領主を継いだのに失敗した?
オレは興味を持った様々な事を実践しているが、オレも人の子。聞きかじりの知識では失敗もしている。
今回はその一例を思い返してみよう。
①子目を育ててみた
『子目』という別種の麦は聞いた話では沼地で育てるらしい。
ホントか?とも思うが、蓮のように育つ植物もあるのだし、モノは試しだ。
早速、沼に種を蒔いてみた。
・・・数日後、何の兆しもない。おかしいと思って、種を再度蒔いて、しばらく観察してみる。
おぅ、水鳥の餌になってた・・・
ならば、穴を掘って小さな池を作る。鳥が入れないように網を上にかける。三度目の正直、また蒔いてみた。
全く、芽が出ない? もう、諦めて種を引き上げて素直に畑に蒔いてみた。
普通に芽が出た・・・ いつ枯れると心配したが、全く問題なく収穫できた。あれ? おかしいな? 聞いてた話と違う。
おばちゃんの『それ見たことか』という顔がムカつく。
②後家殺しを作ってみた
ーー『後家殺し』
書物で見つけた、オレの興味心を刺激する凄い名前だ。・・・その正体とは大型の櫛で、麦の脱穀をする道具だけど。
試に作らせてみて、早速使ってみよう。
櫛の間に麦把を通し、引っ張ることで面白いように穂が落ちる。
・・・だが、数回引っ張っただけで櫛の根元がポッキリ折れる。折れてしまえば間がスカスカになり、もう使用不可だ。
・・・つ、使えねぇ~。こんな道具はいらん!
「これ、好きにしろ」
もう、役に立たないけど勿体ないし、何かに使えるだろ?
③農民をこき使ってみた
ここに限らず、殆どの農地は春から秋にかけ、年一回作物を育てるだけだ。食材獲得のため、オレは色々な作物を試験的に育てているが、秋から冬・春まで育つ作物はある。特に葉野菜や根菜は寒くても育つものが多い。
あいつら、寒いからってサボってるんじゃないのか?
よし、ビシバシ働かせてやるぜ!
手駒の中から農業に詳しい奴らを農家を回らせ、説明させる。
えっ? 出稼ぎに出ている? そいつらは除外で良いや。それ以外は強制だ!
そうだ! ついでにいつも温かい時に育てている作物も変えてやろう。
豆は土地の力を回復するにも良いらしいし、子目も増産したい。・・・後は~、高く売れる高級作物を作らせたら儲かるかもしれないな。
・・・失敗した。豆を作り過ぎた。
食べ方のレパートリーが少ない。売るにしても豆類は麦に比べ安いからどうしよう?
もう少し計画的に作らせれば良かった。次からの課題だな。
④新しい食べ物を作ってみた
早速、豆の食べ方を模索しよう。
豆腐という豆が原料の食べ物がある。白く四角い柔らかな食べ物だ。
作成方法は、一晩水に浸し、茹でる。茹であがった豆を熱湯消毒した子目藁に包んで風呂近くの屋根下に吊るしておく。そして、文字通り、豆を腐らすらしい。
・・・本当にこれでできるのか? 実際やってみる。
数日後、藁を開けてみると茶色く嫌な悪臭を放っている。
糸引いて本当に腐ってるぞ? 聞いてた話と違うぞ?
「えっ、お前食ってみるの? 勇気あるな。オレは絶対嫌だぞ」
頭おかしいとしか思えない無謀な一言にドン引きだ。どうせ、廃棄するものだ。好きにしろ。
『子目』は前にも出てきましたが『米』の事です。
知ってる人は知っていると思いますが、米は畑でも育ちます。じゃあ畑ではなく、何でわざわざ水田にするかというと、水田の方がメリットが多いからです。その一番のメリットは収穫量です。水田と畑では水田で育てた方が多くの収穫量を誇ります。それ以外も利点はありますので気になる人はググって調べてください。
「後家殺し」は異世界内政チートでお馴染み「千歯扱き」の別名です。
皆さんお気付きの通り、領主は豆腐と納豆を勘違いしています。なお、作者も聞きかじりの知識ですが、麦藁では納豆を作るのは難しいそうです。