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領主を継いだので娘の教育に愕然としてみた


「旦那様。お願いがあるのですが・・・」

 そう言ったのはオレの妻を名乗っている下女だ。こいつがお願いしてくるなんて珍しいな。

「言ってみろ」

 鷹揚な心で促すと、おずおずと言葉を続ける。

「娘に家庭教師をつけて頂けないでしょうか。長女の性格が・・・ぼんやりしているので、ちょっと将来が心配なのです」

「一番目の娘はアホっぽいな」

 こいつはアホっぽい娘を含め3人の娘を産んでいる。二番目の娘もぼ~としていてヤバそうだ。三番目の娘はまだ小さいから判らんが、この分だと怪しそうだ。

 そいつらが将来騙されたりしたら、オレにまで被害が及ぶかもしれないな。そう考えると、必要だな。

 しかし、教育係をつけるのは構わないが、おばちゃんで充分だろ。

「メイド長にお願いしたのですが、それなら夫に手配させる、と」

 既に手配済みじゃ、お願いじゃないじゃん! さっき会ったけど、おばちゃん、オレに何も言っていなかったぞ?

 けど、言葉にはださない。

 決して、おばちゃんを恐れている訳ではない。男はそんな些細なことは気にしないのだ。

「好きにすればいいんじゃないかな・・・」

 鷹揚な心で聞き流すのが懐の深い男というものだ。



 やってきたのは『出来る女』って感じの女性だった。

 この女を手配した家令からの手紙を読む。


 彼女は教養もあり、上級貴族でも太刀打ちできない充分な知識もあるが、一方で問題児でもあるらしい。

 ある貴族の家庭教師をしてたのだが、問題を起こして辞めさせられたらしい。しかし、ここまで出向してくれる家庭教師たる人材が彼女しかいなかったそうだ。

 ・・・何でもこの女は変態で、教え子にどえらい事をしでかしたそうだ。手紙には細かいことは書いていない。

 見た目普通の女の人だけれど、大丈夫か?


「その・・・何というか、前の職場を何で辞めたんだ? 一体、何があったのか聞いても良いのか?」

「ええ、恥じることは一切ありませんので」

 彼女は胸を張って答える。

「家庭教師先のご令嬢を四六時中可愛がり過ぎたのが、先方の方針に合わなかったらしくて・・・」

 何だ、手紙には大げさに書いてあるだけか?

「浴槽でご令嬢の全身をマッサージしてあげたのに、追い出されてしました。ご令嬢自身は泣いて喜びましたのに・・・」


 えっ、ちょっと待て! こいつ同性の、さらに幼女趣味なのか!?

「失礼な! ワタクシはロリコンではありません」

 この女は胸を張って答える。

「性的嗜好や恋愛感情は一切持っていません。純粋な愛です!! あっ、男の子もイケます!」

 ますますヤバい。こいつに任せて大丈夫なのか?

「あ~~、何というか。・・・実は、領民のガキ共に初歩的な教育を施す計画があるんだ。それを、まずお前に任せたいのだが、如何だろうか」

 まず、どんな事をするのか、領民を実験台にお手並みを見てみよう。上手くいけば、被害も分散する可能性もある。

「お前一人では大変だろう。助手をつけるので、今後はそいつと協議して進めてくれ。屋敷にる奴なら、誰でも好きに使ってくれ」


 ーーさて、誰がイケニエに選ばれるのか。


 選ばれたのは屋敷で一番童顔の男だった。さもありなん。

 ちょっとの罪悪感で様子をうかがう。そいつは何か悩んでいるようだ。

 やはり、セクハラされているのだろうか。

 聞いてみると、ガキが思う様に集まらないらしい。そういや、この間娘を連れて何かやっていたな。まだ、セクハラは受けていないのか。

「無理に集める必要ないんじゃないか?」

 前回、どんな事をやったのか知らないが、まだ様子見の段階なのか?

「ふ~ん。じゃあ、一度見に行ってみるかな」



 あくる日、その現場を視察する。街の広場に木箱を並べて机とイスにしている。天気が悪い時は領主2号店の倉庫を使う予定だそうだ。

「お父様~」

 オレを見つけた一番目の娘が抱きついてくる。が、ほっぺをつねる。

「勉強を教わっている最中じゃないないのか?」

「可愛いので問題ありません」

 娘ではなく、女が全く怒った様子もなく、そう言う。

 二番目の娘は寝ているし、三番目の娘は地面に落書きしてるぞ。もう二人ほどガキがいたが、そいつらはこっちをちら見しながらもちゃんと文字の書き取りをしているようだ。

 別の意味でも、大丈夫か?

「こいつのアホっぽ・・・ いや、ぼんやりしてるのを矯正してほしいとこいつらの母親がお願いしているはずだが、イケるか?」

「それはこの娘の萌え属性です。それを捨てるなんてとんでもない!」

 えっ? 如何いう意味?

「父様、お菓子」

 いつの間にか起きた二番目の娘が持ってきたお菓子を強請る。

 こいつら、自由だな。女を見る。

「これもこの娘の萌え属性です。それを捨てるなんてとんでもない!」

 何でオレが怒られるの? こいつ、バカなの!?


「おい、こいつ変じゃないか?」

「優しくて、良い先生ですよ? 色々な事も教えてくれますし、凄いです。

 お父様、なんで雨がふるのか知っていますか?」

 はぁ? そりゃ、そういうもんだろ。雲から落ちてくるのに理由なんか・・・あるのか? 考えたことないぞ。

 そう云えば、この娘は雲を見て空に綿が浮かんでるみたいなんて言ってたな。いくらアホ相手でも、流石に子供の夢を壊す説明は不味いのか?

 ・・・何か童話っぽい説明でもして、お茶を濁しておくか。


「えへへっ。え~とですね。・・・・・」

 言いよどんでいると、娘が嬉しそうに話し始める。

 メルヘンな子供だましの説明かと思いきや、何だ? この論理な説明は? 子供が理解するモンじゃないだろ? 学者にでもする気か?


 変態でも、一応優秀ということなのだろうか? いや、変態だから子供に夢のない話をするのか。



 大変な偉い先生→変態などえらい先生


 声に出すと、語感が似てませんか?


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