14.決着の時
立川駐屯地の北、セトとペレオンは睨み合っていた。
セトは鎌を上空にもたげた。ペレオンは右腕のペレオンスライサーを構えた。
一瞬の沈黙の後、両者は同時に駆けだした。
セトが鎌を振り下ろす。ペレオンがペレオンスライサーを叩き付ける。
両者は刹那に交差した。そしてそのまま駆け抜けた。
二体は動きを止めた。
再び沈黙が訪れた。
両者の様子を見ていた丈は、息を飲んでその様子を見ていた。
「何が起きたんだ……?」
「どちらが、どうなったんでしょうか?」
早良もその様子をじっと見ていた。
先に動いたのはペレオンだった。
『AAAAGH……!!』
ペレオンは腹部を押さえると、前のめりになった。吐血していた。
セトが振り返る。余裕たっぷりと言った方が良いか。
セトが、再び攻撃態勢に入る。
しかし、その首から突如、真っ黒い体液が噴き出した。ペレオンがゆっくり振り向く。セトは首筋から大量の体液を漏らし、ついにはその首が胴体から転げ落ちた。
セトは――首を失った胴体は、ゆっくりと倒れ伏した。
ペレオンが、トドメとばかりに火球を吐いた。セトの身体にそれが命中した。大爆発が起き、周囲の街並みごとセトの身体が木端微塵に成った。
「やったのか……?」
丈はその爆発を見た。爆風が彼の顔にも伝わる。肉が焼ける嫌な臭いがした。
「坂下教授、やりました……、ペレオンがやってくれました……」
早良は知らずに涙を流していた。それは爆風から流された物では無かった。
丈は、早良を抱き寄せた。早良はその腕につかまるのだった。
「さようなら、お父さん……」
京子もまた泣いていた。どんどんとそれが溢れて来たのだった。
ペレオンはゆっくりと立ち上がった。
『PAAAAAAAAAARGH!!』
天に向かって雄叫びを上げた。勝利の雄叫びだった。
ペレオンの背中にウイングが展開された。ジェット噴射がその翼から吹き上げられ、ペレオンの身体が宙に浮いた。ペレオンは真っ直ぐに上空へ向かって飛び進んで行った。
傷付いた龍は、厳しい戦いを勝ち抜き、今、帰ろうとしていた。
ペレオンは東に進路を向け、立川の地を後にした。
「状況終了」
渡辺は一人、敬礼をするのだった。