冷ややかな目で見る。

「ぼっちゃん。バカなこと言ってないで旦那様の遺品整理でもしたらどうですか?」


  あれ? オレって領主だよね? 一番偉いんだよね?


「・・・なら、せめてベルをお願いします」


 言葉を発してから驚く。我ながら、何故丁寧語が出てしまったんだ? いつもはもっと対等な口調 ・・・あれ? 良く考えたらそれも不味いんじゃね? オレ、一応貴族だよ。おばちゃん平民。可笑しくね?

 いや、今のは心がちょっとだけ、沈んだだけだ。

 ふっ、さすがにオレも人の子か。親父の死んだショックが時間差で現れやがったぜ。

 この丁寧語もへりくだったのではない。新領主からの慈悲だ。 


「・・・ベル?」

 え? ベルで分からないの?

「音が鳴る鈴。使用人を呼ぶのに使うような奴」

 もう丁寧語なんて言わないぜ。

「・・・ヘンなものを欲しがりますね」

 首をかしげながら出ていく。ふう、危ない危ない。


 最初の権力を使ってやったぜ。心のメモは無駄にならずに済んだ。





 数刻後、打ちひしがれたオレの手には赤ちゃんのガラガラが握られていた。

 ・・・確かに鈴は付いてるけど、違うんだよ!

 力ない腕で振ってみると、無駄に高く澄んだ音色が心の奥深く、それは深くに染み渡る。


 廊下で夫に愚痴る声がむなしい。

「坊ちゃんも領主になって結婚を真剣に考え始めたのかねぇ。お嫁さんの良くない噂も聞くし、アタシ心配だよ」

 きっとおばちゃんは親父の代が終わったのに気付いていないだけなんだ。あの脳筋の亡霊にきっと、きっと怯えているだけなんだよな。



 くっ、何と云う事だ!! 親父の言葉で一つだけ共感したものを思い出してしまった。


『戦は補給線を制した者が勝つ!』


「もっとも、ワシにかかれば補給なんぞ滞っても根性で何とかなるのもんだがな。ふははははは」と続いたが。



 おばちゃんという補給第一級の戦力を失ってしまった。


 だが、こんな事ではくじけない。自力で準備してやろう。


 自慢ではないが、オレは料理ができる! それもかなりの腕前。領主の息子に生まれなければ料理人を目指していたかもしれない。好きこそものの上手なれってやつだ。


 やはり、領主たる者、先頭に立って権威を見せつけなければ!

 他人に頼ったのがそもそもの間違いだ。

 新領主の手腕を見せてやるぜ!!


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