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ある兵士の話



 この年でもう、子育てをするとは思わなかったっス。

 まだ17歳っスよ、俺は。彼女さえいない・・・


 いや、先日までは彼女いたんスよ! あの、忌まわしい事件までは・・・

 頭を撫でると、古傷がうずくっス。


 何が「お笑いの人はちょっと・・・」っスか!!

 俺はお笑い芸人ではないっス! 不幸な事故っス!



 領主様は領主様で

「外に出たくないんだろ? ちょうど良いじゃないか」

なんて子育てを押し付けてくるし。


 せめて、懐いてくれればやりがいもあるだろうに・・・

 領主様やおばちゃんの陰に隠れてビクビクして中々懐いてくれない。

 やっぱり、食べ物をくれる人懐くんスかね?


 領主様はマメっスね。手ずから料理を作り、食べさせているっス。その優しさをこっちにもプリーズ。


 領主様は孤児たちに最低限の生活しかさせていないつもりかもしれないっスけど、傍から見たら十分大事に育てているっス。

 一般と価値観が離れているのに気付いていないんスかね?


 貧乏な家は飢えなければ、取りあえず幸せ。服もボロボロで身に着けているだけマシ。

 領主様と同じものを腹一杯食べられるなんて、存外。まして、領主様が昔着ていた上等な清潔な服を着れるなんて、過度な扱いっス。

 布団や毛布もひとり一組づつ。一家で一枚の毛布をかぶって寝る家もある中、贅沢この上ない。


 勉強も付きっ切りで教え、覚えが悪くて文句を言う事はあっても、手を上げることはない。どうしてか聞いてみると、

「何でそんな面倒なことしなきゃならないんだ?」

 心底不思議そうに領主様は首をかしげる。

 来た当初は生意気な子供もいたっスが、おばちゃんの威圧・・・もとい、心の籠った温か~い説教と、食事のおかず一品減&おやつ抜きの刑で陥落するっス。


 領主様って、ちょっと浮世離れた考えを持っているっス。さすが、まがりなりにも貴族様?

 

「よく考えたらそういえば、子供たちはもちろん、俺も生意気な口きいてるっスけど、良いんすか?」

「この程度で罰するなら、その前におばちゃんを罰さなきゃなんないだろ? それともお前が代わりにおばちゃんを罰してくれるか?」

「・・・無理に決まってるじゃないっスか」






 ーー数年後


 俺は年々養い子が増える屋敷から出て、独立したっス。これで一人前の漢っス! 彼女を連れ込み放題っス!!


 な・ん・と、最近恋仲になったメイド見習いの娘が通いで来てくれるっス。


 ・・・この娘に手を出しておばちゃんに追い出されたわけじゃないっスよ。元々責任取るつもりだったし・・・。本当っスよ。


「領主様にはナイショよ」って、屋敷で作った料理を偶に持ってきてくれるっスが、俺がいた頃と同じなら領主様が作ってるんじゃないっスか? バレバレっスよ?


 彼女のもっぱらの話題は先輩メイドの話っス。領主様にめちゃくちゃ惚れているのが傍で見ていていじらしいそうっス。本人は身分違いで諦めているって言っているけど、全く諦めきれていないのが見え隠れしていて、周りの皆でヤキモキしているらしいっス。


 あ~、そう言えは領主様って婚約者に振られて以来、浮いた話がないっスね。・・・まさか、そっちの趣味があるんじゃ?



 まさか、そんなことないっスよね? 領主様。



彼も屋敷にいる間は贅沢この上ないと自分で言っている生活を毎日享受していた筈だけど、本人は中々気付かないものです。

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