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ある領主の話

時代、土地考証は適当です。中世くらいのイメージかな? 主人公は十五歳くらい?

「えっ? マジで? マジで親父死んだの?」

 王都から来た使者にオレは聞き返してしまった。


「ええ、はい。残念ながら。この度はお悔やみ申し上げます」


 筋肉隆々で殺しても死なないと思っていた親父がなぁ~。

 早く死んでくれないかなぁ~、とは思っていたがその時期はあと二十年はかかると思っていった。

 親父は王都のどっかの部隊で部隊長をしていた。一年のほとんどを王都で過ごし、この領地に帰ってくるのは1ヶ月もない。


「次の領主は貴方様になります」

 使者の方はそう言って、国からの任命書を渡してくれた。

「謹んで拝命します」



 元々傭兵だった祖父が戦場で武功を立て、この一帯を預けられた。その時は親子二代の一時的な預かりだった。

 その息子である親父も親に似て戦場で武功を立てた。これにより正式に下級貴族に取り立てられ名実共に領主となった。


 オレ? オレは無理。部屋で娯楽本を読んで食っちゃ寝の生活でダブダブに太った身体。剣なんて持って10回も振れば息が切れる。

 そもそも、戦争なんて親父の世代で終わって、先の対戦国とは停戦協定が結ばれている。よしんば紛争が起きたとしても、国境から遠いここまで飛び火することはない。

 王都から距離的に少々離れているので、国からの監視・干渉もない。 よほどヘタをこかなければ領地を国に取り上げられることはない。



 使者が帰ると、親父の使っていた部屋の机に着き、屋敷の家令を呼ぶ。

 親父は脳筋だったため、領地運営は彼に任せきりだった。

 親父の言いつけでオレは跡継ぎとしては勉強不足とされていて携わることが出来なかったが、親父が死んだ今やっとタッチできる。

「ということはやりたい放題? よっしゃ~!! 宴会やるぞ!宴会! 準備だ」

 今までの微々たるお小遣いではなく、入って来る収入は全て領主であるオレのもの。贅沢ができる。



 まずは金だ!

 早速、この領地の運営資料を見せてもらう。

 親父に任された部下も熱心ではなく、秋に税を取り立てて一部を国に納める。警察の真似事をする兵士の運営状況。

 羊皮紙に2枚。あっさり見終わる。

 自由にできるお金は・・・少なっ。ゼロではないが、大規模な宴会を二回やったら終わりだ。これではやりたい放題出来ない。


「農村からの税は作物で納められています。納められた作物は商人を通して現金化し、収入とします。今年の分はここで消費する分を除き、既に売却済みです」

 家令の説明を聞きながら、屋敷の倉庫を覗く。売却済みというが、奥には麦が製粉されないまま積まれている。

「これは?」

「三年前豊作だった年の小麦です。備蓄麦として5年ごとに入れ替えます」

 収穫量だけはあるが、味は不味い種類だ。手に取ってみるとカビてはいないが、三年前の古麦では売っても二束三文にもならない。

「こりゃ~、家畜のえさにするくらいしか使い道がねえぞ」

 自分は喰いたくない。


「何かないかねぇ~」

 現金化できるお宝はないか?

 親父の部屋を家探しすると、宝石が見つかった。

 オレは宝石や貴金属に興味はない。

 興味があるのは美味い食い物だ。良いものを食べて怠惰に生きる。それが最高だ。

 これを売って、何食おうかな~。久々にエビを食べるか。

 以前、港町で食べたエビの踊り食いなんて良いかも。



「無理です」

 オレの要望は家令にあっさりと却下された。

 海から離れたこの領地で海産物を食べたいと思ったら、輸送してくるしかない。運んでくるための道はガタガタだ。

「生きたままのエビを運んでくるなんて今の道路事情では不可能です」


「なんてことだ・・・」

 いきなり挫折してしまった。

 新鮮な海産物を食べるためには道を整備しなければならない。


 --なら、道を整備すれば良いのか? やってやろうじゃないか。


 今のオレは権力者。

 領主権限で領民を強制労働させて道路工事やらせてやろう! もちろん、給料なんて払ってやらない。

「倉庫に眠っている古臭い麦くらいなら喰わせてやろう。不良在庫も一掃できて、一石二鳥だ」


 ーーふあははは! 働き蟻の様にキリキリ働け!!




 けれど、思ったより領主の仕事ってめんどくさいなぁ。

 働きたくない、働きたくないでござる。


 我が儘を叶えるために、苦労する? やりたい放題したいのに、本末転倒だ。けど、仕事はいくらでもある。

 自分の代わりに仕事をしてくれる忠実な手駒が必要だ。

 しかし、優秀な人材はこんな若造の言う事を聞いてくれないだろう。

 洗脳、もとい、教育するなら、やっぱ子供だろう。


「よし、子供をさらって来よう」

「正気ですか、領主様?」

 家令が驚きの声を上げるが、本気も本気だ。

 こんな田舎の狭い街でも親のいないストリートチルドレンはいる。

 そんな子供ならどこからも苦情も来ないだろう。


 捕まえたのは十歳に満たない年齢の子供が5人。思ったより少なかった。

 もう少し欲しいが、どこから調達してくるか?


 この国は建前上は奴隷制度は禁止だ。しかし、貧しい農村でははした金で子供が売られていく。その先は他国で奴隷として使役されている事例も少なくない。

 そういうのを買い取っても良い。ぶっちゃけ王都の中の上の食堂一食分の値段と同額だ。

 買いあさってやるぜ!


 ーー良く考えたら、優秀な手駒を育てるための手駒がいない。


 ってことは、オレが形になるまで育てなければならないのか。

 はぁ~。

 後で楽するための投資だ。こいつらが育てば、次にさらってくる子供は任せられるはずだ。

 ビシビシいくぜ! さっさと覚えてオレを楽させてくれよ~。



 下級ながらも王様の覚えも目出度い親父と縁を結ぼうと二つ隣の領主の娘と婚約もしていたが、先日一方的な婚約解消の手紙が届いた。

 親父が死んでこのオレでは未来がないと感じたのだろう。まあ、正解だけど。

 けばけばしい高飛車な娘だったから、婚約解消して寧ろほっとした。 あんなのと四六時中一緒にいないといけないなんて、どんな拷問だ。



 権力を持ったら、次は女だろ。以前婚約していたような娘は御免だ。

 育てていた娘で下女として働いている者から従順そうなのを選び、同衾を命じる。

 一夜過ごした感想は「こんなもんか」というものだった。

 確かに気持ち良かったが、色に溺れる程ではない。

金持ちの貴族などは何人もの夫人・愛人を抱える者もいると聞くが、自分には無理だ。

 それほどの魅力を感じないし、なにより女の子を毎晩とっかえひっかえするなんて、面倒で金が勿体ない。

 気が向いた時だけ、その娘を呼び付けて性欲を解消している。


 一般の貴族に比べ回数が少ないと云え、何度も致していれば子供も孕む。

 妊娠が発覚した後、その娘を夫人とした。

 だが、夫人となっても彼女を優遇するつもりはない。今まで通り下女がするような仕事もやらせている。

 生まれたのは女の子だった。彼女は「跡継ぎを産めずに申し訳ありません」と謝るが全く問題ない。

 この国では女性は跡継ぎにできないが、養子縁組は認められている。自分のような親の死を喜ぶような息子を持つより、手駒から養子をとって跡継ぎにした方が都合が良い。

 その点ではむしろ政略結婚の手段となりうる女の子の方がお得だ。

 彼女はその後二人の娘を産む優秀な腹だった。



 子供の教育という名の洗脳に目途がつくと暇になる。仕事を彼らに押し付けて部屋でゴロゴロするが、暇だ~。

 王都と違ってこの領地には娯楽施設もない。

 領民はせいぜい酒場で酒を飲むくらいだ。

 が、さすがに領主が昼間から酒を渇喰らっている訳にはいかないだろう。その程度の分別はある。


 やる事も無く、時間が余りまくっている。その余った時間でやっている趣味は食い物だろう。

 やっぱり美味いものが喰いたい。調理方法も重要だが、素材も重要だ。


 領主になる前は美味いと言われる産地から麦・米・野菜の種を取り寄せて育てていた。

 土地が違うため根付かなかったものもあるが、根付いたものもさらに美味くなるよう掛け合わせの実験を行っていた。一種の品種改良である。

 領主権限でオレの好きなもので埋め尽くしてやるわ!

 美味いのものためには苦労は惜しまないのだよ、オレは。



 農村からの税は作物で納められているため、現金に換えるために売却しなければならない。

 

 店頭の値札を見て愕然とする。

 オレが昨日売った金額の倍の値段で店に並んでいる。

「ふざけるなよ!」

「これが私どもの商売ですから」

 商人に文句を言うが、のらりくらりと言い逃れる。そっちがその気なら、こっちにも考えがある。


 もう、てめえには売ってやらねえ!!

 税金もふんだくってやる!!

 オレを敵に回したことを後悔しやがれ!!


 まずは・・・よし、領主直営店を出そう。

 中間マージンを取られずに自分で売れば儲かる。てめえの隣に店舗を構え、常に1割引きで売ってやる。


 ふはははは~。ざまーみろ!


 ムカつくから税収方法も変えてやる。自分の領地の税収方法は領主に一任されている。

 今までの税金は人頭税だ。暮らす人数に応じて税金がかかる。これだと金持ちだろうが貧乏人だろうが税金は一緒だ。

 これを儲けに比例して増えていく所得税に変えていく。

 やっぱり金持ちから金をごっそり持っていく方が儲かる。


「この地から商売人が消えていきますよ」

「どうぞご自由に。私たちで別の商店を用意しますので、ご心配なく」


 この商人の息のかかった者とは別の場所へ行けば別の商人もいる。

 品種改良で作った作物も新ブランドとして王都の店にまで知られ始めている。

 食にうるさいオレも納得のいくモノが最近出来始めている。

 引き取り先は減るかもしれないがこの商人と決別した方が長期的に見てプラスだろう。




 思いついた我が儘を全て叶え、思う存分美味しいものを食べた。

 長年一緒にいて愛着もわいてきた手駒たちに囲まれ、思い残すこともなく好き勝手なグータラ生活を目指した領主は満足して亡くなった。


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