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ある情熱に燃えた先生の話


 この地の領主は小さい子を集めてハーレム・・・ コホンッ、養育しているそうです。まったく、羨まし・・・コホンッ、感心な話ですね。

 そんなことを聞いては子供の教育に生涯を捧げると決心したワタクシが行かなくて、どうする?という話です。


 幸いと言って良いのか分かりませんが、ちょうど仕事を辞めてきたところです。

 こんなに優秀で子供を愛するワタクシを手放すなんて、あの貴族様は惜しい事をしたものです。令嬢は泣いて別れを惜しんでいましたが、仕方ありません。多くの子供たちがワタクシを待っているのですから。



 残念ながら、話に聞いていた養育中の子供はいませんでした。ここの領主様の娘以外には成長した元子供(対象外)しかいませんでした。


 落胆ばかりしていられません。まずは娘たちにご挨拶(品定め)です。

 長女は天然おっとり系の可愛らしい娘です。例えるなら野に咲くタンポポです。

 次女はクールな不思議ちゃんでしょうか。まるで気ままな子猫です。

 末っ子はまだヨチヨチ歩きですが、ぷっくりとした赤いほっぺがキュートです。この娘はどんな萌え娘へ成長するのでしょうか。


 この娘たちの母親が性格の矯正を言ってきますが、何を考えているのでしょう。こんな素晴らしい属性を捨てるなんてとんでもない。母親ならば、在るがままの属性を享受しなくてどうするのでしょうか。


 続いて領主様にもご挨拶です。

 前の仕事を辞めた経緯も聞いてきますが、恥じることは一切ありませんので、胸を張って答えます。

 すると、この領主様はあろうことか同性の幼女趣味疑惑を投げかけます。

「失礼な! ワタクシはロリコンではありません」

 この勘違い男は何を言っているのでしょうか。

「性的嗜好や恋愛感情は一切持っていません。純粋な愛です!! あっ、男の子もイケます!」

 尊くも至高の存在である幼子への想いをあのような変態嗜好と一緒にされては困ります。下劣な感情は一切合財ありません。


「あ~~、何というか。・・・実は、領民のガキ共に初歩的な教育を施す計画があるんだ。それを、まずお前に任せたいのだが、如何だろうか」

 ワタクシの説明に感銘を受けたのか、三姉妹だけでなく領地の子供たちも任せようとしてきます。こんな短時間で、彼を籠絡してしまった己の手際が恐ろしいです。しかし、残念ながらアナタは対象外です。


 助手までつけてくれる信頼の入れようですけれど、屋敷の人間(年増ばかり)では役に立つか微妙です。

 が、一人だけ童顔の男の子がいました。ぎりぎりイケる許容範囲です。

 まあ、多くを望むのは酷です。ここで妥協しておきましょう。


 彼と教育計画を立て、子供に囲まれたウハウハ生活の始まりです。ーーそう思っていました。でも・・・


「くっ、何故!? 子供が集まらないの・・・」

 これではここに来た甲斐がない。いえ、少数ながらも可愛い子たちに接するのがから嫌だという訳ではないのだけれど、もっと多くの子供たちに囲まれるはずだったのに。

「・・・どうしてこうなったのかしら? 見通しが甘かったわ」

 うなだれてしまう。


 けれども、よくよく考えれば、王都で家庭教師をしていた時は一人が対象だったのだから初日は単純計算で5倍の子供がワタクシのために集まったのです。ポジティブに考えましょう。

 次回は濃密なスキンシップを心がけましょう。



 子供を教育する際は、甘やかして可愛がり倒します。そして、褒めてやる気を出させて長所を伸ばします。厳しくしたり、欠点を直すのはもう少し先で充分です。幼いうちは可愛いだけで全てが許されます。

 眠たげだったり、飽きて地面にお絵かきを始めてしまった子もいますが、それも個性です。

 厳しくして嫌われるのが怖いわけではありません。教育方針です。


 子供の可愛さに貴賤はないと云っても、ワタクシも人の子。やはり好ましい子には優しくしてしまいます。

 領主様の長女である天然ちゃんが可愛らしいです。作りモノでは出せない煌めきがあります。

 目を丸くするのが可愛い。頭を撫でて、ぎゅっと抱きしめ、合間に調子に乗って色々な事を教えます。


 しかし邪魔しに来た領主様は信じられない暴言を吐きます。

「こいつのアホっぽ・・・ いや、ぼんやりしてるのを矯正してほしいとこいつらの母親がお願いしているはずだが、イケるか?」

「それはこの娘の萌え属性です。それを捨てるなんてとんでもない!」

 全く、母親と同じ愚行を犯すなんて・・・ 父親ならば、在るがままの属性を享受しなくてどうするのでしょうか。


 しかし、先程までちやほやしてくれていた天使たちがソイツの元へ集まります。

 この領主様、お菓子で手懐けるなんて姑息な手段を使います。恥ずべき事です。自らの魅力のみで勝負しなくてどうするのでしょう。



 童顔助手が子供たちを集める為にその姑息な手段を提案してきます。やっぱり、顔だけで大人な人間は駄目ですね。薄汚れています。

 けれども、背に腹は代えられません。子供への教育への使命とワタクシのプライドではやはり、教育を取ざるを得ません。

 高尚な目標のためには泥水をかぶる覚悟も必要なのでしょう。


 早速、領主様へ予算をもぎ取らねばなりません。

 領主様に如何にワタクシの子供への愛の深いかを説き、教育への重要性をついでに話します。

「・・・好きにやってくれ」

 領主様は感銘を受けると、涙をこらえるようにうつむき、予算を承認します。



 どこへ行っても、子供に囲まれます。ここは桃源郷か、天国か。ここに骨をうずめる覚悟が出来ました。

 料理を担当する童顔助手もちやほやされていますが、一時的なものでしょう。いい気になるのは今のうちだけです。

 暫く接していれば、ワタクシの素晴らしさが分かり、ハーレムを形成・・・ コホンッ、懐かれるはずです。


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