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面接と嫉妬

「○○大学工学部知能情報科の臣足(おみあし) 斉衡(さいこう)と申します。本日はよろしくお願いします!!」

「ふむ、良い元気だ。座りたまえ。」

「失礼します!」

 おみあしさいこう、か。おみ足最高。こいつが足フェチだったら面白いな。まぁ、博士は俺だけのものだから、どんなに面白くとも不採用だがな。

「ふむ。ええと、取り敢えず自己紹介をするのじゃ。」

 面接官は博士。補助は俺。ちなみに博士は『絶対に失敗しないし猿でもわかるし一日二分で完読できる面接マニュアル』という怪しい本を読みながら、俺は博士の胸を凝視しながらの面接だ。もし俺が就活生ならこんなところに就職しようとは絶対に思わない。この足フェチ野郎もとっとと帰れば良いのに。

「は、はい!!私はパソコンの扱いにかけては天下一品。誰にも負けないと自負しております。先日も私の技術を買っていただき、国の機関からオファーがありました。しかし、私はどうしても御社、いや、御研究所で働きたいと思い、その誘いを蹴りました。」

 国の機関からオファーか。それは凄い。足フェチの癖に有能なんだな。

「ほう、面白いな。では、志望動機を言ってくれたまえ。」

 まずい。博士が奴に興味を持ったようだ。博士にとって「面白い。」は最大級の褒め言葉。どうにかして妨害しないと。

「博士。普通に志望動機を訊いても面白くありません。ですから少し条件を出しても良いですか?」

「うむ。構わんぞ。」

 よし。博士は滅多に人の提案を否定しないのだ。

「五秒以内に志望動機を言ってくださいではスタートンファー。」

 まさかこんな無茶を言うとは思うまい。それに面接というものはただでさえ緊張しているはずだ。判断力も低下しているだろうし「ストートンファー。」に混乱させられもするだろう。さぁ、どう答える?

「私は足フェチです。片栗博士は綺麗な足をしています。以上です。」

 な、に?答えた、だと?それに、本当に足フェチだったのかこいつ。名は体をあらわすというやつだな。

「ほう、我輩の足が綺麗だと言うのか。それは結構なことだ。なぁ助手よ、君はどう思う?」

 人は胸と名の入れ物であり、入れ物なんかに興味はありません。

「綺麗だと思います。」

「そうかそうか。ふむ。そうか。」

 博士は顔を赤くして本に視線を落とした。

「で、では、君が弊社に入社した場合、何が出来るのかね?」

「ハッキングが出来ます。以前某国の重要機密情報を盗んだこともあり、経験は十分あります。」

「そうかそうか。君は優秀じゃな。よし、文句なしじゃ。採用しよう。」

「待ってください博士!!パソコンなら俺にも出来ます。足フェ、じゃなくて臣足君には悪いですが、ここは不採用でしょう。」

「ふむ。」

 考え込む博士。黙り込む足フェチ。二、三秒の間の後、博士はあの本のページをぱらぱらとめくって言った。

「最後に言いたいことはあるかね?」

 足フェチは言った。

「私は自分の希望が通らないとキレますが、どうしますか?」

 足フェチ君はどうやらヤバイ奴のようだ。博士の表情も暗くなる。これは博士ががっかりしたときの顔だ。

「我輩は、脅す、という行為が嫌いでね。残念ながら不採用とさせてもらう。帰りたまえ。」

 なんだか嫌な予感がするが、なんとかあいつを不採用にすることが出来た。嬉しい限りだ。博士は異常にお人よしだから、簡単に人に騙され傷つけられる。俺はクズだが博士の助手だ。悪い虫から博士を護る義務がある。

「不採用。わかりました諦めます。でも、その足は持って帰らせてください。」

 突然、足フェチはチェーンソーを取り出した。嫌な予感的中だ。

「ふむ。我輩は護身用機械超電撃二号を使おう。これはじゃな、電撃を放ち標的を気絶させる機械だ。威力は絶大だが、充電に五時間かかるという欠点がある。ふむ。どうやら充電を忘れていたようじゃな、少し待ってくれ。」

 説明しながらコンセントにプラグを差し込む博士。その隣には足フェチも居る。勿論、チェーンソーを動かすのにも電気が必要だからだ。その隣で俺は何をしているかというと、上半身裸になっていた。純粋に脱ぎたかったというのもあるが、真面目な理由もある。チェーンソーは布に弱いのだ。

 足フェチがコンセントにプラグを差し込んだ瞬間、チェーンソーの刃に服を絡ませてやった。すぐにチェーンソーは動かなくなる。

 突然の行動と何故か上半身裸の俺に驚き動けなくなっている間に、足フェチを拘束してやった。

「助手よ、助かったぞ。ではそのまま五時間待ってくれ。」

「大丈夫です。もう拘束しておきました。」

「流石は助手だ。では夕食の準備でもしていてくれたまえ。五時間後に我輩も行く。」

「博士、先に夕食を済ませておくというのはどうでしょう?いつも世話になっていますし、たまには俺が奢りますよ。外食しましょう。」

「それは面白い。帰る頃には大方充電終わっているだろうしな。」

 俺達は手を取り部屋を出て行った。足フェチはなにやら言いたそうにしていたが、何も言わなかった。少し可哀想な気もするが、俺の興奮対象一位の座に君臨する博士を下種な目で見て、更には研究所の仲間になろうとまでしたのだから自業自得だ。たっぷり反省してもらおう。

「はかせはかせー。あけてはかせー。」

「博士ならいませんよ。」

「あれ?おにーさんだれ?なんでぐるぐるまきにされてるの?」

「ま、まあ、色々あってね。これを解いてくれないかな?玄関を開けてやっただろう?」

「うーん。あけてくれたというか、けりとばしたってかんじだったー。」

「それは仕方ないだろう。見ての通り動けないんだ。足を扉にぶつけるのが精一杯で。」

「へー。」

「だから解いてくれ。な。」

「やだ。」

「解けよ。」

「やだ。」

「解けやガキッ!!」

「なんでおこるの?」

「お前が言うこと聞かねーからだよ。俺は自分の思い通りにならないことが大嫌いなんだ。」

「どうして?」

「はっ。どうしてって、それは当たり前だろう?」

「えー。だって、おもいどおりにならないことばかりだからもくひょうをたっせいするとうれしいのに、なんでもおもいどおりだとつまらないよ?」

「……。」

「おにーさんはもっとよゆーをもったほーがいいよ。じんせいはおもいどおりになることも、ならないこともたのしめるひとだけがほんとうにたのしめるんだよ。はかせみたいに。」

「……。」

「わたしはじんせいけーけんってやつがたりないから、まだよくわからないんだけどね。でも、これだけはわかる。おにーさんはおもしろそうななまえをしているきがするし、そうならぜったいおもしろいにんげんになれる。だから、もっとがんばって、おもしろさをみがけば、きっとはかせにもみとめてもらえるとおもうよ。わたしのおにーちゃんにはぜったいにみとめられないとおもうけどね。おにーちゃんはどくせんよくがつよいから。おもいついたことはすぐとっきょとりたがるし。」

「博士に、認めてもらう、か。なぁ、何を頑張れば博士に認めてもらえるような面白い人間になれるんだ?」

「うーん。それをじぶんでかんがえることも、たいせつなじんせーけーけんのひとつなんじゃないかな?とにかく、がんばればいいともうよ。」

「そうか。難しいな。」

「むずかしーからたのしいんだよじんせいは。もしじんせーがりょうしりきがくみたいにかんたんにとけたら、おもしろくないよ。あ、そうだ。おにーさん、わたしのおにーちゃんがどこにいったかしってる?おにーちゃんはここのじょしゅをやってるんだけど。」

「量子力学が簡単だと?いや、聞き間違えだろうな。……お兄ちゃんって、あの忌々しい変態野郎のことか?そいつなら博士と手を繋いでどっか行ったけど。」

「え?」

「いや、色々あって俺が拘束されて、すぐに二人でどこか行ったんだ。それにしても仲良さげだったな。あいつら恋人同士だったりするのか?だとしたら貴重な美脚が……。」

「なかよさげ。こいびとどーし。」

「ん?おいどうした?」

「ふふふふふふふふふふ。」

「ひぃ。」

「じんせーはおもいどーりにならないからおもしろいねー。ほんっと、おもしろいよ。」

「……。」

「こてんぶつりがくもりょーしろんも、ごがくもれきしも、じょーほーもけーざいもいりょうも、みんながじかんをかけてべんきょーすることはとってもかんたんなのに、みんなあまりしゅーちゅーしてべんきょーしないじんせーだけが、とってもむずかしい。わたしはおにーちゃんといっしょにいたいし、はかせともいっしょにいたいのに、あのふたりはいつもわたしだけなかまはずれにする。あー、とってもおもしろいねっ!!」

「……。」

「あのときみたいに、おにーちゃんにいたいめにあってもらえば、すこしははんせーするかな?ねぇ、おにーさん?」

「い、いや、暴力はいけないと思うぞ?」

「ぼーりょくじゃないよ。あのときみたいに、おにーちゃんのたべるごはんににんじんをまぜるだけだよ。」

「へ?にんじん?」

「おかーさんがいってたの。むかし、おにーちゃんがふじゅんいせーこーゆーというのをしてたとき、なにをいってもはんせーしなかったのに、にんじんをたべさせたらすぐにはんせーしたんだって。それで、このまえわたしもやってみたんだけど、おにーちゃん、ないてわたしにあやまったの。もうさびしいおもいはさせないって。」

「は?」

「あのときみたいに、もういっかいはんせいさせてやる。ふふふふふふ。」

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