再会
第3段。最終話になります。
果たして、夢姫ちゃんと昴くんと海人くんと蘭ちゃんの関係はどうなるのか……?
お試しで付き合い始めてから、明日で1ヶ月。海人先輩に呼び出された。
「林原、話があるんだ。一緒に昼飯食わないか?」
「え、でも……」
今から、亜衣と外でお昼を食べようと、お弁当を持って行く所だった。
「夢姫、私のことは大丈夫だから、先輩とお昼食べてきなよ。でも、屋上の方がいいかも」
屋上なら誰もいない。先輩と一緒にお昼を食べてたなんて、バレたら先輩の取り巻きの女子になにされるかわかったもんじゃない。
お試しとは言え、運よく先輩と付き合ってるのがまだ、ばれていないのが、不思議なくらい。
「ごめんな。呼び出して……」
私達は、周りにばれないように、屋上に来た。
「先輩、話って……?」
「お試し期間、明日で終わりだけど返事、考えてくれてるのかなと思って」
先輩は、私をじっと見つめた。
「考えてはいるけど……」
私は、返事に戸惑った。
「明日でもいいんだけどさ。なんとなく昴のことが気になったものだから……」
「どうして、昴さんが……?」
映画館で昴さん達に逢って以来、なんだか頭から離れなかったのは確かだけど……。
思い出すと、胸の奥がキュッと苦しくなる。 私、どうしたんだろう……。
ー夢姫、運命人とは、どうだい?逢えたかい?
ーううん。おばあちゃんはもうすぐって言ったけどいつ逢えるの
ーもう逢ってるはずだよ。
ーえ、どこで?おばあちゃん。
私は、一生懸命おばあちゃんに問いただしたけど、また消えてしまって、その後、遠くだけど男の子が現れた。
今度は、はっきりと顔が見えてきた。
その顔は、昴さんの顔に似ている。
ー昴さん……?
私は、近づいて確かめようとした。
ピピピ……
目覚ましが鳴って、私はハッと目が覚めた。
「……」
ここのところ、あの夢は出てこなかったのに、久し振りの夢だった。
男の子の顔もはっきりしてきたから、確かめようと思ってたのに、目覚ましで起こされるなんて……。
でも、あの男の子、昴さんに似てたような? 運命人って、昴さんなの……?
ザアアー……
おまけに今日は朝から大雨。
学校には久し振りに、バスで行くことにした。
「もー。嫌になっちゃう。制服濡れちゃった……」
私は、ハンカチで体を拭きながらバスに乗った。
座る席がなかったので、立っていると、昴さんと蘭ちゃんが後からバスに乗って来た。
「おはよう、夢姫ちゃん。久し振り」
昴さんは、私の肩をぽんと叩いた。
「おはよう、昴さん」
朝の夢が気になって、昴さんの顔をじっと見てしまう。
「俺の顔に何かついてる?」
「ご、ごめんなさい。ゴミがついているような気がしたけど感違いだった」 慌ててごまかす。
「あのさ、夢姫ちゃん。俺……」
昴さんが何か言おうとした時、
「昴。袖が濡れてる」
蘭ちゃんが、昴さんの袖を掴んだ。
「きっと、雨で濡れたんだ」
昴さんの袖を見ると、水滴が落ちるほどまではいかないけど、濡れているのがわかる。
昴さんに貸してあげようと、私は慌ててハンカチを出そうとした。
「私が拭いてあげる」
蘭ちゃんが自分のハンカチを出して、昴さんの袖を拭き始めた。
ズキンッ!!
昴さんと蘭ちゃんの光景を目にしてまた、胸の奥が痛くなる。
まただ……。私……、やっぱり昴さんのこと好きになってるんだ……。
そう確信した。
それに昴さんが運命の人なの……?
「……夢姫ちゃん。どうした?ぼんやりして」
気がつくと、昴さんが、私の隣に立っていた。
「昴さん……」
私は、自分の気持ちが読まれないように、慌てて目をそらした。
「そうだ!今度、夢姫ちゃんの彼氏とダブブルデートしない?」
私の気持ちとはうらはらに、蘭ちゃんが言う。
「えっ……」
「ねえ、昴。いいでしょ?」
蘭ちゃんが、昴さんに聞いた。
「……でも、海人と夢姫ちゃんの都合だってあるだろうし」
昴さんが言ったけど蘭ちゃんは、
「じゃあ、夢姫ちゃん。彼氏に聞いといてくれるかな?」
と、言った。
まだ、海人先輩とは正式に付き合っていないんだけど~。
勝手に決めないでよぉ……。
「ごめんな、夢姫ちゃん。蘭、わがままで」
昴さんが、蘭ちゃんの頭をくしゃくしゃとした。
「昴ってば、なにするのよ!」
蘭ちゃんはそう言ったけど、なんか嬉しそう。
仲いいな……。当たり前か。幼なじみのうえに、付き合っているんだもん。
やっと、昴さんが好きだって気づいても遅いよね……。
それに、ずっと昴さんのことが気になってから、夢に出てきただけで、運命の人とは関係ないのかも……。 このまま、想ってちゃいけないよね……。
「海人先輩。私を、先輩の彼女にしてください」 放課後、海人先輩がいる図書室で私は返事をした。
「本当に、OKでいいんだね?」
先輩はもう一度、確かめた。
私は、コクリと頷く。
「よかった~」
先輩は、ほっとすると嬉しそうに私を抱き締めた。
「正直言うと、断られるんじゃないかと思ってたんだ」
「……」
昴さんのことが、好きなことに気がついて、どうしようか迷ってはいたけどね。
でも、昴さんには彼女がいるんだし。これで、いいんだ……。
「先輩、あと相談が……」
海人先輩にダブルデートのことを、話してみた。
「いいんじゃないかな。計画とかもあるだろうし、昴に連絡してみるよ」
「うん……」
頷いてはみたけど、昴さんと、あまり逢いたくない。
でも、行かないとあとで蘭ちゃんに何か言われそうだし……。
「それより。図書委員の仕事もう終わりだから、一緒に帰らないか?」
海人先輩は時計を見ながら言った。
先輩と私は一緒に帰る約束をした。
帰りは朝の雨が嘘のように、あがっていた。
「林原、みんなでどこに行きたい?」
2人でバス停まで歩きながら、海人先輩は聞いた。
「……遊園地とか水族館とかかな。でも、蘭ちゃんもいるから、みんなの意見が一致したとこでいいよ」
「じゃあ、昴と相談してみるよ」
海人先輩は明るくそう言ったけど、なんか胸の辺りが、もやもやする……。
「海人先輩、また明日」
バス停に着くと、私は先輩に挨拶するとバスに乗ろうとした。
「うちまで、送るよ」
私の後から先輩も、一緒に乗り込む。
奥に進んで行くと、一番後ろの右側の座席に昴さんが座っていた。
「昴」
海人は、軽く手をあげた。
「……バス通学じゃないのに、珍しいなー」
「林原をうちまで送ろうと思ってさ……。あ、そうだ。ダブルデートのこと聞いたぞ。予定だけど……」
昴さんと先輩が相談を始めた。
帰りは、蘭ちゃん一緒じゃないんだ……。
ほっとしたような、ほっとしないような複雑な気持ちだ。
「じゃあ、決まりな」
海人先輩の声にハットした。
いけない。聞いてなかった……。
私が、うわのそらだったことに気づいて昴さんが、
「夢姫ちゃん、今度の休日。遊園地の前で1時にな」
確かめる。
遊園地に決まったんだ……。
「海人先輩、送ってくれてありがとう」
バスを降りて、昴さんと先輩と一緒に歩いて来たけど、途中で昴さんと別れて先輩と2人っきり。
「この間、思ったんだけど昴、林原のこと名前で呼んでるんだ……?」
「な、なんか成り行きでー」
「俺も名前で呼んでもいいかな?」
私は、小さく頷く。
「あ、あの……。先輩」
「夢姫も。先輩はいらないから。俺たち正式に付き合い始めたんだし」
「……じゃあ、か、海人。うち、すぐそこだから、ここで……。送ってくれてありがとう」
私は、御礼を言う。
「じゃあな。また明日」
そう言った後、私を抱き寄せ突然、キスをした。
……!!
私は、呆然と立ち尽くした。
「ごめん、突然……。嫌だったか?」
私はを頭を左右に振った。
「……。ごめんなさい。さようなら!!」
優しく先輩が聞いたのに私は、その場から走り出してしまった。
初めてのキス……。
私はだんだん、小走りになって立ち止まった。
次第に、私の目から涙が溢れた。
先輩のことは、嫌いじゃないし、キスだって嫌じゃなかったのに……。 なのに、涙が出てくるのは、どうしてかな?
ー夢姫。運命の男の子も夢姫が運命の子だって気づいついるはずだよ。
ーえっ……。でも、おばあちゃん。気づいているなら、どうして何も言ってくれないのかな?
ーもうすぐ、言うはずだよ……。ほら、近くにいる……。 ー近くって?どこ?
おばあちゃんに、聞いてみたけど、いつものように、姿が消えかけていく。 そしてまた、男の子が現れた。今度は、近くで顔がはっきりしている。
私はハッとした。
ー昴さん!?
やっぱり昴さんだ。確信した時、また夢から覚めた。
「今日は、随分リアルな夢だったな……」
この間も、昴さんかな?とは思ったけど、確信はできなかった。
昴さんのことが、気になってたから、夢に出てきたのかと思ってた。
でも、今日の夢は違う……。きっと、昴さんが運命の人だ……。
ぼんやり考えていたけど、時間がないのに気がついた。
「みんなと遊園地に行くんだった!!」
今日はいよいよ、ダブルデートの日。
お昼を食べて、ソファーでごろっと横になっていたら、いつの間にか眠っちゃったんだ~。
私は、急いで着替えて待ち合わせ場所に行くと、海人がみんなが来るのを待っていた。
「夢姫、おはよう」
海人は、にこやかに挨拶をした。
「はあはあ……。おはよう」
私は、息を切らせながら、ぎこちなく挨拶をする。
キスの時以来、海人とは気まずくて、学校ではなるべく顔を合わせないようにしていた。
「夢姫、この間はごめん。急にキスしたりして……」
海人が両手を合わせて謝った。
「わ、私のほうこそごめんなさい。いきなりでびっくりしたものだから、急に帰ったりして……」
私は、なんて言ったらいいかわからず俯いた。
「本当にごめん。急に、あんなことしないから」
どうしよう。なんて言えばいいのかわからないよ~。
困っていると、ちょうど昴さん達がやって来た。
「ごめん、遅くなって」
「なんだよ。来る時もお前ら一緒か~。仲いいな」
海人は昴さんと蘭ちゃんを見て、からかうように言ったけど昴さんは、平然とした顔で、
「うちが隣だからな~」
と、言った。
いくら隣りでも、ほとんど一緒……。
私は、せつないため息をつく。
蘭ちゃんは、いつもなら昴さんを引っ張って行きそうなのに先に入って行った。
私達も後から入って行く。
中に入った後、最初に何を乗るか意見を出し合い、多数決でジェットコースターに乗ることになった。
「蘭はどうする?待ってるか?」
昴さんが優しく、蘭ちゃんに聞く。
どうやら、蘭ちゃんはジェットコースターが苦手らしい。
「ううん。大丈夫」
蘭ちゃんは首を横に振った。
でも、乗り終わってから蘭ちゃんの顔色が真っ青。
「大丈夫か?」
昴さんは、近くのベンチに蘭ちゃんを座らせた。
「さっぱりする物、何かあったほうがいいよね……。私、冷たい飲み物買ってくる」
自販機がある場所に急いだ。
自販機に着くと、昴さんと海人の分もジュースを買って歩きだした。
「夢姫」
声のするほうへ振り向くと、海人がこっちに歩いて来るのが見える。
「手伝うよ」
海人は私の所に来ると、さっとジュースの缶を持つ。
「私、独りでも大丈夫だったのに」
「そうなんだけど、俺は昴達の邪魔そうだったから」
「……」
それもそうか……。
でも、蘭ちゃんがいるのに、昴さんが運命の人かも知れないなんて、思っていいのかな……。
私達は2人の所へ戻る。
「はい。冷たいジュース買って来たよ」
昴さんと蘭ちゃんに、ジュースを渡した。
「夢姫ちゃん。ありがとう」
昴さんは、蘭ちゃんにもジュースを渡す。
「蘭ちゃん。具合はどう?」
蘭ちゃんは、昴さんの膝枕で横になって休んでいたけど、起き上がると、
「大丈夫」
一言だけ口にした。
「こら!蘭。せっかく心配してくれてるのに、なんだその態度は」
昴さんが、そう言ったけど蘭ちゃんはプイッと横を向いた。
「蘭!!……ごめん、夢姫ちゃん」
昴さんが変わりに謝ってくれたけど、どうも蘭ちゃんの様子がおかしい。
遊園地に入る時も、昴さんと腕を組んで入りそうなのに、さっさと独りで中に入っちゃったし。何かあったのかな?
「まあまあ、昴。落ち着いて……。気分が良くなったなら、何か乗ろうぜ?」
海人が、ピリピリとした空気を変えるように、聞いてきた。
「そ、そうだね。何か乗ろう!」
私も、明るくそう言った。
そして、私達はまだ、乗っていない乗り物に乗ったり、大はしゃぎ。
でも、蘭ちゃんだけぎこちなく笑ったりして様子が変。
なんか、やっぱりおかしい……。
「あと、観覧車とお化け屋敷が残ってるな」
海人が、パンフレットを見ながら指差した。
「ここからだと、お化け屋敷のほうが近いから、先に行って観覧車は最後にしないか?」
昴さんが提案を出した。
「それもそうだな。2人ともどうかな?」
海人が私と蘭ちゃんに聞いた。
「いいわよ。それで」
私と蘭ちゃんは賛成した。
でも、本当は怖いの苦手で、お化け屋敷でも足がすくんでしまう。
「カップルの方はペアーになって、前にお進み下さい。出口では、素敵な景品が貰えます」
お化け屋敷の前まで行くと、今日は何かのイベントらしく係員のおじさんが、お客さんに呼びかけている。
その前にはカップルが列をつくって並んでいた。その後に、私と海人。昴さんと蘭ちゃんで2列に並ぶ。
係員のおじさんが、さっさと誘導しているので、すぐに順番が回ってきそうだ。
どうしよう……。今から、足がガクガクだよ……。
そんなことを考えていたら、前の女の子が彼氏とふざけていて、女の子の腕が私の肩に思いっきりぶつかり、後ろに倒れそうになった。
!!!……。
その時、後ろにいた昴さんが私を受け止めてくれた。
「ありがとう……」
「大丈夫か!?」
昴さんが、慌てた声で言った時、女の子がびっくりして私達を振り向いた。
女の子は気まずそうに頭を下げると、順番が来たらしく彼氏と中へ入ってしまった。
……なによ!!こっちは怪我するところだったんだから!!ちゃんと謝ってよ~!?
私は、怖いのを忘れて怒りがこみ上げてきた。
「はいはい。そこの抱き合っているお2人さん。このワッペンを胸につけてね。はい!行ってらっしゃい!!」
係員のおじさんが、私と昴さんの背中を軽く押した。
「えっ!ちょ、ちょっと。相手、違いま……」
私は慌てて、係員のおじさんに言おうとした。
「夢姫ちゃん。いいよこのまま中に入ろう」
昴さんは、私の腕を掴んで中に入った。
「す、昴さん。でも、蘭ちゃんが……」
「蘭のことは気にしなくていいから。」
「どうして気にしなくていいとか言うの?彼女なのにほっといて平気なの?」
私は昴さんを問いつめた。
「……蘭が、彼女とか言ってるみたいだけど、前にも言ったように蘭は幼なじみで彼女じゃないから」
「えっ……」
昴さんの言葉に、ほっとしている自分がいた。
「それに朝、蘭に告白されたけど、事情を話して断ったし」
昴さんは平然とした顔で言う。
だから、蘭ちゃんの様子がおかしかったのか……。
私は少しほっとした。
その時、いきなりガタッと大きな音がして、びっくりして思わず昴さんの袖を掴んだ。
「あははっ。夢姫ちゃんは怖がりだな~」
昴さんが笑う。
「だって~。怖いの苦手なんだもん」 私は、半分泣きべそをかいた。
「仕方ないな~」
そう言って、昴さんは私の手を優しく繋いだ。
「す、昴さん……」
「こうしていれば、怖くないだろ?」
暗くて怖いけど、昴さんの指先を通して、怖い気持ちが消えていく。
その後のことは、どう通って来たのか覚えていない。いつの間にか、出口にたどり着いていた。
「お疲れ様~。はい。景品」
今度は、出口で待っていた係員のおばちゃんが、私達にマグカップの入った箱を渡した。
「みんな絵は違うけど、カップルだけは絵がペアーでお揃いだから仲良く使ってね~」
おばちゃんはニコニコしながら説明した。
マグカップを見ると、可愛いお化けの絵が描いてある。
他のカップルが持っているマグカップには、私達と違うお化けの絵が描いてあるのが見えた。
海人には悪いけど昴さんとペアーで、使っちゃおうかな……。
「まだ、海人達出てこないな……」
出口の方を見ながら、昴さんは呟くと、
「海人にはメール入れておくから、先に観覧車に乗ってこないか?」
と、言った。
「う、うん……」
私は、素直に返事をする。
そして、私達は観覧車へ……。
ガタンガタン……。
静かに観覧車が上に上がって行く。
観覧車に乗ってから、私も昴さんも黙ったまま景色を眺めていた。
「夢姫ちゃん」
昴さんが静かに私を呼んだ。
私は、ドキッとする。
「何度か言おうとしたんだけど、うちの家系には男が18才になると、運命の人に出逢えるって言い伝えがあるんだ……」
昴さんは、照れた顔で私を見つめた。
「……」
「始めは信用してなかったけど、君に初めて逢ったときは、驚いたよ……。夢に出てきた子が現れたんだから……。それで、やっと本当のことなんだって気づいたんだ……」
「うちの家系も同じ……。でも、昴さんの夢みたいには、顔がはっきりしてなくて……、全然気づかなかった……。わかったのは、つい最近……」
私も、昴さんを見つめた。
「俺さ。運命の人って、どんな子だろうと思ったけど、逢うたびに好きになってた……。今も夢姫ちゃんが好きだ」
昴さんの瞳は、真剣だった。
「!!……。私も昴さんが好き!!……」
気持ちが溢れる想いで告白すると、海人のことを忘れて、思わず昴さんに抱きついた。
「……でも、夢姫ちゃん。海人のことが好きなんじゃ……」
「……海人のことは好きだけど……。昴さんに対する気持ちとは違うの……。今までは、蘭ちゃんと付き合ってると思って諦めて、海人と付き合い始めたけど……」
私の気持ちを知って、昴さんは優しく抱き締めた。
ドキンドキン……。
私の心臓の音が早くなる。
どうしよう。昴さんに聞こえちゃう~。
「蘭は妹みたいにしか思ってないよ。それに俺、夢姫ちゃんとのこと海人に話してみるよ」
「でも……」
海人と昴さんが喧嘩にでもなったらどうしよう。それだけが、心配だ……。
「大丈夫。だてに海人と友達やってないさ」
昴さんは、優しく私の瞳を覗き込む。私も引き込まれるように昴さんを見つめた。
昴さんは、私の髪を優しく触れると、昴さんの唇が私の唇に重なった。
優しくて甘いキス……。海人とした時とは違う……。
「ごめん……。まだ、海人の彼女なのにこんなことして」
昴さんは、私から慌てて離れた。
私はブンブン首を振る。
「私も、昴さんとのこと海人に言ってみる……」
私は、そっと唇を噛み締めた。
外を見ると、到着まですぐそこに来ていた。
「お疲れ様でした~」
到着すると、係員のお姉さんがドアを開けた。
私達が外に出ると、海人と蘭ちゃんが待っていた。
「お前ら、2人で先に乗って何やってたんだよ……」
「!!……」
私の心臓がドキッと鳴り響く。
海人の感は鋭い。
蘭ちゃんはというと、無言のまま。
「海人。話があるんだ……」
昴さんが厳しい顔で海人を見た。
「わ、私も……。海人に話が……」
ぎこちない声を出す。
「なんだよ。2人して……」
「ここじゃなんだから、向こうのベンチに行かないか……?」 昴さんは、なるべく人が少ない場所へ促した。
「海人。俺、夢姫ちゃんが好きなんだ。それと……」
ベンチに座ると、昴さんは私に話したことをそのまま話した。
「ふ~ん。夢姫が運命の人ねぇ……」
海人は、チラッと私を見る。
「昴さんが言っていることは本当なの……。私は最近、気づいんだけど……。でも、そんなの関係なしに気づいたら昴さんのことは好きになってたの……。ごめんなさい!!」
頭を下げると、ギュッとと目をつぶった。
「じゃあ……。どうして、俺と付き合ったわけ?」
「……それは、蘭ちゃんが昴さんと付き合ってると思って……」
おずおずと、海人に言う。
「俺は、昴の代わりだった訳だ?」
海人は眉間にシワを寄せる。
「ううん。そんなつもりじゃ……。海人のこと嫌いじゃないし」
言い訳に聞こえるかも知れないけど、昴さんの代わりだなんて一度も思ったことはない。
「海人。夢姫ちゃんは悪くないんだ。俺がもっと早く言えばよかったんだ」
「……昴。一発殴らせてくれないかー」
昴さんの返事を聞かずに海人は拳を振り上げた。
「か、海人!!やめて!!蘭ちゃんも見てないで海人をやめさせて!!」
私は、慌てて2人の間に入った。
蘭ちゃんのほうは、黙ったまま見ているだけ。
蘭ちゃんだって昴さんのことが好きなんだから、昴さんが殴られるのは嫌なはずでしょ!?
ガツンッ!!
昴さんの頬に海人のパンチがくらって、昴さんは後ろにひっくり返った。
「あっ!!大丈夫、昴さん!?海人。お願いだからもうやめて……」
私の目から涙が溢れてきた。 海人は一息つくと、
「あっ~、一発殴ったらすきっりした」
二ヤリッと笑うと、昴さんに手を差し伸べた。
昴さんも、海人の手を掴み立ち上がった。
???……。どうゆうこと?喧嘩になると思ってたのにー。
「ごめん、昴。本当は彼女に全部聞いたんだ。2人を認めてやってくれって」
海人は、蘭ちゃんを見ながら頭に手をやった。
え!!そうだったの?
私と昴さんは、蘭ちゃんを見た。
「べ、べつに。私は2人のこと認めた訳じゃないんだからね。ただ、昴には幸せになってほしいだけ」
ぶっきらぼうに蘭ちゃんは言ったけど、照れてるみたいだ。
「でも、殴るなんて酷いよ」
私は、頬を膨らませる。
「ごめん……。運命で惑わされて、本当に夢姫のことが本気かどうか確かめたくてさ。でも、昴の目を見ればわかる……。遊びで付き合うような奴じゃないって」
「海人……」
昴さんは自分の頬をさする。
「昴達に映画館で逢った時から、夢姫の様子がおかしかったから、薄々は気づいてはいたけど。夢姫はまだ、昴への気持ちは気づいていないみたいだったからさ……。付き合うのOKしてくれた時はほっとしたのに、最後はこうなるのか~」
ガクリッと海人は肩を落とした。
「ごめんなさい……」
私はすまなさそうに言う。
「悪いと思っているなら、最後にキスしてくれたら許す」
「え!」
私の心臓が跳ね返る。
そんな~。昴さんがいるのにそんなことできない。
断ろうとしているうちに海人は私の肩を掴んだ。
「お、おい。海人」
昴さんも焦って海人をやめさせようとした時、
「な~んて嘘。ほら、夢姫は昴の所に行けよ」
海人は、私の背中を軽く昴さんの方へ押した。
「じゃ、俺帰るわ。2人の邪魔しちゃ悪いし」
軽く手を上げると海人は、悲しそうに歩いて行った。
海人……。ありがとう。
そっと私は海人の後ろ姿を見つめた。
「私も帰ろっかな」
蘭ちゃんが、独り言のように呟いた。
「蘭。ありがとうな。海人に言ってくれて」
「運命の人が現れたなんて言われちゃたらねー。小さい頃から、昴のおばさんからは聞いていたけど、相手はずっと私だと想ってたのに」
がっかりしながら蘭ちゃんは溜め息をついた。
「でも、こんな気持ちじゃ帰れない」
昴さんに近づくと、チュッと頬にキスをした。
「ら、蘭!」
頬に手をやると、顔を真っ赤にした。
外国人には挨拶だけど、私にはショックもいいとこ。
「じゃあね~。ばいばい」
蘭ちゃんはぶんぶん手を振って走って行ってしまった。
海人もそうだけど振られても、復活が早いなんて羨ましい~。私だったら、2、3日は立ちなおれないよぉ。
「蘭のことは、気にするなよ。ま、挨拶みたいなものだからさ」
「ふ~ん。そのわりには顔、赤くなってたよね」
私は頬を膨らませた。
「妬いてるんだ~?」
昴さんは、私の顔を覗き込む。
「だって……」
「大丈夫大丈夫。俺だって海人に妬いてたからな~」
「え?」
昴さんの言葉に耳を疑った。
そんな素振り全然見せなかったのに、私の知らないところで妬いてくれてたんだ……。
昴さんは照れながら咳払いをする。
「よし!もう1回観覧車を乗ろう」
昴さんは優しく私の手を繋いだ。
「うん!」
元気よく返事をすると、私達は子供のように青空の下を駆け出したー。




