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PEREON  作者: 屋久堂義尊
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8.倉田丈

 二〇一五年七月十五日、静岡県静岡市清水区。

「ご覧下さい、ここ清水区に、今日怪獣が二体上陸しました。具体的な被害はまだ定かでは有りませんが、怪我人や犠牲となった方が、次々とここ被害対策本部に運ばれてきます。なお、空中へと逃走したとみられる二体ですが、目下の所、その逃亡先は把握出来ていないとの事です。街中では、警察、自衛隊、消防、ボランティアの方による決死の救出活動が続いています。繰り返しお伝えします、空中へ逃亡した二体の怪獣は、現在消息が掴めていません。皆さん、警戒を怠らないで下さい」

 丈は警察の眼を掻い潜り戦いの現場に到着していた。最後にあの甲殻類のようなあいつが飛び上がった場所は段々畑だった。

 そこにはポニーテールの女性が立っていた。どう見ても、警察や自衛隊の人間では無かった。

 彼女の視線の先には、大きな一枚岩が有った。表面が焦げて、真っ黒だったそれを見ると、何かが刻んであった。

「早良君、君も来ていたのか」

 そこに水色のワイシャツ姿の男が現れた。その脇には海自の制服を着た男が立っていた。

「あ、坂下先生」

 ポニーテールはその男の方を振り向くと彼をその岩まで誘った。

「これは?」

「あの龍が吐き出した物と思われます。何か文字が刻んであるのです」

「そうなのか……。所で君は?」

 坂下と呼ばれた男が丈を見た。

「君、部外者だよね。野次馬はあっちへ行った」

 坂下が冷たく言い放つ。すると、その横に立っていた海自の人間が彼を追い出しにかかろうとした。

 だが丈は冷静だった。

「僕は、あの怪獣の第一発見者です」

 坂下がきょとんとしていると、海自の自衛官がハッとした顔に変わった。

「もしかして、倉田丈さんですか?」

「倉田丈?」

「あの駿河湾の事故唯一の生還者です」

 早良と呼ばれたポニーテールが声を漏らした。

「新聞に載っていた方ですか?」

「ああ、そうだよ」

 彼はすこしふんぞり返る。

「もしかして、調査に協力して下さるのですか?」

 早良が問う。

「勿論。船長の仇を討ちたいし」

 少し胡散臭そうな顔をして坂下が聞いた。

「それで、倉田君か、君は一体どう考えていうのか?」

「はい、今日見て初めて分かったのです。あの虫みたいな奴、あれが船を襲ったんです。それで、その時もあの二匹は戦っていたんです」

「戦っていた?」

 早良が興味深そうに前へ身体を向ける。

「あの二体の戦いに巻き込まれて、船が沈んだってわけか」

 坂下が腕を組み、一人頷く。

「坂下先生もご覧に成られたのですか?」

「ああ、永田町のビルでな。臨時ニュースを見たんだよ。あの二体が暴れているのを見て皆大騒ぎだったけれど」

「今日が四月一日じゃ無い事を理解するのに時間は要らなかったですね」

 早良が壊れた町を見て言った。こんな物、嘘だったらどれ程良かった事か。

「だが事実は事実だよ」

 丈はきっぱりと言い放った。

 坂下の眼が厳しいのが気に成ったが彼はそれを無視した。

「まぁ良い、で、何が出たんだい?」

 この塊です。

 早良は坂下に、その一枚岩を見せた。

「あの龍が、火球と共に吐き出したのだと考えられます」

 丈も良く見ようと背伸びした。

 何かが刻んであるが黒く煤けて見えない。ただ見た限りだと象形文字のようだった。

「この岩に書いてあるのは文字だよな」

 坂下が岩を触る。煤が剥けて、中から銀色の金属が見えた。

「これは岩なんかじゃ無いぞ。何か人工の物だ」

 坂下は、ついて来た海自に何事か呟いた。そして、ポケットからデジタルカメラを取り出すと、文字列を撮影しだした。

「解読出来そうですか?」

 早良が恐る恐る聞いた。

「いや、私には無理だ。ウチの大学には考古学の研究室も有るだろう?」

「ああ、史学科ですね?」

 早良は納得したように頷いた。

 坂下は、あらゆる角度から文字列を撮影した。と、そこに先程の海自の隊員が、ホースを持って現れた。水をかけて煤を洗い落とす。白銀の石版が姿を現した。

「これは……」

 その文字列はたったの七文字かける六行だった。

「どんな意味が有るのだろう?」

 丈は乗り上げて早良に問いを投げた。

「私にも分かりません。私達生物学を専攻にしていましたから」

 丈も勿論分からない。彼は高校を卒業してから漁師一筋で生きて来た。外国語は英語すら分からなかった。それに、これは本当に文字なのだろうか? 彼には落書きにしか見えかった。

「この金属板は、ウチの大学で保管させて貰おう」

 坂下は、海自の自衛官に、再び何事か話だし始めた。

「あの怪獣達はどこへ行ったのでしょうか?」

 早良が丈に聞いて来た。丈は一瞬空を見上げた。

「あれだけ巨大なのが飛んでいるんだ、空自がマークしているでしょう」

 丈はそう願っていた。巨大な物がいるだけで、この世界の秩序は乱れてしまうのだ。それだけは考えたく無かった。

 坂下が海自の自衛官と話をつけて帰って来た。

「あの石版は一度防衛省に引き取られ、それから大学に回されるらしい。それまでは、この写真で何とかするか」

 坂下はデジカメを手に微笑んでみせた。

「それで、肝心あの怪獣についてはどんな意見を持っているのですか?」

 丈は思い切って坂下に聞いてみた。

 坂下は一瞬嫌そうな顔を見せたが決してその問いを無碍にしなかった。

「片方は甲殻類が進化した物だろう。或いは古代の巨大節足動物の生き残りか。ただ、もう一つは分からん。巨大な恐竜の生き残りだとしてあの映像で見ている限り、あんな風に空を飛ぶ生き物はどの時代にもいないだろう。生物学では理解出来ない領域の存在だ」

 坂下はそう言うと、壊れた町の一角を睨んだ。

「ただ先の戦いであの龍は流血した。そのサンプルが手に入れば少しは解明出来るかもしれない。だが、どう考えても普通の生物では無い。それは確かだ」

 丈はゆっくりと頷いた。

「今出来る精一杯をしましょう」

 彼は坂下と早良に述べるのだった。

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