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妻たちのお料理教室(サクラサクVer?)


職人妻「さて、天気予報でも桜の開花予想が発表されて、すっかり春めいてきた今日この頃。恒例のお料理教室を開催するわよ!」


兵士妻「いつの間に恒例になったのかしら?」


領主妻「まあ、良いんじゃないですか? 実は、今日はこのために娘からお菓子レシピを預かってきました」


兵士妻「いいわね~。わたしの所は息子だけしかいないから、娘と一緒にお料理って憧れるわ。息子ってば夫に似てやんちゃだから困っちゃうわ」


職人妻「貴方は領主様の屋敷に手伝いに行ったときに人様の娘さんと一緒に料理しているじゃない。それで我慢しておきなさいな」


兵士妻「え~、娘と一緒って憧れないの? あなたの娘ももう少し大きくなったらお手伝いで、一緒に台所に立つんでしょ」


兵士妻「料理はお店でやるだけで、もうお腹一杯。近頃は家で料理するのも億劫になっているから、彼も子供たちを連れてお店で食べさせてるわ」


領主妻「・・・夢のない話ですね。でも、それって少しさみしくないかしら?」


兵士妻「奥さまのところは家族仲が良いですものね。領主様も料理するし、今でも夫婦で料理してるんでしょ」


領主妻「ま、毎日じゃないですよ。旦那様も忙しいですし。でも、一緒に料理する時はこっちを気遣ってくれるし楽しいです。いえ、その他の時が優しくないというんじゃなくて、何時も優しいですけれど・・・」


職人妻「・・・惚気ね」


兵士妻「・・・惚気ね」


領主妻「そ、そんなんじゃないです!

    脱線したけれど、ほら、今日はお料理教室ですよ! さあ、今日のテーマは桜の開花にちなんで『桜餅』です」


職人妻「露骨にそらしたわね」


兵士妻「まあ、乗ってあげましょうよ。このままダラダラしていると確かに終わらなそうだし」


領主妻「そうです。その通りです。では、お料理を始めます。

    まずは塩漬けした桜の葉っぱを水を張った桶に入れて塩抜きしておきます。30分くらいで良いでしょうか? その後水気を切っておきます」


職人妻「桜餅って云うくらいだから、桜の葉っぱを使うのね」


領主妻「そうですね。次に黒豆を煮ます。黒豆自体は今回使いません。使うのは煮汁です」


兵士妻「煮汁って、この黒っぽい液体?」


領主妻「そうです。これにちょっとだけ、お酢を垂らすと・・・」


職人妻「すごい!? 液体がピンク色になった。これ、彼に見せたら喜びそうね」


兵士妻「何なの? この化学反応?」


領主妻「え~と、黒豆に含まれる『アントシアニン』が酸性に反応して赤くなるそうです」


職人妻「へ~、メモ見せて。何々。ただの色づけに使うだけだから、食紅等を使えばこの工程不要?」


兵士妻「でも、これってビックリするから一見の価値ない?」


領主妻「そうですね。こういうのを挟むと料理が楽しくなりますよね。

    では、このピンク色の水に砂糖、道明寺粉を混ぜて20分くらい放っておき、水を吸わせます。その後、火にかけ、沸騰させます。軽くかき混ぜてなじんだら、火を止め蒸らします。この出点ではまだ水気が残っていますが、蒸らしている間に水分を吸って餅っぽくなります」


職人妻「ちょっと待って? さらっと『道明寺粉』っていってるけど、何それ?」


兵士妻「わたしも聞いたことないですね。小さい白い粒々?」


領主妻「御免なさい。え~と、もち米?が原料らしいです。それ以上は私もメモに書いてあることしか分かりません」


職人妻「謝る事ないわよ。次行きましょう、次」


兵士妻「そうですよ、奥さま」


領主妻「ありがとうございます。では続きです

    あんこを用意して、指先くらいの大きさに丸めます。それを蒸らし終わった餅で包みます。さらにこれに最初に用意した桜の葉っぱを巻けば出来上がりです」


職人妻「今回は簡単に出来たわね」


兵士妻「前の大変さが異常だったんですよ。どこかの異世界みたいなスーパーで材料が用意できればそんなに難しいことはないですね」


領主妻「じゃあ、早速試食しましょう」


職人妻「・・・」


兵士妻「・・・」


領主妻「どうかしましたか?」


職人妻「この桜の葉っぱって食べなきゃいけないのかしら?」


領主妻「一緒に食べるものですけど、好き好きですから剥がして食べても問題ないです」


兵士妻「ごめんなさい。わたしも葉っぱがない方が好みですね」


職人妻「葉っぱない方が、美味しいけれど。この葉っぱないと桜成分がなくなって、単なる色付きのあんこ餅ね」




 何故か、その光景を覗いていた兵士がコッソリ涙を流しました。



 この物語はフィクションです。実在するする調理法とは一切関係ありません。


 今回は然したる苦労もなく、終わりました。事前に下拵えした材料がそろっていたので当然と言えば、当然ですけれど。


 身分的には上のはずの領主妻が一番下っ端っぽい喋り方ですね。まあ、性格的なものだから仕方ないです。


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