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男たちのお料理教室(ホワイトデーVer?)


兵士「今回はホワイトデースペシャルということで、お料理教室を実施するっスよ!!」


領主「・・・」


兵士「何でそんな面倒くさそうな顔をしてるっスか?」


領主「・・・実際面倒だからだ」


兵士「えぇ~!? 領主様って料理が趣味だからこういう企画は嬉々としてやるんじゃないっスか?」


領主「馬鹿なこと言うな。オレが好きなのは美味い物を食う事だ。料理はその手段にすぎない」


兵士「??? どういうことっスか?」


領主「美味い物が食えるなら、自分が作る必要はないって事だ。単純に新しい美食料理を作ってくれる人材が周りにいなかっただけだ。わざわざ遠方へ食いに行くのも面倒だしな」


兵士「まあ、その辺はいいっス。さあ、タイトルの通り、ホワイトデーのお返しに作るお菓子を考えるっス!」


領主「だから面倒だって。そもそも、何で貰ってないのに返さなきゃならないんだ? 自分が食べるんでもないのに作る必要ないだろ?」


兵士「そう云えば、良く考えると・・・俺はバレンタインの時はマイハニーから軽蔑の視線しかもらっていないっス!? お前はどうっスか?」


職人「チョコは貰っていない」


領主「って、いたのかよ!? 木工職人」


兵士「俺が引っ張ってきたっスよ。今回は男同世代3人組で進行するっスよ。でも、喋らないといてもいなくても分からないっス。ちゃんと主張するっスよ!」


職人「・・・」


兵士「三点リーダで主張すればいいってモンじゃないっス。というか、領主様! コイツ、『チョコは貰っていない』って、きっと別のモノ貰ったっスよ!!」


領主「もう、心底どうでも良い。帰っていいか?」


兵士「ダメっス! 俺たちだけじゃお菓子なんてできないっス!」


職人「難しい物でなければ、普通に出来るぞ?」


領主「なら、2人でやってくれ」


兵士「待ってほしいっス!! というか、何でこういう時だけ主張してくるっスか?」


職人「仮にも職人を名乗っているんだから、作れないと思われるのは心外だ」


兵士「何スか? そのこだわりは。

   ああっ、領主様。帰らないで欲しいっス。話が全く進まないっスよ」


領主「・・・抱きつくな。いい大人が泣くな。居てやるから離れろ。ウザい」


兵士「うぅ。バレンタインのお返しのお菓子は何が良いと思うっスか?」


領主「はぁ~。マシュマロとか、クッキーとかキャンディが定番じゃないのか?」


兵士「マシュマロって、貴方が嫌いって意味じゃなかったっスか?」


領主「純白な愛(マシュマロ)で包むから好きって意味じゃなかったか?」


職人「年代や地方でクッキーやキャンディも意味が違うらしいぞ?」


兵士「どうするっスか!?」


領主「じゃあ、別の物で良いだろ。 ・・・なら、キャンディっぽい物で、金平糖で良いじゃないか?」


兵士「中々面白いアイデアっス。なら、それで行くっス」


職人「・・・決まったし、解散だな」


領主「そうだな」


兵士「いや! 待つっス! 何も作っていないっス!?」


領主「前のバレンタイン時みたいにコンビニで買ってこいよ」


兵士「定番商品じゃないからコンビニに売っていないっスよ。それより『お料理教室』なんだから自力で作らなきゃならないっスよ!」


領主「・・・面倒だな。じゃあ、これ作れるか?」


職人「ふむ。・・・ほう、このこの回転する釜は銅鑼というのか。温度を一定に保つためにサーモスタットが必要か? 釜の回転数いくつだ?」


領主「1分間に2回転を目指してくれ」


兵士「ちょっと待つっス。何で機械化前提なんスか!? 世界観無視っスか!?」


領主「だって、手作業だと大変だぞ」


職人「さっきから、ずっと叫んでいるが、大丈夫か?」


兵士「叫ばせているのは領主様たちの所為っス! 手作業が大変なら、俺がやるっスから、機械化はやめて欲しいっス」


領主「作り方は教えてもいいが、オレは手伝わないぞ」


職人「・・・(ぷいっ)


兵士「・・・俺が全部やるっスよ。だから教えて欲しいっス」


領主「ほぉ~。いい覚悟だ。その言葉忘れるなよ。

   材料はケシの実かザラメ。砂糖に好きな果実の汁だ」


職人「ケシの実って、麻薬の一種じゃなかったか?」


兵士「えぇ~!? そうなんスか? それって、薬の力で彼女をメロメロにするつもりっスか」


領主「そんな訳あるか! ケシでも、種類が違う。ここで使うのはアンパンに乗っているツブツブと同じものだ」


兵士「あれって、ゴマじゃなかったっスか。初めて知ったっス」


職人「どっちにしろ、この世界にあるのか? アンパンが」


領主「分かりやすい様に例えただけだ。じゃあ、手順を説明するぞ。

   まずは、濃い砂糖水を作る。水と糖を1:1くらいだな。当然溶けないので温める。焦げ付かないようにして溶かすと蜜っぽくなるので、そのまま70℃くらいに保って置くといいだろう」


領主「底の丸くて浅い鍋(中華鍋)を弱火で熱する。可能なら80℃くらいを目安だ。そこにケシの実かザラメを投入する。今回はケシの実をどばっと投入して熱する。鍋を振りつつ、そこへさっき作った蜜を小さじ1杯かける。

   鍋を振る手を止めずに、菜箸か竹串を4~5本束ねたものでかき混ぜる。火加減が難しいので、一度鍋を火からおろしてからやっても良い。ケシの実同士がくっつかないように手を止めないこと。

   少し冷えてくるとケシの実に蜜が絡まって表面が薄く気持ち白っぽく結晶化する。粘りけばまだあるようならもうちょっと温めてかき混ぜる。」


兵士「出来たっスよ。この後どうするっスか?」


領主「また砂糖蜜をかけてかき混ぜる。これをずっと繰り返すだけだ。爪の大きさ位になるまでな。砂糖水の蜜に果物の汁(ジュース)を混ぜると色と風味が付く」


兵士「全く大きくなっていないっスけど、どれ位繰り返せば良いっスか?」


領主「時間にして二週間くらい繰り返す」


兵士「・・・えっ? ・・・マジっスか」


領主「ぶっ続けじゃなく、休憩を挟んでやればそんなもんだろう」


兵士「この作業、10分もやれば腕がプルプルしそうなんスけど。・・・ちらっ」


職人「お前が全部やるんだろ? 自分の言葉には責任をもって頑張れ」


兵士「どこかの異世界の日本と云う国の和菓子職人はなんでこんな大変なお菓子を考えたっスか!?」


領主「金平糖はどこかの異世界のポルトガルから伝来したらしいぞ。和菓子職人が考えたんじゃなくて良かったな」


兵士「・・・全然なぐさめになっていないっス」




 あるやつれた男は頑張って不揃いな金平糖を作り、妻への贈り物としました。

 ある手先の器用な男は自分で小物を作り、妻への贈り物としました。

 ある太った男は逆に娘からお菓子を贈られました。


 おしまい



 この物語はフィクションです。実在するする調理法とは一切関係ありません。


 よし! これで真似する人はいないでしょう。安易に真似すると痛い目を見ます。

 あれ? この書き出し、前に書いたような?


 今回はホワイトデーと云うテーマですが、ひな祭りも近いので和のテイストも鑑みて金平糖を題材にしてみました。ご家庭で作るのは余程の精神力と体力が必要です。

 現在は一部機械化もされているとはいえ、職人の方は恐ろしい根気強さですね。

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