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領主を継いだので何となく過ごしてみた


とある夏のいちにち




 目が覚めたとき、ちょっと小腹がすいていた。

 いつもの事だ。成長期は過ぎてると思うんだけどな。まあ、いいや。

 毎日の日課と化したつまみ食いへ出かける。


 屋敷の裏の畑で食えるモノを見繕う。農業試験場という名目でオレの趣味で美味そうな野菜・果物を育てている。

 ここで上手く育てば他の農家に広げていく。

 夢はオレの好きなものでこの領地を埋め尽くすことだ。


 今年はちょっと雨が少ない。農家の奴らは日々の水やりに面倒くさそうだ。近所の奴らはちょっと離れた川、もしくは井戸から桶で水を汲んで水をまいている。

 毎回桶で水を運ぶのは骨が折れる。いっそ、水路を造るのはどうだろう。


 う~ん。どっちが楽だろう。

 ・・・一考の余地はあるかもしれない。

 まあ、どっちにしろオレは命令するだけで実際に水を撒いたり、水路を造るのは手駒や領民たちだが。


「すぐに食えるものは・・・」

 甘藍が目に付いたが、しなびている。そもそも、葉物をムシャムシャ食べる姿ははさみしいので除外だ。


 違う一角の農地栽培している作物は毎日のカンカン照りでも元気に育っている。

 乾燥に強いウリ科の作物を育てているからだ。

 幾種類かあるが、その中でも調理せずにすぐ食えるモノは限られている。


 毎日の定番となった小金瓜の元へ到着する。実が赤く色づいているので、適当にひとつもいで、かじってみる。

「ちょっと酸っぱいかも?」

 ざっと見た感じ、ちゃんと真っ赤に熟しているのがない。ここのところの毎日のつまみ食い&収穫した分で完熟したのは取り尽くしたかもしれない。


 蜜瓜を指でつついてみる。見た目で熟しているか分からない。これも適当にひとつもいで、包丁で半分に切ってかじる。

「おっ、甘い。甘い」

 イケてる。即座に貪り食う。大きな蜜瓜を3つ食べ、おやつ用に1つ持って帰る。

「いや~、今日はよく食った、食った。」


 ーー3個は食い過ぎた。おかげで、朝食は殆ど食えなかった。勿体ない。



 朝食を食べた後は、部屋に閉じこもり娯楽本を読む。違う世界から来た研究者がこっちの世界の文化に触れて色々な騒動を起こす空想物語だ。

 ちょっと読み始めたところで眠気が襲ってきたので、本能に逆らわず二度寝する。


「坊ちゃん。起きてください!」

 おばちゃんの声で目を覚ます。

「ふ~ぁぁ~」

 欠伸で反応を返すと、声だけでなく、文字通りたたき起こされる。

「まったく、坊ちゃんのせいでシーツを洗うのは遅れるわ、布団は干せないわ。さっさと起きてください!」

 さっさと起きないと叩くだけでなく、耳も引っ張られる。


 部屋を追い出されたので屋敷をぶらつく。

 太陽の位置を見ると、昼を回っている。

 仕事は育ってきた手駒に任せ始めているので重要案件以外は結構暇だ。

「おやつでも作るか」


 下女やおばちゃんは他の場所で掃除や洗濯しているようで無人だ。

 今日は適当にクッキーでも作るか。

「砂糖とか、高いよな~」

 自分のところでも作ってみたいが、もっと温かい所か涼しい所でしか育たない作物から取るのが主流だ。矛盾しているようだが、そういうものらしい。

 また、果物や甘藷からも取れるらしいが、抽出が面倒なようだ。


 バターも見つからなかったので、今回は全粒粉と蜂蜜、大豆油だけで作るお手軽蜂蜜クッキーだ。

 お手軽なので味もそれなりのお粗末なものだが、暇つぶしだから良いだろう。



 誰も来ないので、ずっと作り続けた結果、大量に出来てしまった。オレは正直味見だけで飽きてしまった。

「今の時間なら、勉強の時間か?」

 ガキどもの仕事がひと段落すると、一期生でも出来の良かった手駒が先生となり、それ以降引き取ったガキどもを教え込んでいる。


 奴らどもを手懐けるために喰らわせてやろう。手駒への洗脳はちょっとしたことからだな。

 大量のクッキーも処分もできるし、一石二鳥だ。

 勉強をしている場所へ行くと甘い匂いにつられたのか、ガキどもが群がる。


 うわっ、どんだけ飢えてんだ? この卑しいガキどもめ!

 面倒なのでおばちゃんに配分を任す。

 何で勉強しなきゃいけないのか、ガキの一人に聞かれたが、オレの仕事を任せ楽するためだ。

 まあ、それじゃよく分からないだろうから例を挙げて説明してやった。


 粉が余っているので、夕飯はうどんでも作るか。夕飯は勉強を切り上げた下女たちも合流し、うどんを作った。副食を作るのも面倒になったので、色々具を入れて煮込みうどんにした。

 そういえば、蜜瓜が部屋に置きっぱなしだった。もう、夕食だし食う気がしない。鮮度も落ちるし、明日の分はまた明日取ってこよう。


「おい、そこのお前。これ食うか?」

 夕食の後部屋から蜜瓜を持ってきて、うろついていたガキに蜜瓜を押し付ける。


 そして、娯楽本を眠くなるまで読んで寝る。



 こんな感じで一日を過ごしている。



 ー了ー




 この国での食事は朝夕の2回が標準です。裕福だとその間にティータイム(軽食やおやつ)が入ります。


 ふりがな無しで「甘藍」「小金瓜」「蜜瓜」「甘藷」全て読めた人いましたか?

 漢字をコピペして調べれすぐ読み方も分かってしまうので各自ご確認ください。便利な世の中です。


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