ある領主令嬢の話
お父様は巷では賢君・名君と呼ばれていますが、それを誇る事も無い優しい人です。最近は仕事を周りに任せ、メイドの方たちと色々な創作料理を考えています。
お母様も領主夫人として威張ることなく皆と一緒に楽しそうに屋敷を取り仕切っています。
お父様とお母様はいつまでも仲睦まじく、理想の夫婦です。
おばあ様は「アタシは死ぬまで現役だよ」と言っていますが、腰を悪くして最近元気がありません。・・・少し心配です。
おじい様は昔王都で働いていたそうですが、引退してこちらで私塾の先生をしています。
屋敷には多くのお兄様お姉さまがおり、お父様のお手伝いをしてくれます。
屋敷の外を歩くと街の皆さまが挨拶してくれます。
皆、わたしと妹たちを分け隔てなく、愛情を注いてくれます。
明るいこの地が私は大好きです。
隣の領地から視察に訪れていた方と結婚し、家族が増えました。彼は最初はこのアットホームな雰囲気に戸惑っていましたが、今では「こっちの方が楽だ」と笑っています。
近頃はおじい様の代わりに王都とこちらを往復する日々を送り頑張ってくれています。
貴方達の娘に生まれて、毎日が幸せです。有難う御座います。お父様。お母様。
元々は『ある領主令嬢と婿殿の話』と言う風に考えて、娘の恋愛も書こうと思いました。しかし、書けず諦めました。考えていたことを文章化するのが小恥ずかしくて、無理です。削りました。
・・・恋愛が絡む話は苦手です。連載版で一番、四苦八苦した回でした。旧版を書くときも一番時間がかかったのは領主夫人の話です。全体の6~7割の時間をかけて唸りつつ書いたものです。他の人が書いたものを読む分には全然問題ないのですけど。